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ロシア国立人文大学名誉博士号授与式での…  

2007.6.1 スピーチ(聖教新聞2007年上)

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2  そして、遠くロシアから、私への栄誉の授与のために来日してくださいました、ロシア国立人文大学のピヴォヴァール総長ご一行の皆様方、大変にありがとうございました。
 希望に輝く貴国ならびに貴大学のますますのご発展を心からお祈り申し上げ、全員で「ロシア、万歳!」と喝采をお贈りしたいと思いますが、いかがでしょうか。〈参加者全員で声高らかに「ロシア、万歳!」を行った〉
3  道を開け!
 きょうは、全国代表幹部会の意義も兼ねて開催されました。皆さん、ご苦労さま!
 未来に向けて、若い人を、どんどん育てていきたい。先手を打つのだ。
 人材の育成こそ、すべての勝利の要である。
 戸田先生は、常に本陣の幹部の会合を一番厳しくされた。真剣であられた。
 本陣の幹部が、いかなる決心で、全学会の発展のために、会員のために貢献できるか──それによって、学会の一切が決まっていく。その意味で、非常に重要な幹部会であり、重要な人材群であると、先生は位置付けておられた。
 したがって、ここにいる幹部は、広宣流布の道を開き、先頭を切っていく責任がある。これが戸田先生の時代からの一貫した幹部会の指導であった。
 本陣の幹部は、全同志、全会員を断じて守るために存在する。これを忘れてはならない。
 反対に、会員を踏み台にしたり、恵まれた環境に甘えてはいけない。周りが何も言えないことをいいことに、自分の好きなようにやって、同志の必死の戦いから離れてしまえば、敗北である。
 本陣の幹部は、選ばれて広宣流布の本陣にいるのだ。,
 いくつになっても生き生きとして、惰性を排し、慢心を叩き切っていくのだ。
 戸田先生は、「本陣の幹部が、学会のために、広布のために、深い深い推進力を起こしていく以外にない。広宣の大勝利の歴史を飾りゆく、根本の原動力でなければならない」と言い残して、亡くなられたのである。
 堂々たる広宣流布の王者の風格を持って、どこまでも、会員のために進んでまいりたい。
4  歴史をつくれ!
 幹部会の意義について、具体的に確認しておきたい。
 1番目は、活動の目的を効果的に達成させるために、どうするかという協議の場である。
 2番目は、互いの目標のために、意思を疎通し合い、同志のつながりを強める場である。
 3番目は、師のもとに、長のもとに、勝利のための団結と結束を、奥深く連帯させるための場である。,
 4番目は、互いの個性を知り合い、互いの同志間の友情と誓願を深めながら、「異体同心」という理想的な広布の軍団をつくるための場である。
 5番目は、広宣流布へ、「師弟不二」を根本として、同志の連携を強め、同志がさらに活動・活躍しやすくするための場であり、会議であらねばならないということだ。
 そのための歴史を、全員でつくっていくのだ。
 常に「勝利への前進」の幹部会にしてまいりたい。
5  勇気で勝て!
 「勇気あれば勝利ゆるぎなし」(藤沼貴訳『戦争と平和』岩波文庫)
 これは、かの大文豪トルストイが記した、人年の万般に通じる勝負哲学の一節であります。
 「勇気で勝て!」この師子吼を、まず、青年部に贈りたい。
 幸福になるのも勇気です。試練に勝つのも勇気です。人に尽くすのも勇気です。平和のための行動も勇気です。勇気のなかに、行動があり、信念があり、活躍があるのです。
 意気地がなく、ずる賢く、要領がいい者は、皆、共通して勇気がない。そして、自分の弱さに負け、堕落して、格好だけは、うまく取り繕う。一番の恐ろしい畜生のような人間です。
 断じて、そうなってはいけない。諸君は「勇気で勝つ」のです。
6  人間を尊重せよ
 さて、大ロシアの歴史学界に厳然と轟く、勇敢なる師弟の叫びがあります。
 人間を、手段や歯車として見るなかれ! 人間を、最高の価値として尊重せよ! 人間こそ、あらゆるものの尺度であるからだ──という人間主義の大宣言であります。
 これこそ、ここにお迎え申し上げたピヴォヴァール総長と、亡き師匠・ドロビジェフ博士との、深く一致した崇高なる信念なのです。
 総長は、常に誇り高く「ドロビジェフ博士の弟子」と名乗って、正義の言動を恐れなく貫いてこられました。
 「偉大な人」には、「偉大な師匠」がいます。
 師匠を偉大にする。それが弟子です。勘違いしてはいけない。この精神がなくなれば、未来はありません。
 学会の未来は、青年に託す以外にない。
