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日蓮大聖人・池田大作

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後記 「池田大作全集」刊行委員会  

「21世紀への選択」マジッド・テヘラニアン(池田大作全集第108巻)

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6  九六年二月、テヘラニアン博士は、SGI会長の創設した戸田記念国際平和研究所の所長に就任。同博士の卓越したリーダーシップにより研究所は順調に成果をあげており、二〇〇四年初頭の時点で、十一冊の研究書籍を発刊するにいたっている。世界五十七カ国に研究協力を惜しまない学識者のネットワークを組み上げているのは、テヘラニアン博士の情熱と力量に負うところが大きい。
 日本人にとって、イスラムの人と思想は縁遠い存在である。近年、イスラム関係の紹介書がふえているとはいえ、一般の人々には分かりにくい。仏教とイスラムとの類似点、相違点を明らかにした本書の文明論は、同時にイスラムへの正確な理解と認識をもたらすものとなっている。
 ここで語られ示されたイスラムの多様性、寛容、人間主義の考え方は、人々のイスラムへの偏見の眼を大きく変換させるものである。しかも具体的な例を通し、歴史に照らし、思想を通じて説得力に満ちた展開となっている。
 なかでも興味深いのは、両者が「宗教的精神」の必要性で一致し、「分断と対立」の時代を、「寛容と共生」を軸とした新たな地球文明の時代へと転換しようとしていることである。「地球文明」とは決してユートピアの思想ではない。
 テヘラニアン博士からは、そうした文明が発展するための基盤として、文化の「自己讃美主義」や「自民族中心主義」を排し、「利他主義」への移行が主張されている。
 善悪二元論にかたむくことなく、人間と人間とを結びあう道にしか人類の未来はありえない。「利他」の生き方には他人を信頼し他のために尽くすことが自分もよりよく生きることになる、という積極的な生のあり方が示されている。
 テロの脅威が色濃くおおう世界。混迷の国際情勢のなかで、本書がさし示す人間と人間とを結ぶ“精神のシルクロード”は、人類に希望の未来を約束している。世界は今、二十一世紀への新たな歩みを開始しはじめた。たゆみなく積み重ねられてきた池田SGI会長の世界の識者指導者たちとの対話は、じつに千五百回を超えている。友情と信頼の強い絆のうえから織りなされる二人の語らいは、現代文明の闇と混迷が深ければ深いほど、これからも倦むことなく続けられるだろう。希望の火を赤々と灯すこの人間主義の『対話』を滋養として、われわれは新たな文明構築への挑戦をしていきたいと思う。    二〇〇四年五月三日

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