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日蓮大聖人・池田大作

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スポーツ部と勝利の哲学(下) 心で勝て 汝の最高峰に挑め

2008.11.27 随筆 人間世紀の光5(池田大作全集第139巻)

前後
1   幸福は
    努力努力の
      積み重ね
 アメリカの野球の大選手ベーブ・ルースといえば、年間六十本のホームランの大記録、そして病気の少年を励ますために打った″約束のホームラン″など、心躍るドラマに事欠かない。
 この名選手の『自伝』の第一章に綴られているのは、いったい何か。不良少年だった彼を、野球に導いてくれた、師マシアス先生への心からの感謝である。
 恩師は、常にルース少年に語ったそうだ。
 「どんなことでもベストを尽し、社会の立派なメンバーになってくれよ」(『ベーブ・ルース自伝』宮川穀訳、ベースボール・マガジン社)と。
 師は、ありがたいものだ。
 毀誉褒貶の吹き荒れる世界で、ルースには、師匠こそ、正しき「心の羅針盤」であった。「ベストを尽くせ」「立派な社会人になれ」との言葉に応えゆく、師への報恩の心が勝利の力となったのだ。
2   偉大なる
    歴史を残せし
      創大の
    君らの闘魂
      未来に続かむ
 この秋、わが創価大学の硬式野球部は、関東の大会で、見事に優勝を果たした。
 「二回目の関東制覇を 池田先生に捧ぐ」と記されたウイニングボールを、私は胸を熱くして見つめた。創大野球部と交流の深いグラスゴー大学のマンロー博士など、世界の教育者の方々からも祝福のメッセージをいただいた。
 続く全国大会では、強豪を相手に接戦の末、惜敗したが、清々しい健闘に大拍手が送られた。勝っても、負けても、その闘魂には栄光が輝いている。いな、彼らは、「朗らかに前進だ!」と、今再びの挑戦を開始した。
 何があろうが、朗らかに前へ!新たな力を蓄えて、前へ!──その心が嬉しい。その心が勝利者だ。
  「心で勝て
  次に技で勝て
  故に
  練習は実戦
  実戦は練習」
 以前、私が贈った指針である。
 創価の球児は立派に応えてくれている。控えに回った選手たちも、心を一つに一丸となってチームを支える。グラウンドの整備だけではなく、大学の近隣の清掃にも勇んで取り組む英姿に、どれほど深い感動の声が寄せられていることか。
 今年は、創価大学柔道部の女子チームが「三人制」の部で、日本一に輝いた。
 さらに、創価大学の「フルコンタクト空手道部丈夫(ますらお)会」も、キックボクシングの大会で、二回目の全国制覇を果たしてくれた。
 このほかにも、多くのクラブが、創大・女子短大、東西の創価学園、そして、アメリカ創価大学で大活躍してくれている。
 わが母校のために!
 創価の師弟のために!
 大いなる目的観、使命感、責任感をもって、大情熱を燃え上がらせた青年の力ほど、尊く強いものはない。
 その名誉ある魂は、常勝の伝統となって滔々と流れ、受け継がれていくのだ。
3  「困難や侮辱に会えば、今こそたたかいの時であり、すでにオリンピアの競技は始まって、もう一刻の猶予も許されぬと考えよ」(『幸福論』第一部、草間平作訳、岩波書店)とは、スイスの哲人ヒルティの言葉である。
 いかにして、プレッシャーをはね返し、いざという時に自らの力を最大に発揮していくか。スポーツ心理学等でも、そのためのメンタリティー(精神性)が多角的に探究されている。
 勝負の決め手は「心」だ。御聖訓にも、「身つよき人も心かひなければ多くの能も無用なり」と説かれる通りである。
 名門カイロ・アメリカ大学のアラム副総長は、エジプトを代表する、水泳の飛び込みの選手であった。戦後初のロンドン・オリンピックでも活躍された。
 私は副総長に尋ねた。
 「勝負に勝つためには、何が必要ですか」
 三点を挙げられた。
 第一に、自分の行っていることに対する「信念」「確信」。
 第二に、着手した以上、やり遂げる「固い決意」。
