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日蓮大聖人・池田大作

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絡み合う問題群  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

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2  自らが新たに手にした力を、効率的に、あるいは理性的に行使できずにいることの結果として、われわれは、あらゆる種類の予期せぬ困難に出合って当惑しています。そして、今日の新たな諸問題をあたかもたんなるもう一群の古い経済・政治・軍事的難問題のように取り扱うことによって、自らの状況を悪化させているのです。つまり、これまでどおりのやり方で、それぞれ独自のもの、個別に扱える単純なものとして取り扱っているわけですが、いまは明らかに、そのような場合ではありません。現代人はまだそのことを認識しようという気持ちになっていないようですが、現実には、一連のまったく新たな現象に直面しているのです。
 しかもこれらの諸問題は、人間システム全体の機能不全から生じています。諸問題の新たな迷路はそれぞれの中で互いに分岐し、絶えず相互に影響し合い、ローマ・クラブが“世界問題複合体”(ワールド・プロブレマチック)と名づけたものを形成しているのです。
 この“問題複合体”の個々の部分に独自的・個別的な解決を求めることは社会の多くがいまだに試みつづけていることですが、それが無駄な努力であることはきわめて明瞭です。すべてが他のすべてに関連しているのです。つまり、原因も問題も解決法も、すべてが一つの巨大な連続体として、相互に連結し合っているのです。もし、未来に賢明に対処しようとするのなら、われわれはたんにそのいくつかの側面を孤立的に吟味するのではなく、事物の世界性という、全体の動態的な実像を考えなければなりません。人間の条件そのもの──無比無類であり高潔でありながら恐ろしい危難に曝されている──が危うくなっている昨今、これはますます必要なことです。これ以上、無視することは認められず、過ちはもはや許されません。
3  しかしながら、関連する問題はあまりにも夥しく、あまりにも入り組んでいるため、それらすべてにあらゆる角度から切り口を開けるだけの熟練も方途も、われわれはいまだ持ち合わせていないのです。したがって、仕事を単純化し、適切でより容易であるようなアプローチの仕方を見いださなければなりません。この点、偉大な思想家でありヒューマニストであったテイヤール・ド・シャルダンの警告を思い起こすのが、時宜に適ったことでしょう。シャルダンは、「ものごとを観ることは重要であるが、ものごとを観る角度はそれに劣らず重要である」と述べています。現在の“問題複合体”をできるだけ完全に、かつ包括的に検討するために選ぶべき一つまたはそれ以上の着眼点こそが、最も重要なのです。現代人は経済的考察を最優先させがちですが、たとえそうであっても、これらの着眼点の選択は、たんなる経済的考慮のみによって指図することはできません。経済的な側面は、主として特定の国家や階級や文化の利益を反映するものであるか、もしくは不慮の出来事から発生する緊急事態に対応するものであり、“問題複合体”全体を代表するものとは考えられないからです。
 この歴史の転換期において、人類のおかれた状態とそのたどるかもしれない運命に関する複雑な事柄を分析するうえで選ぶべき着眼点は、人間システム全体の核心を射通せるように、また真に全地球的な視野をもてるように、選択されなければなりません。このことは人間と自然の関係を最優先させることによってのみ可能です。
 人間と自然の関係が最近経てきた大きな変化と将来確実に起こるであろうその修正が、他のどんな要素にもまして、人間生活を決定的に左右するであろうことは必定です。人間であることの意味や人類の展望に関するいかなる論議も、まず第一に、われわれが生物物理的世界との関連の中でいかなる立場にあるのかを考慮に入れたものでなければなりません。われわれはその一部分を形成しており、われわれの存在そのものが、究極的にそこに依存しているからです。

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