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第62回本部幹部会 ブラジル全国都市連合協会「栄誉賞」授与式、青年部総会、関西総会

2006.7.20 スピーチ(聖教新聞2006年下)

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1  海外の皆さん、ようこそ! 本当にご苦労さま!〈60カ国・地域から来日したSGI(創価学会インタナショナル)の青年リーダー250人が元気に立ち上がり、にぎやかに声を上げ、手を振り、池田SGI会長に応えた〉
 ありがとう! ありがとう!
2  求道の友を歓迎
 遠い国からはるばる、たった一人か二人で、やって来られた方もいる。皆さん、ここに来るまでに、どれほどの苦労があったか。どれほどの努力があったか。
 大勢の同志に囲まれて、めぐまれた環境で戦っている日本に比べれば、じつに大変なことである。
 そうしたすべてを見つめて、海外の友を最大限に歓迎し、包容していく。それが仏法である。そこに人間の真髄がある。これが創価学会なのである。
 意気軒高な皆さんに会えて、本当にうれしい。
 創価学会の息吹、学会精神にあふれている。この勢いがあったから、学会は世界的になり、日本一になったのだ。
3  怠惰は人間を駄目にする
 「使っている鉄は輝き、使わない鉄は錆つく」(北村孝一編『世界ことわざ辞典』東京堂出版)
 これは、トルコのことわざである。トルコヘは、私も2度、訪問している(1962年、1992年)。
 一生懸命、戦っている人へ働く人は、能力が衰えない。磨かれる。
 反対に、怠惰な人間は、いくら有能でも、いつのまにか駄目になってしまう。どんなに優秀でも、いい学校を出ていても、そんなことは関係ない。これが人間の方程式である。
 大切なのは、日々の鍛えであり、たゆまぬ戦いなのである。
 「石が投げられるのは実の多い木だ」(同)
 これもトルコのことわざである。
 他人から攻撃されるのは、それだけ重要な人物であるという証左なのだ。実がなっていなければ、石を投げられることもない。
 だれからも何の批判もされない。迫害を受けない――それは、その人物が何もしていない証拠である。
 正義のために戦えば、必ず難を受ける。難を受けない人間は、本物ではない。
 青年部の中から、本物の指導者が出てほしい。
 今、私は、正義のために戦う青年群を真剣に養成している。
4  芸術部の皆さん、ようこそ!
 よく来られました。元気な皆さんにお会いでき、本当にうれしい。
 日ごろの活躍の姿も素晴らしいが、きょうは一段と輝いておられる。皆、応援しています。全員で拍手を送ろう!
5  続いて、アフリカのケニア等で話されているスワヒリ語のことわざである。
 今回、アフリカからも多くの青年リーダーが来日してくれた。
 私ども夫婦は、アフリカなど、遠いところで、けなげに一生懸命、頑張っている人のことを、いつも祈っている。そうした思いもこめて、紹介したい。
 まずはじめに、「一匹の腐り魚すべてを腐らす」(柴田武・谷川俊太郎・矢川澄子編『世界ことわざ大事典』大修館書店)。
 日本でもよく言われることだが、万般に通じる道理である。
 組織においても、一人の悪い幹部がいると、その影響が周囲に、全体にと及んでしまうことがある。決してそうさせてはならない。
6  船長も船員だ
 さらに、スワヒリ語のことわざにいわく。
 「船長だからといって、船員であることを忘れるな」(同)
 同じ集まりに属していながら、自分だけは特別だなどと思うな――そういうことである。
 学会は、どこまでも異体同心であり、全員が平等な同志である。そして、その根本には、師弟の精神がある。
 初代、二代、三代によって、学会は、未来永遠の発展の基礎が築かれた。
 真の師弟の精神がある限り、学会は将来にわたって勝ち栄えていく。
7  デンマークの大哲学者キルケゴールは、次のような問いを投げかけている。
 ――ある師匠と弟子たちがいる。攻撃の矢はもっぱら恐れを知らぬ師匠にのみ向けられ、彼に従う弟子は狙われることさえなかったとする。
 その場合、「この弟子たちは師のあとに従っていると言えるだろうか」(岩永達郎訳「さまざまの精神における道徳的講話3」、『キルケゴールの講話・遺稿集4』新地書房所収)。
 まことに厳しい問いかけである。
 少しも難を受けないで、本当に師に従っていると言えるのか。
 牧口先生、戸田先生が、学会の後を継ぎゆく指導者に教えてこられた精神にも通ずる。
8  虹よかかれ!
