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日蓮大聖人・池田大作

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八、乾燥化と砂漠化  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

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5  こうした無思慮で無分別な行動は、われわれが、自らのもつ力を濫用し、誤用しているところから生じています。したがって、この問題は、主として文化的な問題なのです。経験上明らかなことは、もしこの世界を、実際に力を行使する側の人間──政治家、開発者、専門技術者、官僚、実業家等──に任せてしまったら、われわれは、無防備なままで混乱状態へと直進することになる、ということです。なぜなら、これらの人たちこそ、敏感な生態的・社会的環境に自らの行動がもたらす間接的または遅発的な影響を十分に考えない張本人だからです。技師たちは自己の領域ではめざましい仕事ができるにしても、彼らにもやはり制約を加えなければなりません。
 人間の存在と、それが及ぼす圧力がいたるところに行き渡り、世界の状況がますます荒廃しつつある現在、われわれには、実務従事者の数と同等の数の詩人、思想家、教育者たちが必要です。そして、実務従事者の中では、おそらくわれわれは機械工やトラック運転手、整備工たちはより少なく、農耕者、農学者、潅漑専門家たちをより多く必要としています。
 池田 まさにおっしゃるとおりです。それは、人間の文化すべてについていえることですが、とくに、ここで取り上げた乾燥化、砂漠化、あるいは博士が指摘されたように、その反対のインドなどにおける洪水の頻発という現象は、真剣に考えなければならない点であると思います。なぜなら、砂漠化も、その逆の洪水も、食糧生産に深刻な打撃を与える災害であり、食糧こそ人類の生存を支える最も大切な、かけがえのない貴重な資源だからです。
 何度もいうようですが、どんなに優秀な機械を作り、数多くの自動車を製造しようと、機械や自動車自体は生命を維持してくれません。この生命を支えてくれるのは、米であり、パンであり、魚等です。すなわち、人間以外の生命体です。そうした生命体が栄えることのできる環境条件を守ることは、われわれ自身の生命を守ることでもあるのです。この地球上の微妙な生命連環の一員としての人類には、あらゆる存在に固有の尊厳性を認め、人間と自然との関係を豊潤な調和のとれたものへと変革する義務があると思うのです。
 注1ラテライト=熱帯地方で岩石の風化などによってできる鉄・アルミ分の多い土壌。

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