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「思想の自由」が法律で制限される危険性…  

「21世紀の人権を語る」A.デ・アタイデ(池田大作全集第104巻)

前後
1  池田 このソ連の提案は、大いに論議を呼び、各国代表が種々の発言をしていますね。
 アタイデ 例えば、チャン氏(中国)は、こう述べていました。
 「西欧で人権思想が生まれた十八世紀から、『思想の自由』というのは人間の不可欠な自由の一つである。それはたしかに『宗教の自由』の概念を含むものである。そして、『思想の自由』は、『良心の自由』をも含むものである。しかし、世界の人口の大多数に対するものとして、この『宣言』を考えるならば、“あまりはっきりとそれぞれを明示する必要はない”というソ連の修正案は妥当ではない」と。
 また、チャン氏は、彼に先立ってサウジアラビア代表が“十九世紀の西欧列強がアジアに対して植民地主義的支配の確立にあたり、宣教師団が本来の宗教的役割だけではなく、先兵としての役割を果たしていた”と指摘したことに同感を示しつつも、それを理由に「思想の自由」になんらかの制限を加えるような修正を行うことには反対しました。
 池田 チャン氏は、アタイデ総裁が指摘されているように、西洋と東洋の対立を超えた視座から、この条項を検討しようとしていた一人ですね。
 アタイデ また、アンセ・マティエンソ氏(ボリビア)は、「この草案第一六条は、“人間の精神”の重要な問題に関するものである。すなわち、宗教的信条と相互の寛容に関するものである」と、その重要性を指摘しています。
 プラサ氏(ベネズエラ)は、ソ連代表が、「思想の自由」に良心・宗教の自由を含めている一方で、当該国の法律による制限を加えることを認めようとしている点に異議を唱えていました。
 池田 プラサ氏の懸念は、よくわかります。「思想の自由」が法律で制限されることは、たいへんな危険をはらみます。
 私ども創価学会が第二次世界大戦当時に軍事政府から受けた迫害は、先ほど申し上げた「治安維持法」という思想統制の悪法にもとづいたものでした。
 アタイデ 私もこの条項には高い関心をもっていました。自身の発言にあたって「『人権宣言』全体の中でも最も重要な条項である。人類は、つねに“思想と良心の自由”の権利を獲得するために戦い、苦闘してきた」と強調したことをはっきり覚えております。
 池田 人権闘争の歴史は、“精神の自由”の獲得のための闘争史です。
 総裁は、また、同条の後半に記されていたように、「宗教または信念を享受する自由」の「礼拝および儀式によってその宗教または信念を表明する自由」の部分にも言及されていましたね。
 アタイデ 私は、こう発言しました。
 「この条項の草案は、完璧である。原則の表明につづいて列挙された詳細は、この条項の基礎をなす哲学の精髄そのものである」と。

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