 アメリカ創価大学1期生のネイスン・ガウアー君が、先ほど海外の代表として、あいさつをしてくださった。私も、ずっと見守っていた。
 彼は今年、ハーバード大学の大学院へ進学する。1期生として、アメリカ創大に偉大な伝統を築いてくださった。
 学生自治会の委員長として、だれよりも真剣に努力してくれたことも、よくうかがっている。
 私のもとには世界中、日本中からあらゆる報告が入ってくる。一つ一つを正確に把握するようにしている。
 ともかく、アメリカに戻ったら、偉大な同窓の友によろしく!
 偉大なお父さん、お母さんによろしく!
 ハーバードの空に、大きな美しい虹がかかることを祈っています。成功と勝利を祈ります!
 偉くなって、アメリカで、また世界で活躍していただきたい。頑張れ!
9  夏の高校野球の西東京大会で、きょう(20日)、創価高校は堀越高校に見事、6対0で勝った。
 創価高校は次が3回戦、関西創価高校は、これから初戦が行われる予定である。ともに頑張ってもらいたい。
 両校の出身者も応援している。健闘を祈ります!〈創価高校は23日、穎明館高校に10対2で勝利。関西創価高校は24日、開明高校に22対2で勝った〉
10  陰徳が陽報に
 きょうは、この会場にプロ野球・北海道日本ハムファイターズの八木智哉投手(創価大学出身)が参加してくださっている。
 八木投手は、オールスターゲームへの初出場が決定した。現在、チーム最多の8勝。堂々たる活躍、おめでとう!
 また、芸術部の代表として、のこいのこさんが参加しておられる。〈のこいのこさんは、これまで数多くの有名なコマーシャル・ソングや子ども向けの歌を歌ってきた。「CM&キッズ・ソングの女王」とも言われる〉
 のこさんは35年間にわたって地道に戦い抜いてこられた。誠実に頑張り抜いてこられた。元気に歌い続けてきた曲は、約800曲と言われる。
 このたび、その代表作を収めたCDのアルバムが爆発的な大ヒットとなった。本当におめでとう!〈5月末には、大手通販サイトのCD予約チャートで1位となった〉
 のこさんは総白ゆり長兼任の支部副婦人部長を務め、昨年、今年と弘教を達成しておられる。正義の教宣活動もやり遂げた。
 これまで変わらずに戦い抜いてこられた「陰徳」が、大きく「陽報」と花開いた。見事な勝利の実証を示されたのである。
11  強き青年がいれば未来は盤石
 きょうは、世界五大陸60カ国・地域の聡明にして偉大な、わが青年リーダーの諸君が、このように出席してくださり、私は本当にうれしい。
 全員が人類の宝であり、広宣流布の逸材である。本当にありがとう! また、新たな時代を晴れ晴れと、堂々と開いている青年部の総会、大変におめでとう! 皆さんがいれば、学会の未来は盤石だ。
 未来の勝利は、青年が育つかどうかで決まる。次の青年がどうか――これで一切が決まる。もう、その基礎はできあがったと私は申し上げたい。
 特に、新たな金字塔を打ち立てた大関西、万歳! すごいね!
 大関西があれば学会は安泰だ。関西は、どこよりも連帯が深い。互いに尊敬しあっている。皆が平等である。だから強い。
 きょうは、婦人部の懐かしい方々も集っておられる。皆さんのことは、よく存じ上げています。尊き奮闘、心から感謝します!
12  世界が創価の勝利を待っている
 先ほど、私ども夫婦は、皆さま方とともに「ブラジル全国都市連合協会」の「栄誉賞」を拝受した。
 ガルシア会長ご夫妻に、心からの御礼を申し上げたい。ムイト・オブリガード! まことに、ありがとうございました!
