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マンデラ氏への五つの具体的提案  

「21世紀の人権を語る」A.デ・アタイデ(池田大作全集第104巻)

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1  池田 冷戦終結後、初の開催となったスペイン・バルセロナでのオリンピック(一九九二年)は、百七十四カ国・地域が参加し、盛大に開催されました。この大会には、南アフリカの代表も、じつに三十二年ぶりに晴ればれと参加していました。
 開会式の入場行進の模様を、私もテレビで見ておりました。南アフリカ共和国の選手団が入場したとき、スタンドで喜びを満面に浮かべ、大きな拍手を送っていたマンデラ氏の姿が印象的でした。
 一昨年(一九九一年)、半世紀にわたりつづいたアパルトヘイトが廃止され、その一つの結果としてオリンピックへの出場となりました。世界が大きく希望に向かって回転し始めたことを感じさせる光景でした。
 アタイデ 南アフリカは、たしかに、先のオリンピック参加国のなかで、ひときわ目立つ存在でした。マンデラ氏は、“世界のスポーツの祭典”に他国と同等の条件で、祖国を復帰させたのです。それは、疑問の余地なく、長くつづいた人類の差別、不平等の偏見の壁を消滅させる“扉”を、開くことになったのです。
 池田 私の友人で、キルギスタン生まれの著名な作家チンギス・アイトマートフ氏は、「現代は、新しい建設的な人間を求めている。“反対”と“紛争”の時代から、新しい建設の時代に全世界が向かっている」と語っています。そして、その「建設的な人」の一人として、ネルソン・マンデラ氏の名前をあげていました。
 アタイデ 現代世界の建設は、ネルソン・マンデラ氏や池田会長のような、重要な人物によって行われています。そうした人物がもつ「建設への哲学」「建設への意志」は、すべての人間が平等で、自由であると宣言できる日が実現するための、決定的要素となるでしょう。
 池田 私はマンデラ氏との会談の席上、五つの具体的な提案をいたしました。
 第一に、ANC(アフリカ民族会議)から、創価大学に留学生を受け入れる。
 第二に、南アフリカの芸術家を招へいし、民音での日本公演を行い、日本国民に南アフリカ共和国への理解と共感を広げる。
 第三に、「アパルトヘイトと人権」展という総合的な展示会を行い、海外での巡回を行う。
 第四に、「反アパルトヘイト写真展」を日本で開催し、アパルトヘイトの非人間性を広く訴える。
 第五に、アパルトヘイトをはじめとする多様なテーマで、「人権講座」を日本各地で開催する。
 アタイデ それはすばらしい。池田会長の五つの提案は、マンデラ氏にとって、みずからが牢獄で経験した粗暴な取りあつかいに対する“栄光の見返り”となることでしょう。
 池田 こうした提案の実現を通じて、日本に、世界に、人権への理解を、さらに大きく広げていきたいと思います。
 政治・経済的な交流もたしかに重要です。しかし、それを支え、推進する根底の“波”をつくるものは、人間と人間を結ぶ民間交流ではないでしょうか。
 会談から八カ月後の一九九一年六月十六日、創価学会平和委員会が主催し、ANC、国連反アパルトヘイトセンターの協力を得て、「ヒューマン・ライツ写真展」を、横浜・戸田平和記念館で開催いたしました。
 開幕の日となった六月十六日は、十五年前、南ア政府の公用語アフリカーンス語の強要に対する反発をきっかけに、二万人にのぼる学生・生徒が抗議行動を起こしたソウェト蜂起の日であり、反アパルトヘイトの運動にとって象徴的な日でした。
 その他の提案についても、順次実施する予定になっております。
 アタイデ 心から期待します。とりわけ、南アフリカの学生が日本で勉強できるということは、平等感を世界に認識させることになります。それは、権力主義を否定した、彼らの高潔な目的に適う意義深いものです。

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