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日蓮大聖人・池田大作

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創価教育代表者会議  

2008.3.7 スピーチ(聖教新聞2008年下)

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1  ご苦労さま!
 創価教育の原点は、初代会長・牧口先生であり、第二代会長・戸田先生である。
 お二人は、命をかけて国家主義と戦われた。創価教育には、世界平和への悲願が込められている。
 「権力に民衆が苦しめられた歴史」を「民衆が王者となる新時代」へ大転換させる、創価教育の使命は、ますます重い。
2  「不二」の君よ!
 創価大学の開学のころ、私は、教員・職員・学生が一体となって、一人一人が「創立者」の自覚と誇りで、理想的な学府の建設をと訴えた。
 草創の創価学園では、は「未来に羽ばたけ 君と僕」と歌に綴った。
 その「未来」は、今である。
 今再び「創立者」の自覚で立ち上がるのだ。
 人間の社会には、嫉妬もある。忘恩もある。私利私欲が渦巻いている。
 だからこそ、冷酷無残な現実を打ち破り、勇敢に信念を貫くのだ。人間を信じ抜く心を、身をもって教える。正義を満天下に打ち立てる――そこに教育者の魂があり、師弟の勝利が輝きわたるのだ。
 「君と僕」の心が不二ならば、何も恐れるものはない。
 創価教育さえ盤石ならば、平和の大道が絶えることはない。未来は明るい。
 今こそ、固く団結し、全生命を奮い立たせて、永遠の大発展の土台を、私とともに、完壁に築いていただきたい。
3  きょうは、わが創価大学、創価女子短期大学、アメリカ創価大学、そして創価学園の代表の皆様方が集われた。
 じっくりと語り合うことができ、これほどうれしいことはない。
 「対話は、知的活動を活発にし、行動を起こす」
 ロシアの著名な哲学者であった、モスクワ大学のロジェストベンスキー教授の言葉である。
 青年のため、未来のため、社会のため、世界のため、創価教育の発展のために、きょうも、生き生きと対話を繰り広げたい。
4  先日、わが創価女子短期大学の学生たちが、はつらつたる歌声を聞かせてくださった。
 まさしく、新しい時代を告げる希望の声の響きとなった。
 〈5日、創立者夫妻の前で、短大生の代表が、山本伸一作詞の短大歌「れの青春」を大合唱した〉
 時代の変化で短大の存在意義が見直される中、わが創価女子短期大学の堂々たる発展の姿は、本当に素晴らしい。
 毎年、立派な人材が、数多く社会へ雄飛している。地域の希望となり、各界からも大きな期待が集まっている。
 女性の時代である。聡明な女性の声が、社会を変える。平和と文化の世界を花開かせていく。
 創価女子短大は、女性教育の模範の城として、さらに一層、光り輝いていっていただきたい。
5  何のための知識
 イギリス19世紀の哲学者ジョン・スチュアート・ミルは語った。
 「大学はすべての知識を、人生にとって価値あるもの、即ち、われわれ各人が人類のために実際に役立つ人間になることと人類そのものの品性を高めること、つまり人間性を高貴にすることという二重の目的を達成するための主な手段として、提供しなければなりません」(竹内一誠訳『ミルの大学教育論』御茶の水書房)
 含蓄の深い大学観であり、教育観である。
 うれしいことに、わが創価大学は、まさしく「人類のために実際に役立つ人間」を育て、そして「人類そのものの品性を高める」人間教育の最高学府として、全世界から深く広く信頼を寄せられる時代に入った。
  偉大なる
    指導者出よと
      祈りつつ
    我は決意の
      創大建てなむ
 私は、創大が開学する3年前の5月3日、新しき人材育成の学府の未来を展望した。その思いを和歌に留めた。〈和歌は現在、創大本部棟で特別展示されている〉
 創大の開学は、創価教育の父・牧口常三郎先生の生誕100周年にあたる、1971年(昭和46年)のことであった。
 創価大学の大興隆を、牧口先生も、また戸田先生も、いかばかり、お喜びくださっていることか。
6  心の冷たい小才子になるな
 世界の知性も、わが「創価教育」に大いなる希望を見いだしている。
 現在、私が対談を進めている国連のチョウドリ前事務次長も、こう語ってくださった。
 「現代の教育制度は、多くの知識を学生に教えますが、人間性を育むことができていないのではないでしょうか。
 教育機関によって、『頭』はいいが『心』の冷たい“ロボット”のような人間が生み出されているとしたら、じつに悲しむべきことです。