 特に妻は、きょうの喜びを、結成55周年を迎えた全世界の婦人部、そして女子部の皆さま方と深く、また広く分かち合わせていただきたいと語っていた。
 私たちの殉教の師匠・牧口先生は、すでに100年前に、小さな島国根性の日本を悠然と見おろしながら、青年に“郷土を通して世界を学べ”と呼びかけられた。
 世界市民といっても、一番の足元の地域に根を張っていなければ、抽象論になってしまうからである。
 アメリカの大哲学者デューイは、「民主主義は、身近なところから始めなければならない。民主主義の出発点は、近隣社会にある」と喝破した。
 わがSGIの同志は、それぞれの地域で、よき市民として行動し、信頼を勝ち取ってこられた。
 そして本日、ブラジルの5,562の都市からなる貴協会の最大の栄冠を、皆さまを代表して頂戴しました。ありがとうございました。
 現在、日本の全市町村の数は約1,820。その3倍以上の数である。ブラジルの面積は日本の約23倍である。
 今回の受賞は、世界が創価の勝利を待っているその一つの証左であると、私は受け止めている。
 このご期待に誠実に応えながら、私たちは明年へ、そして学会創立80周年(2010年)へ、さらに勇敢に、堂々と、日本中、世界中、あの都市でも、この地域でも、自身勝利、人間勝利、創価勝利の旗を、高々と打ち立てていこうではありませんか!
 〈ここでSGI会長は、看護に携わる女子部員の集いである「白樺グループ」の林新子委員長を激励。林さんのお母さんは、同グループの初代の責任者を務めた林栄子さん(1985年に逝去)。SGI会長は広布に生き抜いた栄子さんの生涯を讃え、女子部の成長に期待を寄せた〉
13  正義ゆえに投獄
 敬愛するガルシア会長は、奇しくも1952年の7月11日、わが男子部の結成1周年の、その日に誕生された。
 本年、55周年の男子部より1歳お若く、54歳になられたばかりの、信念の丈夫である。
 正義の弁護士である会長は、24歳の時から、偉大な政治家であり、カンベー市の市長も務めたコンセイソン氏を師と仰ぎ、若き官房長として仕えられた。
 偉大な人には、必ず師匠がいるものだ。師匠のいない人間ほど、さびしいものはない。
 創価の先師である牧口先生、恩師・戸田先生、そして私も、投獄された。正義なるがゆえに。
 このコンセイソン氏は、当時の軍事政権と勇敢に戦われた。投獄の迫害にもあった。苦労に苦労を重ねる連続だった。
 しかし、民主化を推進する以外に、国家の安泰はない。将来はない。
 「『庶民の利益』以外のものは、一切受け入れない」――これが市長となったコンセイソン氏の信念であられた。
 そして、支持者への報恩感謝、市民への奉仕を、絶対に忘れない人だった。
 「もし人がひとしお大きい恩を受けて感謝を表わさなかったら、ひとしおひどい不正ではあるまいか」とは、人類の教師ソクラテスの言である(佐々木理訳、クセノフォーン著『ソークラテースの思い出』岩波文庫)。
14  恩師の夢を実現
 残念ながら、コンセイソン氏は、51歳で逝去された。
 しかしその時、若き会長は、「正義と平等が光る都市の建設を!」との師匠の遺志を受け継ぎ、決然と立ち上がられた。
 ブラジル文学アカデミーのアシス初代総裁は、「大きな危機の時に、人間の精神は偉大さを示す」と語っている。
 いざという時に、人間の真価は現れる。
 師匠が残した一冊の手帳には、市民の福祉と市の繁栄のために成し遂げたい「夢」が、力強く綴られてあった。
 それは、市井の人々の意見に耳を傾けて練り上げた、民衆のための政策であった。
 会長は、「師匠の夢」を知り尽くしていた。後継者として、3期12年、市長を務め上げ、師の夢を一つ、また一つと実現していかれた。
 そして、ユニセフ(国連児童基金)などから「児童友愛都市」として認定される、素晴らしい市政を成し遂げられたのである。
 夫人も同じ心で、多くの母たちや子どもたちのために、気高い奉仕と献身の活動を貫いてこられた。
 会長ご夫妻は、見事に勝たれました!
