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獄中を学びの場に変えた“マンデラ大学”…  

「21世紀の人権を語る」A.デ・アタイデ(池田大作全集第104巻)

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1  池田 マンデラ氏との会談では、氏が獄中にあって、牢獄を“マンデラ大学”ともいうべき、学習の場に変えたという話題になりました。
 どこにいても、そこに「教育」の輪を広げていく。人間としての向上を求めてやまない魂――。これこそ人間の証です。
 アタイデ マンデラ氏は、長年にわたる牢獄生活の間に、牢獄を学びの場所に変える術を習得したのです。暴力と迫害のもとにあって、マンデラ氏は、彼とともに牢獄にあった者を指導する術を知っていました。牢獄を学びの場所に変え、そこから、新しい生活と知恵を生み、新たな精神のあり方を創出しました。
 池田 マハトマ・ガンジーもそうでした。「ガンジーが監獄に入ったのが知れると、囚人たちの雰囲気が一変した。重罪犯さえも辞儀を正した」という証言があります。
 そればかりか、ガンジーは獄中から、詩人タゴールをはじめ、多くの人々と手紙の交換を通して精神の交流を深め、闘いの指導をつづけました。ガンジーの「人格の力」「不屈の魂」を、端的に示したエピソードです。
 アタイデ どんなに不正な迫害があろうと、来たるべき世紀に、高い精神的秩序を創造しゆく、使命をもった人間たちの勇気を打ちくだくことはできません。
 池田 日本でも、明治維新の思想家であった吉田松陰は、獄中で囚人たちを教育しています。「革命」の人は、「教育」の人です。
 マンデラ氏は、捕らわれの人々のなかで、それぞれの専門的知識や技術を互いに教え合う学習の組織をつくり、数々の障害と戦って、“勉強する権利”を拡大していったのです。
 アタイデ マンデラ氏のようなすぐれた人間にとっては、「拘禁」という強制が、かえって“魂の模範の学校”をつくらせる――“マンデラ大学”は、それを力強く証明しています。
 池田 人間を、最も人間らしく完成させていくのが教育です。ゆえに、その本質は、権力・権威による“非人間化”との戦いにあるといえましょう。
 私どもの創価学会は、牧口初代会長も、戸田第二代会長も教育者であり、当初、創価教育学会として発足しました。「教育」こそ百年先、二百年先の未来をつくる根本の力である。これが私どもの変わらぬ信条であり、確信です。
 アタイデ あらゆる善き方向への改革のためには、教育こそが、その死命を決するといってよいでしょう。
 池田 そのとおりです。私は、マンデラ氏に、こう語りかけました。「一本の高い樹だけでは、ジャングルはできない。他の多くの木々が同じような高さにまで伸びていってはじめて、大きな森の茂みができ上がるのではないでしょうか」と。こうした点からも、私はマンデラ氏に、今後の南アフリカの教育事業に対する支援を提案したのです。
 一九九二年六月にお会いした、南アフリカのデクラーク大統領(当時)とも、学術・教育の分野における交流の重要性で意見の一致をみました。
 アタイデ 南アフリカの偉大な復活は、これまで予期しなかったすばらしい何かが、出現しようとする兆しです。
 冷戦の終結とソ連の崩壊の後には、私たちが生きている世界は別のものとなりました。それは、かつて、フランス革命に象徴されるような、すべての人間に「平等」と「自由」を保障するという世界の原則、基盤が整ったことを意味しています。

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