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日蓮大聖人・池田大作

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日本語版への序――――池田大作  

「21世紀への警鐘」アウレリオ・ペッチェイ(池田大作全集第4巻)

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1  日本語版への序――――池田大作
 ペッチェイ博士の訃報に接したのは、今年(一九八四年)三月十四日、南北アメリカ訪問の旅の最後の訪問地、ハワイにおいてであった。葬儀は近親のみで行いたいとのご意向と伺い、とりあえず弔電を打たせていただき、後日、創価学会インタナショナルの欧州責任者である山崎鋭一博士に弔問をお願いしたのであった。
 ペッチェイ博士の晩年は、ローマ・クラブ創設者として、人類の未来のため、常に世界各地を駆け巡られ、寧日なかった。訪日されたときは、ほとんど必ずお訪ねくださり、私が訪欧したさいも、わざわざローマからパリまで、あるいはご自分で車を駆ってフィレンツェまで出向いて来てくださったのである。いつも、人なつっこい笑みを満面に湛え、人類文明の未来のために為すべきことを語ってやまない、博士の若々しいお顔を忘れることはできない。
 私たちのこの対談集の完成のためにかけられた博士の情熱は並々ならぬものであった。席の温まる暇もない中で、私の提起した問題に、テープレコーダーに吹き込んでお答えくださり、それを起こした原稿を、さらにほとんど全面的に書き換えることもされた。
 いつお会いしてもお元気な姿であられたが、死を覚悟されての東奔西走の日々であられたのであろう。また、人類の未来のために、一刻も早く、と口癖のように言われていたとおり、出版の手続きを急がれ、最初のドイツ語版の刊行をみたのが、本年三月のことであった。両著者の意見は、基本的には、この段階で尽くされているので、すでに十分、完成した書になっているといってよいが、現実の進展に対応して版を追って修正していくとの生前の話し合いもあり、国情の違いも考慮して、日本語版では、若干、発言を付け加えさせていただいた。
 また、博士が逝去された折、読売新聞社が入手された、博士の文字どおりの遺稿というべき一文も、ご遺族のご了解のもとに、本書に収録されている。これらの諸点についてご快諾をくださったご遺族、また、ご協力くださった各国出版社の各位に、心から感謝申し上げるものである。なお、本書は日・英両語で同時に翻訳、編集が進められたが、この作業にはリチャード・L・ゲージ氏に多大なご尽力をいただいたことを付記し、感謝の意を表したい。
 最後に、書名については、英、独、仏、西、伊等の各国版は、博士のご意思どおり『手遅れにならないうちに』(Before It Is Too Late)となっているが、日本語版については『二十一世紀への警鐘』とさせていただいた。
 博士のご冥福を祈りつつ 一九八四年七月三日 池田大作

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