 師匠も、どれほど喜んでおられることか。
 人生の真髄は、師弟の道に通じている。
 高潔な会長の師弟の勝利、夫妻の勝利の劇に、私たちは心から敬意を表したい。
15  私には、ご夫妻の心情が痛いほど胸に迫ってくる。
 私も妻も、私たちを育成してくださった恩師の夢をすべて実現するために、この人生を捧げきってきたからである。
 そして私は、今、立派に成長したわが青年部の諸君に、「一閻浮提広宣流布」という“地球の平和”と“人類の幸福”への壮大な夢を、明確に託しておきたい。
 先日(18日=現地時間)には、フランスのユゴー文学記念館に、私が親交を結んだデクエヤル元国連事務総長が訪問された。
 ユゴーは綴った。
 「勇気を出せ、そして前進せよ!」
 「われわれは諸民族の団結にむかって行くのである、人間の団結にむかって行くのである」と(井上究一郎訳『レ・ミゼラブル2』河出書房新社)。
 青年部の諸君の舞台は、全世界に開かれている。堂々と、自身の勝利のために、友の幸福のために、団結して進んでいただきたい。
16  誠心誠意で「人間外交」を
 きょうは、青年部の訪中団200人が出席されている。皆で拍手を送りたい。元気で行ってらっしゃい!
 また、教育本部の訪中団は20人である。ご苦労さま!
 日中の友好も、私は先駆をきり、世界平和の信念に立って、道を開いてきた。
 青年部には、この平和友好の事業を、バトンタッチしていかねばならない。
 創価の青年らしく、誠心誠意、「人間外交」をお願いしたい。明朗闊達に、新しい「金の道」を築いていただきたい。
 全員の無事故、健康、そして成功を、私は祈っている。行ってらっしゃい!
17  鋭敏で柔軟な女性の智慧
 さて4年前、私はガルシア会長と語った。忘れ得ぬ思い出である。
 ――世界は刻々と変化している。
 その変化を鋭敏に察知して、柔軟に対応できるのは、なんと言っても、女性の智慧である。女性の力である。
 その女性の声に、真摯に、謙虚に、耳を傾けよ! 「今まで通りでいいんだ」という石頭の男性は、時代遅れだ。時代に取り残されてしまう。この一点を忘れてはならない――。
 大要、これが会長との語らいの、一つの結論だったのである。
 学会も、男女が同等に、広宣流布へ一体となって力を発揮する流れができてきた。
 「男女はきらふべからず」との日蓮大聖人の御金言通りの前進に、いよいよ拍車がかかってきた。
18  思えば、40年前、御聖訓の通り、「悪口罵詈」のなか、必死に戦ってきたブラジル婦人部の皆様に、私は厳然と申し上げた。
 「時代を変える本当の原動力は、何か。
 それは、女性の祈りであり、生活に根ざした女性の活動以外の何ものでもない。
 女性の力は、大地の力である。大地が動けば、すべては変わる。動く。
 権威の城など、簡単に崩れ、不動のように見えた山でさえも動かせるものである」
 この私の大確信の通りに、ブラジルの女性たちは、祈り抜き、戦いきって、立派な、晴れ晴れとした女性の時代をつくってくれた。
 ブラジル、ありがとう!
 ブラジルといえば、サイトウ婦人部長が思い出される。喘息で病弱だった宿命を見事に転換し、南米広布の先駆者となられた、非常に立派な方だった。〈シルビア・E・サイトウさんについては、SGI会長が「わが忘れ得ぬ同志」の第1回で綴っている。本紙の本年4月16日付で掲載〉
19  人材の大河
 今、不思議にも、新しい時代とともに、新しい人材が、さっそうと躍り出はじめた。
 人材の流れが加速している。この絶好の機会を逃してはいけない。
 きょうは、世界の知性が期待を寄せる、アメリカ創価大学の友も出席してくださっている。
 ようこそ! ありがとう!
