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大事のときの叫びこそ真の雄弁 第1回学生部弁論大会

1959.10.15 「会長講演集」第4巻

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1  私の話には点数も賞品もないのです。ひとつ気楽に聞いていただきたい。
 日本の国にも、ずいぶんたくさん雄弁家はおります。選挙のときや、国会議事堂では、すごい雄弁です。しかし、彼らにほんとうの雄弁があるならば、自分の党派ぐらいまとめてみればよいのに、それすらできない。りっぱなことをいっているが、ぜんぶ見栄か、自分自身を偉そうにみせるためであり、真に人のための正義感ではないのです。
 真実の雄弁には、あくまでも正義感と、信念と、そして哲理を含んでいなければなりません。もうひとつ大事なことは慈悲です。慈悲なくば、なにごとも、率いることも、救うこともできないのです。
 世界でいちばん有名な雄弁というものは、たった二分間の雄弁といわれているのです。イタリアの常勝将軍が、祖国が滅びんとするとき、決然と叫んだことばなのです。常勝将軍のわずか二分間の信念で、正義感で、叫びで、全国民が結束して祖国を救ったといわれているのです。長く話したから雄弁だとはいえないと思います。
 三、四年前、立正佼成会の庭野日敬が国会に召喚されて、いろいろ調べられたことがある。このとき会長先生はニッコリ笑って『こっちへくれば、ちょうどいいな。このときこそ立正安国論を叫びたい』と、申しておられました。
 大事なときに叫ぶことこそ、私はほんとうの雄弁ではないかと思うのです。
 いま有名な『大逆事件』という幸徳秋水のことを書いた本がありますが、あの本を読むと、日ごろ大言壮語しておった連中が、牢にはいると、ほとんどしょんぼりしてしまい、ただひとりの女闘士である菅野スガに笑われたという文章がありました。
 大事なときにいえる、そういう信念のある皆さんになっていただきたいということが、まずひとつ。
 それから、せっかくりっぱな雄弁をもっておっても『声仏事をなす』御本尊様を拝んだ皆さん方は、これから信心を深め、学識も豊富にし、信念も高めて、力量もつけて、国連総会や国会議事堂、または国際平和会議、国際学術会議において、仏法のため、社会のため、民衆のため堂々と叫びきっていかなければ、きょうの雄弁大会も無意味であると思うのでございます。将来への大きな第一歩にしていただきたいと思います。
 もうひとつ付け加えておきたい。それは、ぜんぶが雄弁家になる必要はないということです。書くほうも人の大事です。おのおの性格もございます。大聖人様は『自体顕照』とおおせになっております。みずからの体を顕現し、最高に発揮していく。御本尊様に照らされて、おのおのの性格、境遇、性質に応じ、自分の幸福のためにも、仏法のため、そしてまた民族のためにも働いていけばけっこうなのです。
 釈迦を中心とした場合にも、有名な舎利弗は知恵第一、目連は神通第一、迦葉は頭陀第一、羅睺羅は密行第一、そして富桜は弁舌第一と、おのおのの性格に応じて修行し、幸福を感じ、釈迦仏法をひろめております。
 また、織田信長を中心にした場合にも、木下藤吉郎は知略第一、知恵第一、柴田勝家は豪勇第一、そして明智光秀は理論第一、学識第一といわれ、前田利家は温厚第一というように、あらゆる性格の将軍を調和し、補い合っていかせています。
 学会もそうでなくてはなりませんし、皆さん方が今後、社長になり、学者になり、指導的立場にたった場合にも、そういうことを考えなければならないと思います。
 皆さん方は、過去でも、現在でもなく、将来に生きる人々です。どうか、しっかり勉強し、信心し、からだを大事にして、国家のため仏法のために尽くしてください。(当時、総務)

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