 その点、私は『価値創造』を教える創価教育の卓越性に注目しています。創価教育の考え方を、世界に広めていくべきです」
 〈チョウドリ前国連事務次長と名誉会長の対談は、月刊誌「潮」の5月号から連載の予定〉
 チョウドリ前事務次長は、アメリカ創価大学でも記念講演をしてくださっている。学生たちと深い交流を結んでくださり、感謝にたえない。
 チョウドリ前事務次長は、こうも語られている。
 「創価大学に入学するには、高倍率の試験に合格しなければならないことを伺いました。
 定員割れの大学が増えている現在にあって、驚くべきことです」
 「教育で正しい価値観を教えていくことは、将来にとってじつに大事なことなのです」
 こうした世界からの期待に応えるごとく、創価大学のキャンパスには、新時代の槌音が力強く響いている。
 いよいよ、この4月からは「教職大学院」が開設される。
 今回、全国から最優秀の英才が志願してくださった。ここから、創価教育の真髄を体した先生方が、さらに陸続と躍り出ていくことが、楽しみでならない。
7  卒業生や来客の方々は、訪れるたびに見違えるほど大発展を続ける創価大学の景観に、感嘆の声をあげておられる。
 このたゆみない建設と前進の息吹の中で、新世紀の指導者群が力強く成長している。創立者として、何よりもうれしい。
 全力で、第2期の大学建設に取り組んでくださっている山本学長はじめ教員の先生方、職員の方々、さらに支援してくださっている皆様方に、この席をお借りして深く感謝申し上げたい。
 また、アメリカ創価大学を支えてくださっている、すべての方々に、心から御礼を申し上げたい。
 創価大学は、世界に開かれ、人類と友情を結ぶ大学である。
 先日、光栄なことに、北京大学で、私の傘寿(80歳)を記念する学術シンポジウムを盛大に行っていただいた。
 北京大学には、私もこれまで7度訪れており、北京大学と創価大学の交流が日中に教育の「金の橋」をかけてきた。
 あらためて、最大の謝意を述べさせていただきたい。
8  教育こそ喜び
 中国の思想家・孟子は「天下の英才を得て教育すること」を、君子が最も楽しみとする一つとして挙げていた。
 人生において、社会貢献、人類責献の有為な英才を育てる喜びに勝るものはない。
 創大生も、短大生も、真剣に学び、実力をつけている。各種の試験においても、就職においても、研究においても、目を見張る成果を収めてくれている。
 学術・研究に優れた学生に贈られる、創大の「ダ・ヴィンチ賞」についても、選定する先生方から、“優秀なメンバーが多すぎて絞りきれない”という、うれしい悲鳴をうかがった。本当に頼もしい限りだ。
 他の名門校などにも進学できるところを、あえて創大、短大に送り出してくださった、ご両親やご家族の方々に、お子様方の立派な英姿を喜んでいただくことが、私と妻の切なる祈りである。
9  「やるぞ」と決めれば、うまくいく
 19世紀から20世紀にかけて活躍した「科学的管理の父」テイラーは論じている。
 「制度の変革をなすに当たり、試みにやって見たことは必ず失敗し、きっと『やる』と決めたことは必ずうまくいくものである」(上野陽一訳・編『科学的管理法』産業能率短期大学出版部)
 一念の偉大な転換が万事を決していく。万般に通ずる道理である。
 〈管理学の分野では、これまで創立者にタイの国立メージョー大学と台湾の雲林科技大学から「名誉管理学博士号」が、贈られている〉
 ともあれ、急速な少子化の進展に伴い、いずこの大学も、永続的な発展のために、懸命に変革の努力を重ねている。
 そのなかで、確固たる建学の精神、教育の理念というバックボーンの重要性が、さまざまに指摘されるところだ。
 乱世であればあるほど、揺るぎない信念と哲学を持ったところが強い。勝ち抜けるのである。
 「実際、どうして宗教と教育を、切り離すことができようか。宗教心の伴わない知識は知識ではない。それは、内面的あるいは外面的の理論的能力あるいは他の技能的能力が発達したものではあるかもしれないが、人間の魂を育てる力ではない」(宇山直亮訳『歴史の生命』日本教文社)
 これは、イギリスの歴史家カーライルの言葉である。
 人間をつくる。精神を豊かにする。そのためには、生命を深く洞察した哲理が不可欠であろう。
10  創造者たれ
 時流に右顧左眄するのではない。周囲に流される、信念なき自分であってはならない。
 確かな原点に立脚して、わが使命の道を断固として歩みながら、新しい時代の流れを創り起こしていく決心で進みゆくことだ。
 「人間は『批判する者』と『創造する者』とに分けられる」とは、ロシアの大芸術家ニコライ・レーリッヒの至言である。
 「創価」すなわち「価値創造の哲学」を掲げた私たちは、嫉妬と悪意に満ちた批判を敢然と打ち破りながら、誇り高く歴史を創造し、文明を創造していきたい。
11  人間の可能性を開発せよ!
