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日蓮大聖人・池田大作

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日本における仏教の受容  

「美しき獅子の魂」アクシニア・D・ジュロヴァ(池田大作全集第109巻)

前後
4  ジュロヴァ よく分かりました。
 池田 しかしながら、仏教の伝来が、国家のためのものであったとは言え、仏教が以後の思想・哲学レベルで日本の民衆の精神風土に大きな影響をあたえたことも確かです。
 たとえば、当時の人々が「穢れ」としていみきらってきた死後の世界に、仏教から「浄土」の概念が持ち込まれ、前向きに死後の世界をも視界におさめるようになったことが挙げられます。後に、日本古来の
 死穢観念を転換させた仏教は、さらにやがて、葬祭儀礼を利用して民衆の間に仏教を定着させていくことになりました。もともと仏教は、ことさら葬儀執行の重要性を説いてはいなかったのですが、葬儀という儀式は、民衆に仏教を定着させる役割を果たしました。その反面、死後の世界にばかり目を向け、現実社会、日常生活の内面からの改革という、仏教本来の使命を歪曲させることにもなったのです。
 仏教伝来の後にも、天皇の権力による排仏もありましたが、それほど大きな規模とはならず、それが、わが国における仏教受容の最大の特色ともされております。
 ジュロヴァ それでは、仏教が日本に受容されていくどの段階で、仏教が日本人にとって「個人的な宗教」となったのでしょうか。
 池田 平安時代に最澄や空海が、中国から天台宗や真言宗を導入した時点も、日本では仏教の大きな変革期にあたりますが、鎌倉時代の日蓮大聖人などをはじめとする、いわゆる「鎌倉仏教」において初めて、仏教が民衆の生命変革、個の確立の原理として働いたとされております。

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