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日蓮大聖人・池田大作

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“文化的”危機  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

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4  したがって、われわれは断念すべきではありません。われわれの状態は、決して絶望的ではないからです。後述するように、人間は一人ひとりの中に理解力、想像力、独創力を豊富に蓄えており、そのうえまだ活用されていない、いや顧みられてすらいない道徳的資質を、豊かに備えています。これらの蓄えは未開発の潜在力そのものであり、したがって、人間が自身と環境とに加えた損害を補修するために、そしてこの両者間の失われた均衡を取り戻すために、これらの蓄えは系統的に開発することができますし、またそうしなければならないものなのです。そうすることによって初めて、人類はついには現状を逆転することができるでしょう。このことを認識し、それに従って行動することこそが現代の最重要課題でもあり、また本書の対話における中心的な訴えでもあるのです。
 われわれが文化的な均衡を取り戻し、自らの思考にわずかなりとも正常さを回復させるための最も平明で容易な方法は、人間と自然の関係にかかわる単純な基本的真理についての意識を高めることです。もし、生命の倫理という枢要な分野に確固とした文化上・行動上の基礎が確立されれば、それだけでも、現在の人類の暗愚で無関心な状態をはるかに越える大きな前進となり、その結果、他の分野で成果を上げることも、より容易になるでしょう。そうなれば、徐々に連鎖反応が広がり、やがてはより成長した態度と、より責任感のある社会の進展を招くことでしょう。したがって、この話題にもう少し深く立ち入ることは、たとえそれが重複的であるとしても、それだけの価値のあることでしょう。

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