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創価教育代表協議会  

2006.6.4 スピーチ(聖教新聞2006年下)

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1  きょうは、ご苦労さま!
 人間をつくる。後輩を伸ばす。青年を鍛える。そこにしか、新しい希望は生まれない。
 たくさんの若き友を、励まし、育てゆく皆さまの使命は、重大である。その栄光は、三世永遠に光り輝く。
 私は恩師・戸田先生のもとで10年間、毎朝のように、万般の学問を打ち込んでいただいた。
 それだけではない。折に触れて教えていただいた人間学、指導者論は、数知れない。
 たとえば、真心こめた一本の電話、一つの伝言の大切さ。思いがけず、かけられた、温かいねぎらいや励ましの言葉が、どれほどうれしいか。
 これが一流の人物の外交戦なのだよと先生は教えてくださった。
 一面から言えば、先生ほど口やかましい人はいなかった。お茶のいただき方など、基本の礼儀にいたるまで、一人ひとりの青年を徹底して訓練してくださったのである。
 すべて、未来に向かっての平和と文化の大闘争のためであった。
 この偉大なる師匠ありて、今の私がある。
2  深き愛情を胸に
 先日、“精神の大国”インド随一の英知の城である「国立タゴール国際大学(ヴィシュヴァ・バーラティ大学)」の先生方をお迎えした。〈5月29日、同大学から池田名誉会長に「名誉文学博士号」が授与された〉
 創立者タゴールは語っていた。
 この大学は、学生のものである。師匠と弟子の合同事業、学生と学生との協同作業によって完成されるものである、と。
 大いなる理想を目指して労苦を惜しまぬ、師弟の絆、学友の絆それ自体に大学があるというのである。
 創価大学の掲げる「学生参加」「学生第一」の理念と、深く通じるものがある。
 1901年、シャンティニケタンの地に学園を創立してから、タゴールは、最愛の妻と愛娘、敬愛する父、そして息子を相次いで失った。そうした悲しみにも耐え、タゴールは学園建設に尽力していった。
 タゴールは深い愛情をもって、学園生を育成していったのである。それは、学生たちに、そのまま伝わっていった。
 タゴールは、うれしそうに振り返っていた。
 学生たちも、母校に対して切なる愛情を持つようになった。
 卒業した後も、機会の許す限り、母校を訪ねてくれるようになったのである、と。
 創価大学、創価学園にも、卒業生が、わが家に帰るがごとく舞い戻ってきてくれる。
 創価同窓の友が、母校を愛し、母校を誇りとして社会で活躍し、後輩たちの道を開いている様子も、毎日のようにうかがっている。
 “自身の勝利の姿で、母校の発展に貢献したい”――多くの卒業生が、こうした心意気で奮闘してくださっている。そして折あるごとに、活躍の様子を報告してくださる。
 私は、その「心」がうれしい。
 青春の誓いに生き抜く人は、必ずや最高の勝利の人生を歩んでいける。
 多くの卒業生が、このことを見事に証明してくださっている。〈タゴールの言葉は北昤吉訳『古の道』プラトン社を参照した〉
3  「建学の同志」
 タゴールは訴えていた。
 「大学は学生と教授が打って一丸となり、働く解放の家であってほしい。真理に対する共通の熱望と共に、修養の喜悦を分って、麗しい徳性を養うために、彼等は完全な生活に生きねばならない。
 かくして、始めて大学は創造的な人を生む雰囲気を作るであろう」(井上秀「詩聖タゴール翁の思い出」、日本放送協会編『人生読本2』所収、春陽堂書店)
 ともに真理を求める。ともに建学の理想を実現する。その道において、教授と学生は「同志」となり、「一丸」となるべきである。
 ここに、タゴール国際大学が、インド最高峰の学府へと発展していった一つの原動力がある。わが創大も、また、そうあっていただきたい。
4  弟子への書簡
 タゴールの学園において、創立者と学生、そして教員が、どれほど深い連帯で結ばれていたか。
 以前、インドで活躍される加賀谷忠夫氏から、まことに貴重なタゴールの直筆書簡を贈っていただいた。大切な宝として、保管させていただいている。
 この書簡は、創立当初のタゴールの学園に学んだ5人の学生の一人、ハリハラン氏にあてられたものである。
 ハリハラン氏は、学園を卒業後、母校で教員を務めるとともに、師タゴールと一緒にインド独立運動に戦った人物である。
 書簡は、弟子のハリハラン氏を学園の教員として歓迎するもの(1923年10月)など3点であり、氏と親交の深い加賀谷氏が、友情の証として譲り受けたものである。
 そこには、「あなた(ハリハラン氏)の奉仕と献身は、私たちの学園に対する最も価値ある贈り物となることでしょう」との師タゴールの賞讃が綴られている。
 今、創価大学、創価学園においても、同窓生が教職員となって母校に戻り、「第2の草創期」の建設に取り組んでくださっている。皆が一丸となっての尊き献身に、心から感謝申し上げたい。
5  今回、来日されたタゴール国際大学のボンドポディア教授も、同大学の卒業生である。
 著名なタゴール研究者であり、母校に舞い戻って、長年、教鞭を執ってこられた大学者である。
 ボンドポディア教授の祖父君もまた、タゴールの学園で教員を務め、父君も同大学で学ばれた。
