Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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七、教育機関のあり方  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

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3  池田 科学・技術や経済といった物質世界にかかわる学科が優先されるのは、国家社会の物質的豊かさを手っとり早く増進するのに都合がよいからです。その反面で、人文科学が軽視されがちなのは、物質的実利と無縁であるためであり、さらにいえば、これらの学問はとかく現実の社会体制や権力者のあり方について批判的な眼をもつため、不快がられるという面があると思います。
 しかし、現代は、これまでの価値観が根本的に問い直されなければならないときであり、複雑化した社会の中で一人ひとりが自分の生きる道をとらえ直すことが、否でも必要になっている時代です。国家社会にとっても人類全体にとっても、長期的視野からの繁栄を考えるならば、物事を全体的視点から思考し、計量できない形而上的なものを考察して、正しい方向性を見定めていける人文学的教養を、できるだけ多くの人が身につけていくことこそ、現代にまさに求められているといえましょう。
 これまでは、物質の学問に力を入れた社会が勝利を収めてきましたが、その“勝利”がじつは破綻を招いているのです。これからの時代を切り開くのは、人文学的教養と全体的視野をもって科学・技術を正しく使いこなしていける人間を育成することに成功した社会である、といっても過言ではないと私は考えます。

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