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日蓮大聖人・池田大作

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婦人部夏季講習会 幸福な家庭を築こう

1972.8.20 「池田大作講演集」第4巻

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4  母親の人格は子供に投影
 第三に、以上の話と関連しますが、よき母となり、わが子を見事に育てきっていただきたい。子供はなんといっても両親、なかんずく母親の影響を強くうけて成長するものであり、子供の教育に占める母親の役割は重要といわなければならない。
 この母親の子におよぼす影響ということで、ネコは本能的にネズミをとるのかどうか、という面白い実験があった。つまり生まれたばかりのネコを二組に分け、一方は、ネズミとともに育て、もう一方はネコだけで生活をさせた。更に何匹かは親がネズミをとるところを見せながら育てた。何週間かたってそれぞれのネコのなかにネズミを入れたところ、ネズミと一緒に育ったネコは約二十匹のうち、ネズミに襲いかかったのは、たった一匹であったという。それに対してネコだけで育ったほうは、約半数がネズミに襲いかかった。しかも、親がネズミをとるとことを見せながら育てたネコは、ほとんど一〇〇パーセント、ネズミに襲いかかったというのである。
 皆さんのお子さんをネコにたとえているのでは決してありませんが、(笑い)この実験から子に与える母の影響については、人間の場合にもそう違わずにあてはまるのではないか、といえると思う。つまり、生まれつきの才能、性質等の違いはあるとしても、その子供の一生を決定するものの大部分は、もっとも身近な母親のふだんの態度、行動、姿勢によって大きく左右される、ということである。
 また学校教育は、おもに知識を教えるのであって、しつけなど人間性そのものに関すること、更に人間としていかに生きるかという問題については、家庭での教育に負うところが、きわめて大きいと考える。
 したがってこれらの問題は、結局、皆さん自身に課せられた重要な問題となる。信仰は人間としての完成をめざすためにあり、信仰は確かなる人間完成への根本である。ゆえに皆さんはどこまでも清らかな、奥底には鋼のような強さを秘めた信心を貫いて、自らの尊く生きる姿勢をもって、お子さんに接していただきたい。
 しかし、だからといって信心さえしていれば子供は立派に育つ、と安易に考えてはならない。高等部、中等部、少年部に入っているからと、それだけで安心するようなことがあってもいけない。
 子供の教育に関心をもつ皆さんが、より一層子供の成長のために力を尽くすことが、第一義の問題となってくるのである。といっても、教育ママにというのではもちろんない。むしろ自由に伸びのびと育ててほしい。
 つまり平凡であっても、ほんとうに母親らしい母親であれば、母親の尊い人生を生きようとする姿勢が、子供に投影されていくものである。
 なお、昼間働いていて思うように子供の面倒をみることができない人がいるかもしれない。その場合も、母の子に対する愛情というものは、決して時間で決まるというものではない。
 ともあれ、教育ママのように大人のエゴを子供に押しつけるのは誤りである。あくまで子供たちの側に立って、子供の友人としてぞんぶんに子供の個性を生かしてあげることが、もっとも大切である。
 一例になるが、十九世紀初頭のドイツの優れた教育者として有名なフレーベルは、村の人たちから“ばかじいさん”と呼ばれながらも、野原で子供とともに歌い、ともにたわむれた。彼は決して高いところから子供を見おろすようなことはしなかった。子供と同じ次元にまでおりて、子供の弱さをわが弱さと知り、子供の未完成をわが未完成とし、子供の旺盛な活動力をわが活動力としていった。有名な「いざや我らが子らに生きようではないか」との名句のなかに、彼の面目躍如たるものがあると思う。
 どうか母親である皆さんは本能としての盲目の愛情に生きるのではなく、そこに信仰の光りをあて、自身を高めながら、心豊かに広々とした世界に、わが子を育てていただきたい。(拍手)
 なおいろいろな事情があるとは思うが、特に男子のお子さんをもつ方は、本人も希望するならば、できれば大学へ進学できるように皆さんも努力していったらと思う。
 最後にいままでの話を総括して、きょう集まった皆さんに一つの提案をしたい。それは“家庭を盤石にする運動”ともいうべき実践を展開していったらどうか、ということである。(大拍手)
 盤石な家庭の建設があってこそ、ご主人もぞんぶんに力を発揮することができるし、子供も未来へスクスクと成長できるのである。皆さんは家事、育児、隣人との付き合いなどで多忙であろうし、職業をもっている人もいよう。だが、学会を支え、広布を推進している皆さんが、もっとも大事な基盤である家庭を、地域の人々から信頼される見事な家庭にしていくことこそ、広布の多大な推進になることを銘記したい。
 皆さんのご自愛とご一家の限りない繁栄を心から祈り、私の話を終わります。(大拍手)

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