 学会も、人生も、そして世界も、決して生やさしいものではないのです。真剣で、誠実で、勇気ある人が勝つ。
 どうか青年の皆さんは、自分が先駆者であるとの自覚で進んでください。
7  総長は、「人間」を一切の原点と定めた人文教育の旗を高く高く掲げ、ソ連邦崩壊の激流も乗り越えて、貴大学を見事に大発展させてこられました。
 総長に就任された年、師匠の生誕の佳節を祝賀する行事を意義深く行われたことも、まことに美しい「師弟勝利」の歴史として輝いています。
 師弟の戦いは、口先ではありません。あくまで実行であり、結果です。
 モスクワの天地に貴大学が誕生したのは、1930年。わが創価学会と同じく、今年、創立77周年を迎えます。
 来る6月の6日は、私たちの先師であり、平和の殉教者であられた牧口常三郎初代会長の生誕136周年の記念日です。
 牧口先生は、貴国の深遠なる「人文」の伝統に、心からの敬意を抱いていました。
 その意味において、本日、貴大学から拝受した栄誉を、この先師に捧げさせていただけることは、私の最上の光栄であります。
 厚く厚く、感謝申し上げます。ありがとうございます。
8  世界に友好の橋
 ご存じのように、私は33年前、東西冷戦と中ソ対立の渦中に、貴国へ第一歩をしるしました。
 「なぜ、共産主義の国に行くのか」と、ごうごうたる猛反対に遭い、批判が殺到しました。
 しかし私は、「そこに人間がいるから、対話に行くのだ!」「平和のためには対話しかない!」と言い切って、ロシアに向かったのであります。
 さまざまな風圧をはね返し、私は一民間人として、貴国と日本を結び、貴国と中国を結び、そして、世界の民衆を結んできた一人であります。
 アメリカとキューバの関係が険悪化していた折にも両国を相次いで訪問し、友好の橋を懸けるために尽力しました。
 評価されようがされまいが、そんなことは関係ない。世界の平和を、事実の上で推進していくのだ──この決意で行動してきました。
 その私を、貴国の方々は、一貫して心から大切にしてくださいました。
 世界で最初に、私に名誉博士号を授与してくださったのも、貴国のモスクワ大学であります。
9  ともあれ、ロシアの大地には、全人類が大切にし、学んでいくべき、精神の宝が満ちあふれています。
 ここにおられるソコロフ教授のご一家も、代々、トルストイ家と尊き交友を結ばれながら、教育や医学に、大いに貢献してこられました。
 仏法も深く探究していたトルストイは、「真の人間の人生は幸福の希求にある。それは、自己の人格を確かな理法に従えていくことによって達成される」と語っております。
 さすが、トルストイであります。
 さらに、トルストイは、「苦しむ人のために、真心で具体的に行動することだ。そして、苦しみの根本原因となる誤った考えを根絶することだ。その活動こそ、人間がなすべき最高の喜びの仕事であり、本質的な幸福である。それが人生である」と結論しています。
 まったく、その通りです。
 ロシアの文豪といえば、ノーベル賞作家のショーロホフ氏と、モスクワにある氏の質素なアパートで語り合ったことが忘れられません。南ロシアの故郷の村で静養していたにもかかわらず、私に会うために、はるばるモスクワまで来てくださった。有意義な歴史を刻むことができました。
10  獄中の愛読書
 トルストイの平和思想が、マハトマ・ガンジーやキング博士、さらにアインシュタイン博士など、20世紀の正義の知性にもたらした恩恵は計り知れません。
 私の友人である南アフリカのマンデラ大統領が獄中で愛読されていた一書も、トルストイの『戦争と平和』でした。マンデラ氏とは、出獄した年に来日された氏のほうから、会いたいと連絡をいただき、東京でお会いしました。
 トルストイは、私も愛読してきました。『戦争と平和』も、夜も眠らずに読んだものです。深い感銘が、今でもわが生命に残っています。
 私は若き日から徹底して本を読んでまいりました。そうやって読んできた蔵書など7万冊を創価大学に寄贈しております。〈創価大学の中央図書館に「池田文庫」として保管されている〉
 『戦争と平和』のエピローグ(終結部)には、ナポレオンの侵略に打ち勝ったロシアにあって、主人公たちが、それぞれに正しい人生を求めながら、幸福な家庭と社会を築きゆく希望が描かれます。
 「幸福な家庭」「幸福な社会」を、どうつくるか。それが出発であり、結論なのです。
 その『戦争と平和』で語られる印象深い言葉がある。
 「もし悪い人間どもがおたがいに結んで、力を持つようになるなら、誠実な人間たちはそれと同じことだけをやるべきだ」(藤沼貴訳)
 誠実な人間たちよ、悪が結託するなら、それ以上に結び合え!
