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日蓮大聖人・池田大作

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対談にあたって  

「健康と人生」ルネ・シマー/ギー・ブルジョ(池田大作全集第107巻)

前後
6  二人の恩師とすばらしい善友
 池田 味わい深い言葉です。
 シマー 博士にもうかがいましたが、人生で大きな影響を受けた人物はいますか。
 ブルジョ 大学時代の恩師の一人に、文学部のジュリアン・ラピエア教授
 がおります。教授の人格、また文学に対するアプローチにはたいへん感動しました。
 一つの出来事をよく思い出します。教授はある日、詩を詠んでくれました。心服するようなみごとな力強い朗読をしてくださった。そういう先生だったのです。
 私は、その詩を分析し、解説することになっていたのですが、読み終えた教授は、私が批評することを拒みました。あまりにもすばらしい詩で、解説して、かえって損なうようなことが絶対にあってはいけない、と言って……。
 その瞬間に、私は、この世には、科学的な方法や分析では把握できないもの、そのまま全体として理解し受け入れなければならないものがあることに気づいたのです。
 池田 興味深いエピソードです。恩師は、「詩」と「科学」との根本的な相違を、博士に“体得”してもらおうとしたのですね。
 ブルジョ ラピエア教授はグローバルな観点でものごとを広くとらえる人物でした。私にとって、つねに自分もあのようになりたいと憧れる対象であり、目標にした人でした。教授は心も視野も非常に広く、それでいて自分の考え方には過酷なまでに厳密で、首尾一貫していたからです。
 池田 博士も、シマー博士と同じように、かけがえのない偉大な「師」に会われていますね。
 人生の目標にできる「師」に会うことほど、最高の喜びはありません。
 ブルジョ 私には、もう一人恩師がいます。私が十七歳のころ出会ったクロード・ラベル教授です。おそらく、教授はそのころ、まだ三十歳くらいだった
 と思います。
 私にとって何よりも印象深かったのは、教授が私たちのことを非常に注意深く見てくれていたことで、彼の下に集まった学生一人一人に対して、力になってあげようとする姿勢にあふれていました。
 ラベル教授からは、それが自分たちが取り組んでいる事柄であれ、または周りの人々であれ、それらに対し、つねに注意力を高く保つことがいかに重要かを学びました。何ごとに対しても衰えることがなかった注意力の高さは、彼個人にとどまらず、授業を受けた学生たちにも受け継がれていると思います。
 とにかく、この二人は、私にとってかけがえのない恩師であり、それぞれから違った面で影響を大きく受けました。ある意味で言えば、この二人から影響を受けたからこそ、教壇に立っている今の自分がいるのだと思います。
 池田 釈尊は次のように説いています。
 「偉大な師に出会うことのできない人は多いが、偉大な師に出会う人は少ない。偉大な師の説かれた教えを聞かない人は多いが、教えを聞く人は少ない。教えを聞いて、それを実行しない人は多いが、教えを聞いて、それを実行する人は少ない」(「アングッタラ・ニカーヤ」)
 師の教えを聞く幸運にめぐり合っても、師の心を弟子として実践しなければ、それは、聞いたことにはなりません。弟子に、師への「感謝」と「報恩」の心があってこそ、師の一言一句を、実行に移せるのです。
 博士は、かけがえのない二人の恩師に出会い、その教えを弟子として実行されている。希有のことです。博士の深い見識の源泉がよくわかりました。
 ブルジョ ありがとうございます。さらに私が、影響を受けた友人の一人に、レオ・コーミエ氏がいます。ケベック市民人権連盟会長を務めた人です。
 コーミエ氏は、教育者ではなく、ソーシャル・ワーカー(社会福祉に従事する人)で、若いころにはたいへん苦労された方です。また、彼は厳密には文学者ではありませんでしたが、非常に文学的な人でもありました。
 彼の勉強のしかたというのは、いわゆる学校での勉強や本を読んで学ぶといった伝統的手法ではなく、主に人の話をよく聞いたり、実生活のなかでさまざまな事柄に関心をもって鋭く観察することでした。彼は、そういう方法で知識を高めてこられた非常に頭のよい方です。彼の知性は、言うなれば、現実性に富んだ知性なのです。
 池田 博士は、二人の恩師のほかに、すばらしい善友にも恵まれたのですね。
 コーミエ氏は現実生活のなかで知恵を体得していかれた。それこそ、まさしく“生きた知恵”です。苦悩と対決し、現場で磨きあげられた観察眼ほど、本質を見抜く確たる知恵はありません。
 博士とコーミエ氏の友情について、もう少し語っていただけますか。
 ブルジョ 私が彼と出会ったのは、人権連盟の会合でした。私が彼に魅了されたのは、理論的な考え方と現実的な考え方の双方を組み入れた、まったく新しい枠組みでものごとをとらえて、独自の意見を構築することができた点です。
 私たちは、よく話しあう機会をつくりました。そして、おたがいの違いも認めあえる間柄になりました。私は幸運にも、彼のような非常に現実的な物の考え方ができ、実践的な知識を備えた人と関係を深
 める機会にも恵まれたのです。
 池田 たがいの違いを認め尊重しあっていく、相手の良いところを謙虚に学んでいく……それでこそ真の友情です。
 ブルジョ この対談を通して、重要な諸問題に関する会長のお考えを知り、一つの仏教的伝統のなかから、今の時代のために何を汲み取ることができるかを学ぶ機会をもてることはうれしいことです。
 シマー ところで、会長は写真や映像で見るよりもずっとお若く見えます。どうすれば、そのような若さが保てるのでしょうか。私のほうが本当は、七歳若いはずなのですが。(笑い)
 池田 いえいえ、シマー博士のほうこそ、はつらつと活躍しておられます。
 仏法では、「連持色心」と説きます。肉体(色法)と精神(心法)が一体である生命が、永遠に連続していく姿を言います。心身が調和しつつ働き、自己の生命の向上へ、充実へと回転していく。それが人生の一つの理想です。
 ともあれ、体の健康は当然として、心と頭脳の健康、社会の健康が大事です。
 「すばらしい価値ある人生とは何か」「幸福の条件である『健康』な人生は、どうすればつくれるのか」「最高に悔いなき人生を送るために、医学は何を教えてくれるのか。仏法の英知は何を教えてくれるのか」
 語りあいましょう!人類のために! 二十一世紀のために!

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