 今年の秋、東洋哲学研究所とボストン21世紀センターは、アメリカ随一の名門女子大学として知られるウェルズリー大学と、「女性」「人権」「環境」をテーマにシンポジウムを開催する予定となっている。
 〈2000年11月、ウェルズリー大学に本部を置く「教育変革プロジェクト」から創大創立者に「教育変革貢献賞」が贈られている〉
 かつて、同大学のカザンジン宗教・精神生活学部長とは、私も有意義な語らいを刻んだ。
 教授は、こう語ってくださっている。
 「ヒューマニズムに視点を置く“教育”と、ヒューマニズムに視点を置く“仏教”の思想とは、人間の可能性を開発するという一点において、共通するものがあります。SGI(創価学会インタナショナル)は、この2つの大いなる“思想の潮流”が流れ込む“大海”を築いてこられました。
 宗教であれ、教育であれ、狭い視野しか持たなければ、それは人類のすべてが共有できるものとはなりません。
 その意味において、SGIの人間主義の思想は、教育哲学と仏教哲学を兼ね備えたものであり、世界の人々が無知と偏見に立ち向かうための新しき“人類意識”を目覚めさせるものです。
 仏教と教育が出あい、世界に新たな英知を提供していく、SGIのような運動は、じつに重要な意義を持っていると私は思っております」
 深いご理解に感謝したい。カザンジン教授は、これまで、全米の350の大学にネットワークを広げる「教育変革プロジェクト」を主宰し、教育改革のために長年、努力を重ねてこられた。
 そして、真の教育改革のためには、教育に「倫理」と「精神性」を取り戻すことが不可欠であると訴えてこられた。
 人類を分断する動きと戦い、慈愛と信頼の光を生き生きと広げゆく、平和のリーダーを育てるのが、創価教育の使命である。世界の良識の信頼に、私たちはこれからも誠心誠意、応えてまいりたい。
12  勇気を! 自らの使命に全力を!
 私は、創価学園、創価大学の建設のために、私財を捧げ、全魂を注いできた。
 人材を! 青年を! 後継者を育てるしかない!
 それが、恩師から教えられた一切の勝利の大道であったからだ。
 私が創価学園の建設予定地に足を運んだのは、昭和35年(1960年)の春4月。
 自然豊かな武蔵野の大地であった。
 そして、創価大学の建設予定地も、緑に包まれた丹木の丘であった。
 学園からも、創大からも、秀麗な日本一の富士が見える。私と妻は、同志とともに、将来の世界的な大発展を、ずっと心に思い描いてきた。
 今、創大には、新たな女子寮「創春寮」が完成した。省エネに配慮した自然換気システムとオール電化システムが完備され、生活に優しくつくられた家具もある。新入生がやって来るのを、今か、今かと待っている。
 新総合体育館も、明年3月に完成の予定だ。太陽の丘には、堅固な骨組が、すでに姿を見せている。
 さらに、海の向こうのアメリカ創価大学では、2010年の完成を目指して、新たな「講堂」の建設準備が進んでいる。
 奨学金制度も拡充される運びである。
 創価教育の各校から、全世界へ、これからも、どれだけ多くの平和の指導者、民衆のリーダーが、羽ばたいていくことか。
 それを思うと、私の胸は希望にあふれる。
13  何者にも征服できない信念
 19世紀フランスの化学者・細菌学者のパスツールは、数多くの科学上の発展を成し遂げた、「近代微生物学の祖」とも言われる大学者である。
 「科学と平和が無知と戦争に勝ち、苦しむ人々に身をつくす人にこそ、未来は開けてゆくとわたしは信じます。その信念は何者によっても征服できないでしょう」という彼の言葉は有名だ(ビパリー・バーチ著、菊島伊久栄訳『パストゥール』偕成社)。
 先日の、創価女子短大の特別文化講座「キュリ一夫人を語る」でも紹介した。
 パスツールは、「科学上の発見のドラマ」を人に伝え残す際、大切にすべき方法を述べている。
 それは、発見に貢献した人たちの、「個人的な努力や経験を思い起こさせ」、「その発見のなされた時代へと聴衆を連れもどそうと努める」方法である。
 発見の「出発点」にまつわる様々な苦労や問題を、無視してはならないというのである。
 この点に心を砕けば、「多くの努力なしに、永続的なものは何も生まれない」ということが示せる。
 さらに、偉大な人物を「超自然的な近寄り難い能力をもった半ば神のような人間」とみなすのではなく、「彼らが何よりも努力と献身の人であったこと」を明らかにできる。
 そして、彼ら偉人たちが発揮した努力と献身は、「我々誰もが、強い意志の助けさえあればもつことができる」と彼は指摘している(成定薫訳「科学上の発見の歴史についての覚書き」、『パストゥール』所収、朝日出版社)。
 私もまったく同感である。教える人の知恵と工夫次第で、学ぶ人の可能性は無限に広がる。
14  威張る人間とは闘え!
