Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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第二章 世界連邦へのアプローチ  

「世界市民の対話」ノーマン・カズンズ(池田大作全集第14巻)

前後
4  バランスとれた統合体を実現
 池田 国家主権の問題に関連して興味深いのは、ルソーやカントのように世界平和へのシステムづくりに熱心だった思想家ですら、国際機構による国家主権の侵害に関しては、きわめて警戒的であったという点です。
 この点からいっても、近代国家の形成過程における国家主権は、むしろ防衛的で自立的なイメージが強かったようです。
 ご承知のように、ルソーは「主権をそこなうことなしに、どの点まで連合の権利を拡張することができるか」(『エミール 下』今野一雄訳、岩波文庫)とみずからに問いかけつつ、ゆるやかな連合である「同盟」や、緊密な連合である「連邦国家」をともにしりぞけ、その中間形態としての「国家連合」への方向を探っています。
 そうした模索は、平和への実効性が欠如する「同盟」の短所や、国家主権を侵害する恐れのある連邦国家」の短所だけでなく、それぞれの長所をも秤にかけたうえでの、ぎりぎりの選択であったと思われます。
 それにカントも国家主権の保護のために、連合の目的は平和の維持だけに限定されるべきだとして、「たんに戦争の除去を意図するだけの国家の連合状態が、国家の自由と合致できる唯一の法的状態である」(『永遠平和のために』宇都宮芳明訳、岩波文庫)と述べています。
 してみると、用語の差異はともかく、ルソーもカントも、強力な中央集権型の統合体へ移行することには警戒的で、「全体」と「部分」とのバランスを見すえながら「中道」を探っているようです。やはり、道理と良識のおもむくところ、バランス感覚を働かさざるをえないということでしょう。
 もはや、十八世紀的、十九世紀的な意味での主権国家が、通用しなくなってきていることははっきりしています。今後の課題は、ことに経済の分野もふくめて、バランスのとれた発展を可能にする統合体をどう具体的に構想し、実現していくかではないでしょうか。

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