Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

2 「アボリション二〇〇〇」の挑戦  

「希望の選択」ディビッド・クリーガー(池田大作全集第110巻)

前後
4  「制限」から「廃絶」への前進
 クリーガー まず、「アボリション二〇〇〇」がネットワークであることを強調させていただきたい。この点が重要であると思うのです。各団体は、それぞれの独自の角度と技術で、ネットワークに寄与しています。たとえば医師や弁護士の団体、平和活動の団体、人権擁護の団体、環境保護の団体、宗教団体などが含まれています。
 と同時に、ネットワークならではの、強みと弱みがあります。強みとしては「多様性」と「責任の分担」が挙げられます。弱みは、たとえば組織の構造に明確さがないということです。
 具体的に申しますと、今までは、地雷禁止国際キャンペーンにみられたような、統一性や、焦点をしぼった問題の取り上げ方がなかった。
 しかし、そうした方向に向かっていることは確かですし、成功すれば、きわめて大きな勝利が、人類のために得られるでしょう。
 池田 私もそう期待します。運動がもたらした意義については、どうお考えですか。
 クリーガー どんな運動でも、意義をすぐに評価するのはむずかしいことですが、目標のバーを高く設定したのはよかったと思います。つまり、私たちは用語を変えることによって、問題を討議する前提を変えたと思うのです。
 私たちの運動の前には「廃絶」を唱える活発な世界的なキャンペーンはありませんでした。核兵器に対する関心の大方は、それまでは「兵器の制限」という意味での「アームズ・コントロール」(arms control)を用語にして論じられていました。私たちは「兵器の制限」では十分ではないという立場をとりました。「軍縮」を意味する「ディスアーマメント」(disarmament)でも十分ではないというのが、私たちの立場でした。私たちは前提とする目標のバーを「アボリション」(abolition)、つまり核兵器の「廃絶」という究極の高さに定めざるをえませんでした。
 そして実際、バーを高めることにある程度、成功したと言えます。今では核兵器を保有する国々も、最終目標は「アボリション」でなくてはならないと認識しています。しかし、それらの国々は、思惑としては、なるべく遅い前進を選んでいます。「アボリション二〇〇〇」ではなくて、「アボリション三〇〇〇」をめどにしているかのようです。これは認められません。
 今のところ、私たちの運動の意義として、人類への警鐘を鳴らすことに役立ったということは言えるのではないでしょうか。私たちは明らかにすべきことを明らかにし、現状維持は受け入れられないことを明確に主張してきました。私たちは、人間の品位を守る闘争にみずからの意見を表明してきたのです。
 池田 私どもの「アボリション二〇〇〇」への参画は、千三百万人の署名という形でした。仏法を基盤に、人間生命の尊厳を絶対の基調とする私たちの運動は、人類共通の「善性」を信じ、それに訴えてきました。その立場から、核廃絶への世論を高める啓発を行っていくところに、真価があると思っています。
 「核を手放せば国際社会でのステイタス(地位)を失う」という核保有国の頑迷さを、「核保有こそ国家のステイタスを貶める」という民衆の叫びで包囲していきたいと決意しております。

1
4