 簡単に見えて、最も重要な思想であります。
 また、次のような一節もあります。
 「善を愛する者たちが手を組もう、そして、旗印は一つだけ──実践的善行にしよう」(同)
 トルストイが念願し、待ち望んだ、善なる民衆の団結。それこそ、我ら創価の連帯であるとの確信と誇りで、堂々と進んでまいりたい。
11  「生も死も喜ばしいことです」
 晩年のトルストイは、モスクワの南方にあった領地(ヤースナヤ・ポリャーナ)に住み、執筆のほか、教育や社会奉仕の活動に励みました。
 また、「生死」について探究を深める中で、仏教の生死観を学び、大きな触発を得、共感を寄せています。
 宗教権力と戦った彼は、1901年、72歳の時に宗務院から一方的に破門を宣告された。しかし、トルストイは一つも動じませんでした。
 トルストイ万歳! トルストイは世界のトルストイだ!──ロシアの民衆、青年たちは叫んだ。それに呼応するように、世界の人々がトルストイを守りました。傲った権力は、逆に大きな非難を浴びたのです。
 1904年、75歳の時、日露戦争が勃発するや、トルストイは断固として戦争に反対しました。戦うべきではない!
 苦しむのは民衆ではないか!──と。
 晩年のトルストイは、国家や宗教を超えて、人類融合の象徴として世界から尊敬された。80歳の誕生日には、国内外の各層から盛大な祝福が寄せられました。
 トルストイは晩年、こう考察しています。
 「生きることが喜ばしく、死ぬことも喜ばしいのです」(除村吉太郎訳『トルストイ全集第21巻』岩波書店)
 私もハーバード大学の2度目の講演(1993年9月)で「生も歓喜、死も歓喜」という仏法の生死観を語りました。
 トルストイの思想は、仏法の哲学とも響き合っています。
12  幸福の軌道を!
 ともあれ、今、混迷を深めゆく世界にあって、私たちは、貴大学をはじめ、貴国との交わりを一段と広げてまいりたい。
 文化・教育の交流こそ最も大事です。世界の「勝利の道」を開くことになる。そして私たちは、生命の尊厳と人類の幸福の軌道を、揺るぎなく確立してまいりたい。
 なかんずく、21世紀の平和創造の大いなる力は女性です。どれだけ女性を大切にできるか。どれだけ女性の力を引き出せるかで、すべてが決まってくる。
 男性が威張る時代は終わりました。「女性の時代」です。
 男性のリーダーは、女性に対して心から感謝できる存在であっていただきたい。そして、女性が苦しんでいたら、自分が身代わりになろう──それくらいの心を持っていただきたい。
 ロシア国立人文大学には、壮麗な付属の美術館があります。その美術館にゆかりの女性詩人であるツヴェタエヴァは、母親をこう讃えました。
 ──母の成功の秘訣はいったい何か。それは、心の情熱である。そして何よりも、母のひるまぬ執念である。
 女性は、ひとたび関わったからには、すべてに勝利するという奇跡を必ずもたらすのだ──と。
 この言葉を、私は貴国の教育・芸術界、医学界で活躍される二人のご夫人(ヴォルコヴァ総長夫人、リャザノヴァ教授夫人)に謹んで捧げたいのです。
 そして、この6月10日に記念日(「婦人部の日」)を迎える、わが婦人部の皆様方にお贈りしたい。
13  試練を越えて栄光は輝く
 きょうは、私の親友である、国際経済史の大家・マンロー博士と再会することができ、本当にうれしい。
 博士は、一昨日、創価大学で素晴らしい講演をしてI光勝利を、私は心の底から、お祈り申し上げます。
 スパシーバ! まことに、ありがとうございました!

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