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日蓮大聖人・池田大作

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第四章 「宇宙の法則」が奏で…  

「科学と宗教」アナトーリ・A・ログノフ(池田大作全集第7巻)

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9  人間の生命と「桜梅桃李」の原理
 池田 ところで、先ほどの「諸法実相」という法理は、生命の平等性を解き明かしています。
 人間という存在は、人種や国家、社会体制の違いから、生まれながらの能力や素質、また家庭や集団といった周囲の環境にいたるまで、それこそ千差万別です。その相違から、さまざまな軋轢が生じています。
 時代がこれほど進んでも、人々が真に「共生」への価値観を見いだしえていないのも、現実ではないでしょうか。
 ログノフ そのとおりです。
 池田 こうした「相違」を乗り越えて、あらゆる人間に「平等」なるものは何か――。それが「仏性」であり、「仏界」という尊厳なる生命であると、仏法は説いているわけです。
 その一つの裏づけとなるのが、この「諸法実相」の法理です。いうなれば、「多様性」の現象世界と、「平等性」「統合性」の実相というか……。まあ、このへんはぜひ仏法の専門書を読んでください。(笑い)
 ログノフ わかりました。
 ―― 「共生」の価値観といえば、歴史的にも先ほどのアショーカ王の時代、仏教が興隆し、異民族や異教徒に対して寛容の精神がつらぬかれたという記録がありますが。
 池田 アショーカ王は「戦争放棄」をした王として、また遠くヨーロッパ、中東へも使節を派遣し、今でいう平和外交をしたことで有名です。
 しかし、それは過去の一時代の、一つの範囲のものです。民衆による、壮大な人間主義の運動が世界に広がるのはこれからだと、私は思っております。
 ログノフ 私たち物理学者の目からみると、少々大胆な言い方をすれば、人間も生物も、この地球も、同じ宇宙から誕生したものです。
 そういった次元からすれば、さまざまな「相違」も副次的な問題かもしれません。
 池田 いずれにせよ“人間の尊厳”“生命の尊厳”という、人類普遍の価値を引き出せるかどうか――これが二十一世紀に生きる宗教の必須条件ではないでしょうか。
 ログノフ 賛成です。“人間性”や“生命”という尊厳なるものに貢献できるかどうかは、科学にも同様に課せられた命題です。
 池田 仏法に「桜梅桃李」という譬えがあります。
 爛漫と咲き誇る桜や桃などの木々は、それぞれの多様なる個性をもっている。その個性を最大に発現させていくのが、宇宙根源の法としての「妙法」、つまり統合原理としての「実相」です。
 ログノフ なるほど、なるほど……。
 池田 桜は桜、梅は梅らしく、その本来的な働きをすべて発揮させていくように、人々が自他の生命に内在する「尊厳性」を覚知し、それぞれの多様なる特質を現実のうえに開花・発揮しゆく方途を示すところに、世界宗教としての仏法の一つの使命があると思います。
 ―― 次は、いよいよ博士のご専門である「量子力学」や「素粒子実験」の世界について、うかがいたいと思います。どうかよろしくお願いします。

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