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日蓮大聖人・池田大作

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一週間の地球年代記  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

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1  一週間の地球年代記
 そのための視野は、空間的尺度において広大であるだけでなく、時間的尺度においても、きわめて遠大でなければなりません。人類が地球上で得た支配的立場は、無数の世代にわたる先祖たちが主導してきた粘り強い増殖と征服と植民地化の過程の結果であり、今日、新たな絶頂に到達しています。その現在から出発して未来を展望するためには、われわれは、いかに現代の状況が過去の状況と違ってきているかを認識しなければなりません。そして今後、さらに大きな相違が生じることが予想されますが、それは量的な相違ではなく、むしろ質的な相違であるということも認識されなければなりません。
 この論考は、まず最古の時代から始めて、いまや頂点に達している──また現代人の見解によれば自分たちがそのきわめて重要な産物である──進化論的な発達を、手短に考察するのが有効でしょう。
 われわれの知りおよぶかぎり、地球は、おそらくいまを去る六十億年ほど前に一つの天体として形成されましたが、生命は、この期間のほぼ中ごろに地球上に誕生しています。この宇宙の小さな片隅で、このような長遠な時間の経過内に起こったことを概観するために、この期間を一週間の日々に比較した場合、地球の誕生と人類出現以前の年代記を月曜日から土曜日の間に圧縮し、日曜日いっぱいをそれ以後の時代──つまり異常な人間の時代──の発端と展開の期間に当てることができます。
2  もし地球が、月曜日の最初の一分間に誕生したものと仮定すると、生命は木曜日の朝早くに鼓動し始め、それから少しずつ、絶え間なく、そして粘り強く組織を織りなし、何十兆もの種や変種へと生まれ出し、広がり、進化し、変種を生じ、分化していきました。これには多くの年代を要しました。そして、たぶん二億年ほど前に生命の連鎖の中で最も進歩した標本ともいえる哺乳動物が出現したとき、土曜日の夕方は、すでに暮れかかっていました。生命はますます多種の、より高度な形態へと容赦なく自己主張をしていきましたが、最初の類人猿たちが森林の聖域を捨て、開けた平地に出て、直立して歩行を試み、食糧になる獲物を捕らえるために徘徊するにいたるまでには、まだ非常に長い時間がかかりました。そしてついに、これらの類人猿たちは、自分たちの両手が自由になり、新しい仕事をするのに使えることに気づきました。これらの仕事は頭脳を刺激し、より系統立ったものにしました。そして、この頭脳の発達とともに、人間化の過程が始まったのです。これは二千万年ほど前、いや、あるいはたぶん一千万年前に起こったことですが、さきの一週間の尺度によれば、土曜日の夜の十一時三十分から十一時四十五分の間に当たる時間です。このほんの短い最後の時間が過ぎ去ろうとしているとき、重大な出来事が間近に迫っていました。
3  真夜中を告げる時計の音とともに──いまから約百万年前、言い換えれば、一万世紀以前に──自然の生んだ最後の重要な子供であるホモ・サピエンスが、地球上のあちこちに出現しました。すでに日曜日は始まっており、それとともに「人間の時代」が開始されましたが、人間が行った最初の仕事は、自らの驚異的な冒険的事業に着手すべく、他の霊長類、そしてあらゆる他の生物と闘争することでした。これが、進化の道程における栄光の瞬間であったのか、あるいは馬鹿げた瞬間であったのか、また、自然が人間をもって永遠の傑作を生み出したのか、あるいは他の生命体の勢力をやがて消滅させるような怪物を生み出したのかは、いまのところまだはっきりとわかりません。いずれにせよ確かなことは、人間の登場とともに、日曜日がそれ以前のどの日とも本質的に違ったものになることが約束されたということです。事実、一週間という尺度を基準にすると、現在、われわれは真夜中を二分間過ぎただけの、日曜日の朝の始まりにおり、人間は他の生物の中ではまだ新参者なのですが、しかし人間の出現とともに、この惑星上のすべてが変化したのです。
 人間によって開始された新しい時代は、きわめて不均衡で奇妙なものです。この時代は二期に分けることができます。すなわち、人間の一万世紀の経歴の九九パーセントを占める“先史時代”と、それ以後の“有史時代”です。先史時代を通じて、人間は強さこそ身につけたものの、まだ原始的であり、比較的ゆっくりしたペースでものごとを進展させていました。この期間に迎えたそれぞれの新しい世紀は、その前の世紀に比べても、ほとんどそっくり同じように思われたにちがいありません。それから突然に、いまから百世紀ほど前に、人類は諸事を選ぶ速度を速めました。そのため、われわれの祖先が行ったことや記録したこと、またわれわれに伝承してくれたことなどのすべては、事実上この最後の百世紀間に、すなわち、有史時代と呼ばれている一万年の間に起こっているのです。この期間は、人間の時代全体のほんの一パーセントにすぎず、あの宇宙論的な比較対象における一週間では、たったの一秒間に相当します。

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