 現在、人類の議会たる国連で、「国連宗教NGO(非政府組織)委員会」の議長を務めているのは、アメリカ創価大学の大学院に学んだ桜井君である。
 数多くの団体が参加する委員会の代表として、キリスト教やユダヤ教、イスラム教をはじめ、世界の諸宗教の対話と協調を、絶妙にリードしている。賞讃の声も多い。
 〈「国連宗教NGO委員会」は、宗教・倫理関連の国連登録NGOからなる委員会。1972年に発足し、NGO委員会では最も歴史がある。SGIニューヨーク国連連絡所の桜井浩行代表が2005年から07年までの2年間、議長職を務める〉
 すごい時代に入っている。世界各地に、平和・文化・教育の大河が、着々と広がっている。
20  革命児の覚悟
 さて、ガルシア会長の師匠(コンセイソン氏)は、逝去の1週間前に、一つのメモを書き残された。
 そこには、こう記されていた。
 「逆風が吹くのはわかっている。しかし、私は勝たねばならない」
 この師匠の遺言の通り、会長ご夫妻は、忍耐強く、一切を乗り越え、勝ち越えて進んでこられたのである。
 まさに「関西魂」、わが「学会精神」と同じであると、私は申し上げておきたい。
 あの「大阪事件」の裁判に臨み、私は関西の青年に語った。
 「私は、戸田先生の弟子です。東洋、そして世界の平和をリードする革命児です。これくらいのことは、何とも思っていません。
 諸君は、自らの一日一日の闘争を、立派に勝ち抜いてもらいたい」と。
 「師子王の心」で戦い抜いたのが、関西と私である。
 ともあれ、「関西の大勝利」が、「学会の大勝利」につながることを知っていただきたい。
21  最後は勝つ!
 ブラジルの文豪ギマランエス・ローザ(1908〜1967年)の長編小説『大いなる奥地』の中の言葉を、君たちに捧げたい。
 「私は勝利をうるために生まれてきた」「どんなことがあっても、私はひるみはしない」(中川敏訳、『筑摩世界文学大系83』筑摩書房所収)
 どんな困難があろうとも、断じて負けない。断じてひるまない。
 最後は、仏法を持った私たちが勝つ!――この気概でいきましょう。
22  本日は、ガルシア会長ご夫妻をはじめ、全出席者の皆さま、本当にありがとうございました。皆さまのご健勝を私は心から祈ります。
 さらに、ブラジルの5,562の都市の方々にも、私は最大の感謝をお伝えしたい。その代表であられるガルシア会長ご夫妻に、重ねて全員で万雷の拍手をもって、御礼申し上げようではありませんか。
23  政治を監視せよ
 私も親しく会見した統一ドイツのヴァイツゼッカー初代大統領が、かつて、日本の市民や学生に、このように呼びかけたことがある。
 「国の政治を政治家や古い制度に任せず、若者が積極的にかかわっていくことが大切だ」「そして、武力ではなく、平和を望む心で未来を切り開いていってほしい」(「毎日新聞」1999年5月7日付朝刊)
 戸田先生は、私たち青年に、「心して政治を監視せよ!」と叫ばれた。
 青年こそ時代を動かす力である。今再び、私は、青年よ、心して政治の魔性を監視せよと訴えたい。
 また、ヴァイツゼッカー大統領は、ある時、こう述べておられる。
 「政治は精神に近づく道を求めるべきである。精神の領域からの批判的な声を嫌ってはならない。それに学ぶことを心得ているべきなのである」(加藤常昭訳『ヴァイツゼッカーのことば』日本基督教団出版局)
 その通りであろう。反対に、人間の精神の声、良心の声を聞かなくなった政治がどうなるか。
 大統領は、私との会見で、他者に対し、世界に対し、“開かれた心”を持つことの大切さにふれ、こう語られた。
 「強大な権力による政治に戻ってはなりません」「日本とドイツは、ともに『閉じた社会』がいかに危険であるかという苦い経験をもっています」と。深くかみしめたい哲人大統領の言葉である。
24  心を結ぶ対話