 第三に、ベストを尽くす「まじめさ」と「真剣さ」、そして「努力」。
 簡潔にして的を射た「勝負哲学」である。
4  「仏法と申すは勝負をさきとし」との仰せは、あまりも深く、大きい。
 創立の師・牧口常三郎先生は、獄中の尋問に答えて毅然と主張された。
 ──釈尊は大敵にも負けずに、人間の達することのできる最高の理想を示した。人間の生活の目的を明らかにして、その実現の手本を自ら具現されたのが、「仏」なのである、と──。
 森羅万象を貫いて、勝利には「勝利の因果」があり、「勝利の軌道」がある。
 その永遠不滅の「勝利の法則」こそ妙法なのである。
 いかなる悪口罵詈をも、決して恐れない。
 いかなる三障四魔にも、断じて負けない。
 いかなる三類の強敵にも、断固として打ち勝つ。
 この仏法勝負の真髄をば示し切ってきたのが、創価三代の師弟の誉れである。
5  私が不朽の出会いの劇を重ねた、南アフリカのマンデラ元大統領は、二十七年半の獄中闘争を耐え抜かれた。この人権の巌窟王が大切にされていた「不屈」という英国の詩句がある。
 「私は自分の運命の支配者になる/私は自分の魂のキャプテンだ」
 「自分の魂のキャプテン」となって、いかに思うようにいかぬ逆境にあろうと、ただ勝利へ突き進むのだ。
 私が生まれた一九二八年(昭和三年)、アムステルダム・オリンピックで日本に初めて金メダルをもたらしたのが、三段跳びの織田幹雄選手である。
 この織田選手が日記に書いた言葉を、私は感銘深く読んだ。
 「真剣になって闘う時にはコンディションも何もあるものか、最後の死力を尽すあるのみ」(『織田幹雄 わが陸上人生』日本図書センター)
 どんなに、やりづらい悪条件でも、勝ってみせる。そう決めた人が勝つのだ。
 大聖人は仰せられた。
 「ただ一えんにおもい切れ・からんは不思議わるからんは一定とをもへ
 私の青春の誇りは、最悪の状況の中で、死力の限りを尽くして、師匠をお護りし抜いたことである。
 師匠の盾となって、あらゆる魔軍を一身に受けて、打ち破っていった。結核で病弱な体に鞭打ち、阿修羅の如く戦った。正しき師を厳護することが、広宣流布の命脈を永遠ならしめると確信していたからだ。
 戸田先生は慟哭されながら、「死んではならぬ」と祈り抜いてくださった。
 病気が悔しかった。だからこそ、恩師に安心していただけるよう、必ず病弱の宿命を勝ち越えてみせる、師子王に仕える弟子は、師子であらねばならない──と強く固く決意した。「色心不二」の仏法だ。不老長寿の妙法である。
 この通りの、頑健な生命の自分になってきた。
 ともあれ、仏の異名は、「勝者」である。勝って勝って、勝ちまくる強靭な仏の力用を、わが心身にたぎらせていけるのが、「師弟不二の信心」なのである。
 この勝利の血脈を受け継ぎ、弟子が勝ちまくる年こそ、「青年・勝利の年」だ。
6  わがスポーツ部の盟友は全世界に広がっている。
 サッカー界の至宝と呼ばれたロベルト・バッジョ氏は、今春、イタリア・ミラノで開催された欧州青年部総会の席上、三十五カ国の代表五千人を前に力強く訴えた。
 「挑戦するものが大きければ大きいほど、勝利した時の喜びと充実は大きいのです!」
 その通りだ。
 師は挑み、そして勝った。創価の青年も、永遠に挑戦し、そして断固と勝利するのだ。
 九月の本部幹部会では、スポーツ部の代表が、はつらつと部歌「勇勝の歌」を披露してくれた。
7   ♪君が健闘 師は見つめむ
  まばゆいばかりの 誓いの瞳
  大空高く 使命の羽を
  跳べよ跳べ
     勝利するまで
 君よ、勝て! 痛快に勝ちまくれ! 太陽は勝っているから明るいのだ。
 英雄の君たちよ、苦難を宝とし、常勝の太陽を仰ぎ見ながら、汝自身の勝利の最高峰を登れ!
 その勝利の頂に立って、「自分自身、万歳!」、「我らの青春、万歳!」と、胸を張って叫ぶのだ。
 創価と共に!
 師と共に!
 わが同志と共に!
  天高く
    君よ飛びゆけ
      大勝利
    胸に抱きて
      世界の舞台に

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