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日蓮大聖人・池田大作

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現実生活への顕現  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

前後
2  また、人間相互の関係でいえば、他のあらゆる人びとの生存の権利を尊重すること、ひいては人格の尊厳を守ることを基本にしなければなりません。その根本的倫理が、前章で述べたようにキリスト教で説かれる“愛”であり、仏教が示している“慈悲”であることは言うまでもないところでしょう。
 そうはいっても、現実の生活場面では、どのように行動し、対処することが“慈悲”であり、“愛”であるのか、千差万別です。たとえば、弱い立場の人には手を差し延べ、苦しみを取り除いてあげることが慈悲であるといっても、実際には、そのようにすることがその人の依存心を助長し、ますます弱い存在にしてしまう場合もあります。手を差し延べないで突っぱねることが、かえって本当の慈悲になることもあるでしょう。
 また、人格を尊重するといっても、もし凶悪な犯罪者を捕らえずに野放しにしておいたならば、そのためにさらに被害を蒙る人が出ることもあります。多数の人びとの尊厳を守るために、その凶悪な人物を捕らえ、自由を奪わなければならない場合もあるのです。
 こうしたことは、社会的規範や明確に制定された法律に則って行われるべき問題です。ただし、それを運用・適用するにあたって、愛と慈悲が根本となっているか、支配欲が根本になっているかによって、その結果はまったく違ってきます。そこに、これらの宗教の教えた根本精神の重要な価値があるといえましょう。

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