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日蓮大聖人・池田大作

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人類に残された選択──平和  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

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1  人類に残された選択──平和
 人類の歴史は、探求心と才気の歴史である。アイデアと発見、発明、生産の歴史であり、生命讃歌を基礎とした芸術、歌、詩の歴史である。人類の行く手に広がる世界へのあこがれと信仰、神話の歴史、集団で生きる人類の属性を具現した都市の歴史、帝国の歴史である。制度と法律、恐怖と野望の歴史でもある。さらに征服と、あてどなく繰り返される戦争と平和の歴史である。
 人類のこうした特性と活動は、おそらく今後も永続して繰り返され、人類は再び繁栄を極めることもあるであろう。ただ歴史が存続するためには、もはや許容されえないものとして、戦争と暴力は排除されなくてはならない。
 人類の選択の道が、今日のように地球的規模にまで広がったことはないし、かくも先鋭化したこともない。これは人類が建設・創造能力を今日のように極限ギリギリにまで伸ばしたことがなく、人類の破壊力がかくも巨大なものとなったこともないからである。
 原則的には、世界が平和状態にあるのか、戦争状態にあるのかがすべてを決定する要因といえる。ここでわれわれは、人類の歴史を支えていくうえで、いくつかの新たな基本テーゼを銘記しなければならない。
 人類の進化を破局に終わらせないためには、個々の人間、全人類、全国家は、戦争だけでなく、軍事的なものにせよ非軍事的なものにせよ、まずすべての暴力を人類の進化のバロメーターから除外することを自覚しなければならない。
 かつて「成長」が人類の普遍の目標であったかにみえたが、同時にわれわれは、平和が達成されないかぎり、いずれは精魂を振り向けるに値する「成長」が期待できなくなることを認識せねばならない。
 平和こそ、人類の将来を決める重要な方程式を解くカギであるとみなすべきであり、人間社会のすべての段階、すべての領域にとどまらず、人間社会と自然との関係を規定するものとして、非暴力の原則に支えられた平和を確保しなければならない。
 このかけがえのない世界で、“持てる者”の野望と、深刻な困窮状態におちいらないことだけを考えて必死に生きる“持たざる者”の言い分をあわせて聞き、調和を図らなければならず、このためにも、「成長」の概念を明確にしなくてはならない。

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