Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

あとがき モントリオール大学教授 ギー…  

「健康と人生」ルネ・シマー/ギー・ブルジョ(池田大作全集第107巻)

前後
1  今、「健康と人生」についてのてい談を終えるにあたって、私たちが思いつくままに提案した(1)科学、(2)実践医学の進化、ならびに(3)個々の人間、社会総体、そして究極的には人類の未来への倫理的関心をめぐる三者間の出会いから、結果として、何が期待できるのかについての正確なバランスシートを作ることは、もちろん不可能である。企画は大胆であったが、結果は華々しいものではなく、まずまずというところである。私たちは、それぞれの問題についての考え方、そして究極的には、行動のためのいくつかの手掛かりを示した。私たちは、きわめて重要であり、緊急を要すると判断した諸問題をとりあげ、議論した。それらの問題は生と死、健康と病気に関するものである。それらのほとんどは、死をまぬかれることのできないわれわれ自身の人生について学ぶべき意味、そして病気によって不可避的に脅かされ、制限を受け、弱められる「健康」と定義されるところの均衡状態への不断の闘争と、間断なき探求に対する自覚に関係するものである。
 健康と人生についての議論は通例、生物医学の領域、すなわち科学や技術、専門の領域に限られている。しかし、このてい談では、私たちはそれらの制限を超えて、よく回避されがちな人類学的、社会的、政治的次元をも視野に入れた。私たちは地球的レベルに立って、倫理・社会問題や世界的な諸問題について議論した。そこでは、金融秩序の激変(通貨の自由化とグローバリゼーション)が、生産(企業の合理化や多国籍企業による寛大な法律や比較的要求の少ない労働力をもつ国々への生産の移行)、および通商(すでにグローバル化された貿易の規制緩和)に影響をあたえている。これらの大変動は、あらゆるところで社会の変化や政治秩序の重要な再調整をもたらし、個人や社会、そして世界の人々に対して、生と死、健康と病気に関する新たな問題を提起している。換言すれば、私たちの地球レベルの論議は、現在の人類を創り出してきた事象が、将来どうなっていくかを視野に入れたものになっている。それは、私たちの今日の行動によって、人類の明日が決まるからである。
2  現在のグローバリゼーションへの力強い動きは、しかしながら、国家を超え、文化を超えた「出あい」に涵養されていることも事実である。このてい談もそのような多くの出あいの一例にすぎない。本てい談では、ともすれば分断したり対立しあう学問の分野や文化の間の垣根を取り払うように努めた。私たちの目的は、論争したり、説得したり、あるいは相手を打ち負かしたりすることではない。私たちはたがいに相手からより多くのものを学びたいと考えた。私たちは、とらえがたい現実をなんとかして理解しとらえようとしたのである。
 それゆえに、私たちは、本てい談によって解答を得たからというよりも、むしろ現実に即した、明確で包括的な質問意識をもつことができたという意味において、得るところが多かったといえる。
 今まで何度か述べてきたように、健康とはつねに問題をはらんだ「均衡状態」への不断の探求のなかにある。それはまた、「意味」への探求でもある。その意味は、私たちが人生を経験するごとに矛盾をきたすものであり、それゆえにつねに新たな探求が必要となる。
 私たちは、本てい談と相互の意見交換の時期を経て、多くのものを学んで、それぞれの人生の道に戻る。本書を読んで、読者も話しあいに参加されるのであるが、その後、読者もまた、それぞれの異なった独自の道に戻ることになる。読者の皆さんが本書を読んで、今までよりも用心深く賢明に、自分の健康に留意するようになってほしいと思うが、しかし、それによって、生活の勢いや溌剌さが失われることのないよう望みたい。皆さんの人生が楽しくすばらしいものであってほしい。本書は、できるだけ多くの人々にとって、生きることが楽しいと言える世界を、ともどもに創出していくための呼びかけであり、願望である。

1
1