 また彼は、自身のもとを巣立ち、離れた地に教師として赴任する弟子へ、次のような励ましの言葉を綴っている。
 「勇気を出しなさい」「生徒には素晴らしく立派な授業を授けるのです。そして授業の余暇には、君自身の実験に全力を尽くしなさい」(ヴァレリー・ラド著、桶谷繁雄訳『ルヰ・パストゥール』冨山房。現代表記に改めた)
 勇気をもって、自らの使命の実現へ全力で取り組む人、真実を求める人は強い。この力を鍛えるのが、教育の重要な使命であろう。
 私は、創価大学、創価学園を、恩師の遺言通りに創立した。
 尊き創価の学生に対して威張る人間や、創立の精神を踏みにじる悪、保身やエゴを目的とする輩がいたならば、断じて闘うのだ。団結して闘うことだ。
15  青年を助け、愛し常に思いやれ!
 私が現在、対談を連載している中国の歴史学者・章開沅しょう・かいげん先生は、華中師範大学の学長を務められた大教育者である。
 対談で章先生は、こう語っておられた。
 「教師は自らを尊重すべきであると私は思います。この自己尊重とは、僅かな知識をもって奢り高ぶることではなく、教師の地位や役割に対する自己認識であり、教師としての深い自覚と責任感を持つことです」
 大事な急所を突いておられる。
 良き教育者の存在は、学生にとって最大の教育環境となる。その使命も栄光も、大きく深い。
16  それでは、教師としての「自覚」や「責任感」は、具体的に、どこに現れるか。
 章先生は力説しておられた。
 「教師としての責任感は、主に学生への思いやりとして表現されます。常に、いかにして学生の健全なる成長を助ければよいかを考え、絶えず学生を自らの心に留めるのです。
 教師は学生を愛し護ってこそ、はじめて学生の心からの尊敬を勝ち得ることができるのです」
 これこそが「教師の共通の鉄則」である。
 学生たちへの慈愛を失った教師は、すでに教師としての自覚を失ってしまっていると、章先生は強調する。
 この、人間教育の正道は、苦難の道である。喝采のない道である。
 しかし、最後は必ず、尽きることのない感謝と尊敬に包まれ、不滅の栄光が輝きわたっていくのである。
 中国の古典『礼記』には、「教学相長」(教学、相長ず)という一節がある。章先生は、この言葉について語られた。
 「私は『教学相長』という言葉を好んでいます。教えることによって、学ぶ者だけでなく教師も向上するということです。
 教師は一方的に学生に何かを与えるのでは、決してありません。
 教師もまた、学生に教えることによって、精神の養分と青春の活力を汲み取ることができるし、また、そうすべきなのです。
 飢えるが如く、渇くが如く、真剣に知識を求める学生の息吹は、教師にさらなる向上を促す推進力でもあるのです。
 学生の行雲流水の如き自由闊達な思索は、常に教師の新知創造のインスピレーションの火花を触発します」
 その通りである。進んで学生たちの中に飛び込み、学生を敬いながら、真剣に交流していく教育者は、常に若々しく、自らの青年の生命を躍動させていくことができる。
 教育者とは、また指導者とは、生涯、弛みなく、生き生きと間断なく成長していくのである。これが、教育に生きる生命の、誉れある特権であるといっても過言ではあるまい。
17  廃虚の中から
 章先生が華中師範大学の学長に就任されたとき、伝統ある大学は、文化大革命によって、壊滅的な破壊を受けていた。キャンパスの様子は、「見渡す限りの廃虚」であったという。
 章先生は、その「廃虚」の中から立ち上がり、大学再建への指揮を厳然と執っていかれた。
 財政的にも、極めて厳しかった。多くの学生たちも自信を失っていたという。
 その中で章先生は、いかに苦しくとも、弱者の立場に甘んじて、政府の助けや社会の同情を期待するようであってはならないと、皆に訴え続けた。
 そして、環境が厳しいからこそ、より強い心構えで向上を求め、自らの実力と業績をもって政府社会の尊敬を勝ち取っていこうと、「自力更生の精神」を奮い立たせていった。
