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日蓮大聖人・池田大作

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国家と世界平和  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

前後
3  しかし、国家意識の稀薄化が、権力支配の魔性を弱化し、人間が人間として互いに尊重し合っていく“愛”や“慈悲”の優越をもたらしているかといえば、残念ながら、そうはなっていないのが実情です。最近のナショナリズムの台頭をみると、国家意識の稀薄化といっても、それ自体、決して楽観できませんし、権力の魔性は、国家から離れた分だけ、それに代わる別の組織機構に移動し、相変わらず人間性の抑圧をつづけているといっても過言ではないでしょう。
 この根本原因は、私は、人間自身の内なる覚醒と、それに基盤をおいた戦いがなされてこなかったところにあると考えます。抑圧の排除のために戦って勝利を収めても、その後に樹立された新しい体制や機構にともなって、権力の魔性は、以前と同じ力で支配をつづけているのです。それは、たとえば、フランス革命の後に現れたナポレオンの独裁政治にみられるとおりであり、ロシア革命ののちに実現したスターリン政治に認められるとおりです。
 他の人間を自分の意思のままに従わせようとする本性こそ、人間を最も残忍で非情な生き物にする根源であり、他の人びとの幸せと尊厳のために献身していこうとする“愛”や“慈悲”こそ、人間の世界を真実に尊く美しいものとする力であることを、われわれ人類は正しく認識していかなければなりません。この認識のうえに立った自己の変革──人間革命──こそ、人類の一人ひとりになによりも先に、なによりも強く、深く、求められる作業なのです。

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