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日蓮大聖人・池田大作

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「熱情をもって“献身する者”」  

「21世紀の人権を語る」A.デ・アタイデ(池田大作全集第104巻)

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1  アタイデ 討議に熱中するあまり、ある共産主義国の代表はこぶしを固め、獅子のたてがみを連想させる頭を振り回し、力の限り机をたたいて、資本主義の悪行を声を嗄らして責める。資本主義国の代表も同じくらい感情的な表現で、共産主義国の欠点をあげつらうといった具合です。
 ところが、驚くべきことに、討議が終了すると、先ほどまで互いの喉笛をかみ切らんばかりの剣幕だった“東”と“西”の両陣営の人々が、宮殿内のバーに集まり、にこやかに談笑しているのです。
 池田 じつに「人間」らしい交流の光景です。
 顔と顔を向けあわせること、そして、思想信条は違え、同じ「人間」であるという観点からすべてを発想していくことが重要です。
 アタイデ 論争が紛糾して、一致点をみるのがどうしても不可能と思えるような危険性をはらむと、不思議と対立は消滅していきました。三カ月におよぶ審議のなかで、思想上、哲学上の激突が繰り返されましたが、人類の崇高な事実をなしとげようとする共通の熱意によって、対立は最終的になくなっていったのです。
 池田 正義と平和への熱き思いの結晶として、「世界人権宣言」草案は第三委員会で可決され、ただちに十二月九日、十日の国連総会で、最終討議にかけられました。アタイデ総裁は、この総会の席上、ブラジル代表として見事な演説をされています。
 アタイデ 議決投票を前に、私は訴えました。「この宣言は、一つの国民、一群の国民の特定の観点を表明したものではなく、特定の政治的信条や哲学的体系の表明でもない。数多くの国家の知的で、道徳的な共同作業の成果である」と。そして「この国連総会の席上において、すべての民族がその良識の証としてこの宣言を可決すべきだ」と。
 演説の後、フランス外相であったロベール・シューマン氏が、私どもブラジル代表を抱擁しようと、椅子から立ち上がるのを見ました。そのジェスチャーに驚いた私に、彼は言ったのです。「私の人生でこれまで聞いたなかで、あなたは最高の雄弁家だ!」と。
 池田 議場の熱気がそのまま伝わってきます。文字どおり「言葉を最大の武器として」のご活躍です。人類の未来を思う総裁の高邁な精神が、「最高の雄弁」となって、世界各国の代表の心を打ったのでしょう。
 アタイデ 総会の感激も冷めやらぬその夜、私はルーズヴェルト女史の手紙を受けとりました。それには、「民主主義は、熱情をもって“献身する者”の純粋かつ高貴な思想なしには生き永らえないものです。ブラジル代表の言葉は、アブラハム・リンカーンのゲティスバーグの演説を思い起こさせるものでした」と、つづられていました。
 今日、「熱情をもって“献身する者”」とは、まさに池田会長のように、すべての人間の価値の擁護に献身される人であり、創価学会インタナショナル(SGI)の活動と理念に、その最も高貴な例を見いだします。
 池田 人権擁護の偉大なる先人のご期待に、私どもはお応えしてまいりたい。かつて「第十五回『SGIの日』記念提言」(一九九〇年一月二十六日)で確認したことですが、SGIの基本理念は次の三つに要約できます。
 第一に、自国の文化、伝統を重んじ、法を尊重しつつ、良き市民として、それぞれの社会の繁栄に貢献する。
 第二に、生命の尊厳を根本に人間文化・教育の興隆をめざす。
 第三に、戦争をはじめとするあらゆる暴力を否定し、人類の幸福と世界の平和と繁栄に尽くす。
 仏法を根本にしたこの「人間主義」「平和主義」「文化主義」の運動が、世界の新たなる平和創出への源流となることを確信しています。

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