Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

第九章 新しき「宇宙文明」の…  

「科学と宗教」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

前後
11  希望の未来へ――人類的課題を超えて
 ―― 東京工業大学の大島泰郎教授は、知的生物が出現するための条件として、「大きな進化を促す宇宙的な騒乱状態の下にある不安定な惑星環境」(「宇宙生物科学」一九九一年一月号、日本生物科学会)をあげています。
 「騒乱状態」の一つの例としては、“原始の海”に生命が誕生した後の、深刻な食糧危機があります。
 ログノフ 最初、有機物に満たされていた“原始の海”の中では、その栄養を摂取して繁殖する生物が爆発的に広がっていった。当然、深刻な食糧危機に直面し、絶滅の危機を迎えたことでしょう。
 そうした危機的な状況から、光合成によってみずから栄養を作ることのできる生物(ラン藻類)が生まれてきました。
 池田 なるほど。「騒乱状態」とは、その生物にとって、絶滅か存続か、生か死かの“極限”に立たされる環境ということでしょうか。そこに生物の大きな進化が起こり、ひいては知的生物が出現した。
 ―― ほんのわずかなチャンスを、見事にとらえたわけですね。
 池田 トインビー博士は、人類史における文明の発展の根源にも、自然や社会からの“挑戦”に対する“応戦”があると洞察されていた。
 最悪の環境からの“挑戦”に“応戦”して、悪条件を乗り越えたもののみが、次代の繁栄を約束されることは、歴史の“鉄則”といえる。
 ログノフ これまで氷河期など、環境からの“挑戦”に対して、人類の祖先が勝利を収め、生き延びてきました。しかし、今、人類は、核戦争の危機、生態系の破壊、人口爆発、そして精神の荒廃など、新たな「騒乱状態」ともいうべき“地球的問題群”をかかえています。
 池田 私の恩師である戸田城聖先生はよく、「文明を滅ぼす原因はいったい何か。天災なのか、戦争なのか、その他の理由か、これを人類は十分に思索しなければならない」と語っていました。この本源的なテーマに取り組んだのが仏法であるといえます。
 時代が進んでも、人間の心にひそむエゴの魔性を克服しつつ、確かな繁栄の道を歩んでいかなければ、人類の真の勝利はありえない、というのが恩師の結論でした。
 ログノフ 同感です。人類は今、大きな困難のなかにあります。しかし、だからこそ、新しい文明が創造される可能性があるともいえるのです。
 私は、人間の善なる力を支え、発展させていくものとしての「宗教」の役割に期待しています。そして、生命と人間の価値を守るために、積極的に取り組まれている池田先生の行動に、大いに共鳴しています。

1
11