 教授自身も、タゴールと直接、お会いしておられる。
 〈「名誉文学博士号」授与式の前日、創価大学を訪れたボンドポディア教授は、タゴールと池田名誉会長の共通点に論及。
 ①教育への情熱②民衆への慈悲③卓越した国際性――の3点を挙げ、「これこそ、調和に満ちた世界の構築への重要な礎です」と語った〉
6  日本の漁師が「タゴール万歳」
 加賀谷氏がハリハラン氏から直接、聞かれた麗しいエピソードがある。
 東洋人として初のノーベル文学賞を受賞(1913年)したタゴールが、日本へと船で向かっていた洋上での出来事である。
 タゴールを乗せた客船が、たまたま日本の漁船とすれ違った。そのとき、漁船から、「そちらの船に、タゴールは乗っていますか」との打電があった。
 それを聞いたタゴールは甲板に姿を現した。
 すると鉢巻き姿の日本の漁師たちが甲板に立ち、「タゴール、万歳!」と叫んでくれたのである。
 タゴールは心から感銘した。そして後々まで、ハリハラン氏たちに、この時の驚きと喜びを、涙を浮かべて語ったというのである。
 インドの詩聖と日本の海の男たちとの名画のような交流の光景が、目に浮かんでくる。民衆との心の交流に勝るものはない。
 次元は異なるが、わが創価の同志にもまた、海を舞台に活躍する波涛会や、農漁村部(東北は漁光部)の方々がおられる。
 尊き友の使命の航路の無事安穏を祈るとともに、文豪ユゴーの書葉を謹んで贈りたい。
 「逆境にぶつかっても笑顔を見せる、というのが海で指揮をとるものの常なのだ」(榊原晃三訳『九十三年』潮出版社)
 私は、全同志を代表して、タゴール国際大学の名誉学位を拝受させていただいた。
 あの漁師たちのごとく深き友誼の心を込めて「タゴール、万歳! タゴール国際大学、万歳! インド、万歳!」と申し上げたい。
7  ますます発展する創価大学
 「塔が高ければ高いほど、基礎は広くなければなりません」(蛯原徳夫訳「議長あいさつ」、『タゴール著作集第8巻』所収、第三文明社)。これも、タゴールの至言である。
 創立35周年を迎えた創価大学では、「新総合体育館」「創大門」を建設。さらに「新総合教育棟」の完威予想図も発表された。
 世界に輝く理想の学府へ、いよいよ本格的な建設が始まった。大いなる発展の基盤を、さらに盤石に固めてまいりたい。
 うれしいことに、このたび創価大学工学部情報システム工学科の研究が、文部科学省の推進事業に採択された。
 〈「私立大学学術研究高度化推進事業」の社会連携研究推進事業として採択された〉
 今年度、採択された12大学の一つに選ばれたのである。
 この研究には、渡辺一弘教授をリーダーとして、11人の先生方が参加されている。企業などと連携し、技術の構築と製品開発にあたるとうかがった。
 なお一昨年には、生命情報工学科の西原祥子教授の研究が、同事業の「ハイテク・リサーチ・センター整備事業」に採択された。
 また、環境共生工学科の戸田龍樹教授の研究も、同事業の「産学連携研究推進事業」に採択されている。
 これで、工学部の3学科すべてで、文科省の支援を受けた研究を進めていることになる。
 さらに、この4月には、教育学部の関田一彦教授が推進されている研究が、文部科学省の「大学教育の国際化推進プログラム」に採択されている。
 先生方の見事なる取り組みに対し、創立者として、この席をお借りして、心から感謝申し上げたい。
8  民衆の力強める英知の大城を
 ブラジルの天文学者であるモウラン博士は、創価学園を訪れた際の印象を、次のように述べておられる。
 「先生方と生徒たちのレベルの高さに驚きました。
 先生方はやさしく、平等、人間主義、生命の尊厳のための教育という、はっきりした哲学を持っていらっしゃいました。
 また、生徒たちとの懇談も、大変に印象的でした。生徒たちは生き生きとしていて、質問の内容も高度で、その成熟した姿に感心しました。
 私たちが現在暮らしている、この暗い世界に一筋の金色の光を見たようで、希望を感じました」
 私は、牧口先生、戸田先生の志を継いで、創価教育の大道を切り開いてきた。
 創価学園は今、日本を代表する名門校との評価もいただいている。世界の一流の識者が、数多く訪れている。牧口先生、戸田先生も、どれほど喜んでおられるだろうか。
 またモウラン博土は、アメリカ創価大学への期待を、こう語ってくださった。
 「アメリカ創価大学は、世界に開かれた、リベラルな学問の揺籃になると思います。『一日の始まりを告げる朝日』のように開かれた大学です。
 知識と知恵と慈愛が、人類のために結合し、組み合わされた、新しい教育の光です」と。
 ありがたい期待と激励の言葉である。
 タゴールは、「無気力と無知は人間にとって最悪の屈従の形態である」と綴っている(三浦徳弘訳「詩人の学校」、『タゴール著作集第9巻』所収、第三文明社)。
 創価教育に携わる皆さま方には、無知の闇を晴らし、民衆の力を強くしゆく「英知の大城」を築いていただきたい。
 少子化の時代である。だからこそ、最高の智慧を発揮し、未来の勝利を先取りすることだ。すべての教職員が団結して、教育の向上に努力してほしい。
 そして、人類に希望を贈る「人材の大城」を、堂々と、つくり上げていただきたい。

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