 この建設の死闘ありて、華中師範大学は、大中国の名門大学として、全国有数の学術・教育の成果を挙げるようになったのである。
18  学生第一で改革
 優秀な多くの人材を世に送り出し、発展し続ける大学には、どのような特質があるか。
 私は、世界の諸大学を訪問し、多くの大学首脳と対話を重ね、学生たちとも胸襟を開いて語り合ってきた。
 そうした見聞のうえから、発展する大学の特質を、3点にわたって、章先生に申し上げた。
 第1に、大学首脳が、真剣に学生の声に耳を傾け、「学生第一」の校風を率先して広げていること。
 第2には、従来の手法や制度に安住することなく、時代の動向に絶えず目を配り、社会や人々が最も必要としていることは何かを探りつつ、大胆な改革を厭わないこと。
 そして、何より大切なのは、いかなる時代の波浪に遭おうとも「建学の精神」を堅持し、実現させることを最大の誇りとし、責務としていることである――と。
 章先生は、「いずれも深く納得できる点です」と、心から共感してくださった。
 そして、こう語っておられた。
 「その観点に照らしますと、貴・創価大学は、まさに、理想的な大学建設の最先端を進んでおられると思います。
 とくに創価大学は、社会や民衆への奉仕という面で多くのことに取り組まれてきました。
 それによって勝ち得た業績や影響は、実に大きなものがあると思います」
 創価大学に対する、世界の大教育者の評価として、ありのままにご紹介したい。
19  支援者の皆様に健康と長寿あれ
 それは、周恩来総理が、北京市内のある学校を視察した際のことであった。
 過密なスケジュールのなか、総理は時間をつくり、学校を陰で支えている食堂の人のところにまで、自ら足を運んだ。
 礼を尽くして、周総理は、こう語りかけた。
 「あなたたちの仕事はたいへん重要です。これは革命の跡継ぎ人を育てるという革命の事業にとって、欠かすことのできないたいせつな部分なのです」(新井宝雄著『周恩来の実践・指導力の秘密』潮出版社)と。
 創価大学でも、アメリカ創価大学でも、そして創価学園でも、食堂の方々が、日々、尽力してくださっている。
 私は、心から感謝申し上げたい。
20  メキシコの思想家バスコンセロスは語っている。
 「図書館は最高の教室である」
 本は、大学の生命である。人生の宝である。
 その意昧で、常日ごろから、学生の英知の錬磨を支えてくださっている図書館の方々の尊きご苦労に対しても、私たちは、心から、ねぎらいたい。
 ともあれ、陰で人材を育て、支えてくださっている方が、どれほど多くおられることか。
 寮を支えてくださっている方々、学生・生徒の健康のため、安全のため、充実した生活のために尽くしてくださっている方々、そして大学・学園の清掃、環境の整備、新たな建設に携わっておられる方々。さらには真心と労苦を尽くして支援し、創価教育を見守ってくださっている方々が、無数におられる。
 教育という聖業は、この最も崇高な力の結集によってなされている。
 創価教育を支え守り、その発展を進めてくださっている、すべての方々のご健康とご長命、そして、ご一家の永遠のご繁栄を、私は妻とともに真剣に祈り続けている。
21  「どんな劣等生でも優等生に」
 私は、アメリカ・ソロー協会のボスコ元会長、マイアソン元事務総長と、対談集『美しき生命 地球と生きる』を発刊した。その中で、19世紀アメリカの大教育者ブロンソン・オルコットについて語り合った。
 ブロンソン・オルコットは、若き日、経済的に恵まれず、高等教育を受けることができなかった。しかし、独学で身を立て、当時においては画期的な「全人教育」を提唱し、実践していったのである。
 彼は20代のころ、子どもを最大に尊重しゆく、自らの教育信条を綴っている。その中には、次のようにあった。
 「教えられる者の価値を尊びつつ教えよ」
 「明瞭な説明を十分に多くして教えよ」
 「激励により教えよ」
 「興味をひき起こすように教えよ」
 「人類が生徒たちに託した希望によって生徒たちは重要な存在であることを感じさせて教えよ」
