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日蓮大聖人・池田大作

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3 大学教育の使命  

「健康と人生」ルネ・シマー/ギー・ブルジョ(池田大作全集第107巻)

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4  望まれる大学と社会との相互啓発
 シマー 『大学の理念』にあげられた第三点については、いかがですか。
 池田 大学で創造された「知」を、社会へ伝播する問題ですね。
 大学で探究された成果に照らして、現在、世の中の進んでいる方向が、どのようなものか、今後どのようになるのか、を検証するものと言えるでしょう。その結果、危険なものには警告を発し、価値あるものには促進を勧奨すべきでしょう。
 シマー 「社会との対話」が必要であると思います。現代社会は、高度に工業化・技術化が進んでいます。このような社会において、科学がどのような役割を果たすべきか――それは、大学の教授や研究者が、他者との対話を通じて、解決を図っていくべき問題であると思います。
 池田 “象牙の塔”に閉じこもるのではない、ということですね。
 シマー そうです。大学は、もっと積極的に社会の要請に応えていくべきだと思います。また、社会を発展させていくために、新しい人材や新しい種類の「知」を発掘して、社会が秘めている可能性を開花させていく技術を開発すべきでしょう。
 池田 歴史をみても、インドにおける釈尊の時代、中国での諸子百家の時代、また、西欧ではルネサンスの時代など、現実社会とのダイナミックな交流によって、学問は飛躍的な進歩を遂げております。大学と社会の相互啓発によってこそ、倫理的価値が問い直され、また、社会的発展がうながされるもので
 す。
 シマー 大学での具体的教育で言えば、社会全体の変化に対応して、講義の内容が社会の要請にかなっているかを考慮しなくてはなりません。
 教員は、講義内容が古くなっていないかと心をくだかなくてはなりません。現代社会では、多くの分野で信じられない速さの進歩がみられる。新発見、新しいアプローチの開発、新しい分野の創造などを、できるだけ、リアル・タイムで即座に学生に伝えるべきです。そのために教員は、多くの論文を読む必要がある。毎年同じ内容を教えることなど、原則としてありえません。
 池田 日本では、毎年、同じノートを開いて教えている学者もいると失望する学生もいます。(笑い)
 しかし、博士が言われるように、大学は本来、時代に即応して、現実に価値を生みだすために、つねに教育の内容も、あり方も、調整されなければなりません。そして、そこには、教育を受ける側の幸福という視点がつねに必要です。
 牧口会長は、教育は“管理”ではなく“慈愛”であると断言しております。
 教育は、そこで学ぶ学生の未来だけではなく、人類の未来をも開く“慈愛”の聖業です。各分野の専門家にはそのような視点をもっていただきたい。

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