Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

“内発の力”を育む“精神のルネサンス”…  

「21世紀の人権を語る」A.デ・アタイデ(池田大作全集第104巻)

前後
1  池田 こうした自然法思想が、イギリスの「マグナ・カルタ」(大憲章)などの思想的基盤となっていきました。
 総裁は、これら人類の英知が築きあげた広範な知識を学びに学び、自在に知恵を発揮して、人類の幸福のために行動されてきました。
 内から湧きあがる“人類の尊厳への信念”――それは“究極の人類愛”と呼べるものでしょう――があればこそ、たゆまぬ行動へと精進できると思うのです。“内発”ではない行動は、やがて形式主義に堕し、ややもすれば利害・打算にまみれ、本質を見失ったものになってしまう。これは、崇高な理念で始まった多くの運動がたどってきた道でした。
 仏法では、仏が説いた正しい法がいきわたり実践されている時代(正法)から、形式的な修行や儀礼、建築物だけが残っている形骸化の時代(像法)を経て、教えの高低・浅深などに関係なく利害・打算によってさまざまな主張が混乱して起こる時代(末法)へいたると説いています。
 正しき精神のみずみずしき継承と復興、すなわち“精神のルネサンス”によって、“内発の力”を育む――そこに宗教の使命があると私は確信しています。
 アタイデ われわれの時代が、やがて“第三の千年(西暦二〇〇〇年代)”を迎えようとする今、池田会長は世界のだれよりも、文化・教育の未来に対して影響をおよぼしている偉大な方です。
 池田 ホイットマンは高らかに謳いました。「民主主義の真髄には、結局のところ宗教的要素がある」「新しい勢力によって、いままで以上に深遠で、ゆるやかで、崇高な信仰が復活しなければならぬ」。
 ヒューマニズム、民主主義をつらぬくのは、人々に“内面の規範”を与えゆく人間のための宗教、生き生きとした信仰である――この鋭き洞察に、私は人権の普遍性を支える原理があるとみたいのです。
 「世界人権宣言」制定にあたっても、総裁はこの一点をつねに視されていたのではないでしょうか。
 アタイデ 「世界人権宣言」の「第一条」をめぐる論争が、「世界人権宣言」の検討作業の全体にわたる指針を定めることになりました。そして、三〇条から成る永遠不朽の「宣言」が制定されました。
 「第一条」について、私の述べた意見が基調として受け入れられ、人権とは“普遍なるもの”に起源をもつという提案の意図が完全に達成されたことを確信しました。したがって私は、第一条に、「人間は神の似姿に擬して創られ」との一文を入れる修正案を撤回したのです。
 池田 十分な論議を経て、第一条は「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は理性と良心を授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」と決定されました。
 総裁のご説明をうかがって、この「第一条」の基底をなす深遠な思想、精神的・哲学的背景がいちだんと明確になりました。
 アタイデ 不信感と恐怖感に浸りきった人類は、われわれが植えつけた一粒の種の存在すら気づかないかもしれません。しかし、遠い将来、この一粒の種が大樹に成長し、花や実を結んだとき、人類ははじめて植えつけた人々の努力を、愛情をもって正しく評価するでしょう。

1
1