 ヴァイツゼッカー大統領との出会いは、世界中が注目したベルリンの壁の崩壊から1年半後、ドイツ統一からは8カ月後のことであった。〈1991年6月12日、ボンの大統領官邸で〉
 統一ドイツは、どこへ向かうのか。国連や日本との関係はどうなるのか。互いに胸襟を開いて、率直に、何でも話し合ったことが本当に懐かしい。
 あの東西冷戦のまっただ中で、私は、ソ連にも行った。当時のコスイギン首相をはじめ、最高首脳と会見し、真剣に誠実に語り合った。
 一期一会となった中国の周恩来総理との語らいでは、周総理から遺言のごく、日中友好の未来を託された。
 アメリカの国務長官を務めたキッシンジャー氏、キューバのカストロ国家評議会議長等々、私は、一民間人の立場で、また、世界の平和と民衆の幸福を願う一人の人間として、世界の一級の指導者と心を開いて対話を続けてきた。深い友情を結んできた。それは、私の人生の誇りである。
25  ブラジルの詩人ナラーヴォ・ビラツキ(1865〜1918年)は高らかに謳った。
 「青年は、春のごとくに!/その魂は、花々に満ち、光り輝く」
 「未来を見つめ、過去など持たぬ/常に真正面から挑み/恐れず、大胆な働きをなす」
 時は、瞬間瞬間、過ぎ去っていく。
 だからこそ、大胆に、「前へ! 前へ!」
 くよくよしていないで!
 未来を見つめ、進み続ける人は、永遠に青年である。その人の魂は、花々に満ちて、光り輝いていくのである。
26  嘘つきは必ず行き詰まる
 世界の英知の箴言を皆さんに贈りたい。20世紀のブラジルの詩人カルロス・ドルモンは言った。
 「困難は、“人格”を建設する時の鉄骨である」
 困難と戦うからこそ、“人格の背骨”が鍛えられるのである。
 また、スワヒリ語のことわざに、こうある。
 「嘘つきの道は短い」(『世界ことわざ大事典』大修館書店)
 嘘をついても、すぐに行き詰まってしまう。嘘は、絶対に、真実には勝てないのである。
27  19世紀のアメリカ・ルネサンスの思想家エマソンは綴った。
 「文明の一つの十分な尺度は、よき女性の勢力である」(志賀勝訳『エマソンの言葉』西村書店)
 学会においても、これまで以上に、婦人部、女子部を尊敬していきたい。
 何度も申し上げてきたが、「絶対に女性を叱らない。絶対に女性を怒らない。絶対に女性を見下さない」ということを、重ねて男性の幹部に徹底させていただきたい。
 もしも、自分の奥さんや娘さんが叱られたら、どう思うかを考えれば当然のことである。
 きょうは、このことを、学会の指針として全員で決議し合いたいと思うが、いかがだろうか。
28  良書を読め 悪書を避けよ
 「国家は、人間と良書で建設すべきである」――こう叫んだのはブラジルの作家モンテイロ・ロバット(1882〜1948年)であった。
 良書と親しみ、悪書は遠ざけよ――これが古今の偉人の一つの結論といってもいい。
 戸田先生は、青年が低俗な雑誌などを読んでいると烈火のごとく注意された。「良書を読め。古典を読め」と。
 また当時、戸田先生を貶める中傷や虚偽が流されたならば、若き私は、どこへでも、飛んで行って抗議した。
 悪意ならば戦い、偏見ならば正し、誤解ならば丁寧に真実を説いていった。
 いかなる権威・権力の人間が相手であろうとも、戸田先生には、指一本たりとも触れさせない――それが私の青春の誓いであり、祈りであり、実践であったことを、最後に申し上げておきたい。
29  きょうは長時間、本当にありがとうございました!
 海外からお越しくださった皆さま方、ご苦労さまでした。お会いできなかった皆さまに、くれぐれもよろしくお伝えください。
 これから暑くなりますが、ともどもに健康に留意して、有意義な夏を過ごしてまいりましょう。
 お元気で! またお会いしましょう!

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