 「学校全体の幸福を考えつつ教えよ」
 「強制ではなく説得により教えよ」
 「生徒に自ら教えることを教えよ」(宇佐美寛著『ブロンスン・オルコットの教育思想』風間書房)
 「子どもの幸福のための教育」を志向した、創価教育の父・牧口先生、恩師・戸田先生の思想にも通じる。
 このブロンソン・オルコットは、教育者の使命について語っている。
 「教授におけるわれわれの関心事は、仲間としての人類であり、われわれは、幸福を得て人々に分ち与える手段としての教育をしごとにしているのである」(同)
 さらに、こうも記し残していた。
 「子どもの心の中には、知識と真理への志向性が存在しているのであり、もしその動きが顕わにならず、活撥にも効果的にもならないとしたら、それはわれわれの怠慢か誤った指導のせいなのである」(同)
 戸田先生も、「どんな劣等生でも優等生にしてみせる」という信念で、教育に取り組んでおられたことは、皆さんもごじの通りだ。
22  ブロンソン・オルコットの教育思想と実践は、革新的であった。それゆえ、世間の無理解にによる中傷に遭い、設立した学校も、短期間で閉鎖となってしまう。
 柱である父の仕事がうまくいかず、貧窮する一家を、母とともに、娘たちが支えた。その娘の一人が、戸田先生が若き乙女に語った『若草物語』の作者、ルイザ・メイ・オルコットである。
 彼女は、『若草物語』の続編である『リトル・メン』(邦題『第三若草物語』)を、1871年に発表した。その中で、かつて自らも学んだ「父の理想教育」を再現した物語を描いていった。
 それは、中傷され、挫折した父の教育事業の真実と、その父を支え続けた母の勝利を、世に明らかにするためであった。
 彼女は物語を綴った心情を、こう語っている。
 「父の到達したすばらしい真実を、30年もの間、昔の先生の感化を決して忘れていない生徒たちの心と記億の中に、無言で存在し続けてきたその真実を伝える役割を果たさせることは、仕事であり楽しみであるばかりでなく、全く適切なことです」(師岡愛子編著『ルイザ・メイ・オルコット――「若草物語」への道』表現社)
 『リトル・メン』は、『若草物語』シリーズの絶大な人気もあり、出版前から驚異的な予約申込数であったという。
 刊行されるやいなや、読者に、こうした学校が実際にあったのかという大きな関心を引き起こしていった。
 そして、ついに父の教育記録が、約40年ぶりに再版されるに至った。娘の力によって、父母の真実と偉大さが、世界に宣揚されたのである。
23  邪悪には決着を 厳窟王になれ!
 次元は異なるが、戸田先生も、獄死という“不遇のなかの不遇”に処された牧口先生の真実を世に知らしめるため、「巌窟王」となって戦い抜かれた。
 私もまた、牧口先生、戸田先生の真実を、燦然と世界に示してきた。
 かつて、私は愛する創大生に書き贈った。
 「私は侮辱を受けても復讐など求めない!
 しかし絶対に大勝利者となりて
 悪の確執に決着をつけてみせる!」
 創価教育は、三代の夢である。すべての民衆が輝く時代へ、正義の勝利の人材城の建設へ、一段と力を注いでまいりたい。
24  育て! 偉大な「王子」「王女」よ
 創価大学の第1回入学式は、昭和46年(1971年)の4月であった。
 その折、ある父母が、誇りをもって、うれしそうにこう語っておられた。
 「『八王子』という地名には、優秀な偉大な『王子』『王女』、すなわち学生たちが、たくさん育って、日本の社会の、そして世界の大指導者となって活躍するという意義がありますね」
 今や、その通りの八王子となり、創価大学、創価女子短期大学となった。
 これからも、さらに無数の大人材を、世界へ、世紀へ育てゆくことを決意し合って、本日のスピーチを終わりたい。
 長時間、ありがとう! 教育は、私の最後の事業である。いよいよ、これからが本番だ。ともに前進しよう!

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