Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

「中学生文化新聞」新春寄稿 養おう”師の心”

1974.1.5 「池田大作講演集」第6巻

前後
1  未来の世界を予想することが、しだいにむずかしい時代となってきました。
 一時、流行した“未来学”も、いつのまにか姿を消し、あすの社会をますます不安定に思う人が増えてきています。身近に迫る文房具の値上げは、消しゴムの一つをとってみても倍近くになっていることを知ると、インフレーションが来たとしか考えられません。
 将来は、全人類が食べねばならぬ食糧が欠乏するとか、エネルギー源がなくなるとか――極端には公害のため地球は縁を失い。人間は生存できなくなるなどという、悲観的な見通しをたてる人すらいます。
 真の仏法による宇宙観からみれば、宇宙の生成が、成劫、住劫、壊劫、空劫の四期によって分かれており、更にこの四劫が一過程として繰り返していることは、もことに明白であります。地球もまた、この法則のうえにあります。現代科学はいま、この“四劫”の考え方まで実証しています。しかし、まだこの四劫が永遠に続くもの、しかも無始無終のものであることには及んでいません。これは将来に待たねばならないことです。
 ただ私たちは、ここで将来が、どのような時代になっていくのか――を研究することも大切でしょうが、もうひとつの立場、すなわち、これからを、どのような時代に変えていこうとしているのか――という積極的な態度も必要ではないでしょうか。
 これからの日本、そして地球世界というものは、春秋に富む“皆さん方”のものといえます。だれかが助け、なんとかしてくれるであろう、という保守、受け身の態度ではなく、“僕たちの地球”は“僕たちの手”でつくり、守ろう、という主体的、積極的な姿勢がほしい思うのです。
 特に中学生時代は、青春時代の開幕期といってよい。人間の一生のなかでも、もっとも大事な、子供から大人になる曲がり角にあたります。
 なんでも吸収し、批判し、思ったことを行動に移していきます。純粋な情熱に満ち大きな理想もいだきます。この中学生時代にどのような自覚と努力で進むかは、その人の一生を決定してしまうといっても過言ではありません。
 この成長期にある中等部の皆さん方は、自由に伸びのびと毎日を送るなかに、人間らしい広々とした心のを大事になながら、どんなに苦しいことがあっても、乗り越えて進んでいく、力強い“師子の心”を養ってください。クラスメートとの交遊や部員会活動、そして生徒会、クラブ活動をとおして、明るいスケールの大きな人になっていただきたいのです。
 更に、社会が現在あらゆることで悩んでいる問題に、目を向けていってください。二十世紀の文明は、ひとつのおおいなる転換を迫られています。大きな壁にぶつかっている。あらゆる組織、そして既存の権威、権力が複雑にからみあい、一見安定し、不変のもののようにみえるかもしれません。ところが、その地盤である文明が、価値観が、音をたてて崩れてきているのです。そのうえに立つ多くのものも、しぜんに揺れ動き、その欠陥を暴露しつつあります。
 時代の変革といっても、それは急になされるものではありません。一人の、ある個人が“よし、やるぞ”と小さな力を奮い起こし、挑戦するところからなされていきます。新しきものの建設や開拓といっても、全面的に個人の力に負っているのです。
 中等部は未来の部です。負けたり、流されたりしないで、今後、どうしたらこの行き詰まりを切り開き、新しい平和な地球を構築できるかを考えてもらいたい。そして自分自身に挑戦していただきたい。暗い不可解な世界も、この勇気あるチャレンジする君たちの英知のまえに、立ちふさがることはできなくなることでしょう。中等部こそ、人類の滅亡をストップさせる新しき一波であっていただきたいのです。
 私は、二十一世紀を「生命の世紀」と名づけました。人間、そして、その根底にある“生命”について、更に鋭く探索のメスを入れていかなければ、今後の世紀は、暗いものとなっていくでしょう。生命への深い尊敬の念があるところに、思いやりの心、慈しむ心が芽生えるでしょう。多くの人の人間革命の姿を見るとき、現実の厳しい試練のなかにこそ、真の人間として生きる道があることを教えてくれるにちがいありません。
 中等部の皆さん、この尊い人間道の先駆を、晴ればれしくも、堂々と進んでいく“師子の子”として、勇気の責任ある、二十一世紀のけなげな使者となり、成長していってください。
 なお、皆さん方にとって「社会の年」というのは、学校でも家庭でも、しっかり勉強し、信心するとともに、いつも健康に気をつけ、成長をめざすことでもあることを忘れないでください。

1
1