Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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「女性の世紀」のヒロイン  

2004.7.31 随筆 人間世紀の光2(池田大作全集第136巻)

前後
4  七月は、フランスの「大革命」(一七八九年)が勃発した月であった。ことに七月十四日は、決起した民衆が、悪名高き「バスチーユ監獄」を陥落させた「革命記念日」として、永遠に記憶されている。
 ところで、大歴史家ミシュレが、この「バスチーユ転覆の栄光」を誰か一人に帰するならばと、おごそかに讃えた″英雄″がいる。それは、社会的には、全く無名の女性であった。「あの剛毅な女性」とミシュレが語ったその人、「ルグロ夫人」のことについては、かつてスピーチをさせていただいたこともある。(『フランス革命史』桑原武夫・多田道太郎・樋口謹一訳、『世界の名著』37所収、中央公論社、参照)
 ともあれ、大革命の以前、「バスチーユ」と「専制」は、ほとんど同義語であった。民衆が憎む「権力の象徴」であり、その扉は開かないと皆があきらめている「不可能の壁」であった。
 この分厚い「あきらめの壁」を破ったのが、一人の偉大なる女性、ルグロ夫人であった。
 彼女は、偶然、あるバスチーユの囚人が無実であると知り、心の底から「助けたい!」と思った。いな、直ちに釈放を求め、行動したのである。壁はあまりにも厚かった。関係各所の態度は冷たく、一婦人の声など、全く耳を傾けてくれなかった。
 しかし彼女は、汗を流し疲れ切っても、それでも自らの運動の精神を失わなかった。
 やがて二年、三年と経つうちに、両親は死に、仕事もなくした。周りからは″愚か者″の如く非難され、多くの事実無根の中傷も流された。
 しかし、彼女は、あきらめなかった。はね返されても、はね返されても、あの人に当たればどうか、この人ならどうかと、あらゆる伝を探し、知恵を絞って、一心不乱に走り回った。ひとたび、女性が本気になったら、誰もかなわない。そして彼女は、ついに世論を動かし、国王をも動かし、バスチーユの重い扉を開かせ、無実の囚人を解放したのだ! あの世界的、歴史的な瞬間である。「大革命」に先立つ五年前のことであった。
 ミシュレは、「憐憫の情」つまり、「同苦の心」に発露した、ルグロ夫人の英雄的行為をこう讃えた。
 「事を企てる果敢さ、忍耐力、不断の犠牲的なねばり、脅迫を無視する勇気、暴君の中傷を排撃しうる賢明さ、あらゆる神聖な智略」(『革命の女たち』三宅徳嘉・山上正太郎・高橋安光他訳、河出書房)……
 それらはみな、世界平和を願望して戦う創価の女性たちが持っている、偉大な胸中の宝と同じであるといってよい。月々日々、いな、時々刻々の激戦のなかで、皆様の信心の智慧と行動によって、歴史的にかつてなき、光り輝く民衆の大勝利の第一弾は、晴れ晴れしく成し遂げられていったのだ!
 広宣流布の使命は、「男女はきらふべからず」である。皆様こそ、あまりにも偉大にして崇高な、一番星と煌めくヒロインなのである。
5  光り輝く、絢爛たる「女性の新世紀」の旭日は、ついに昇った。断じて負けるな! 女性が主役となり、生き生きと幸福の円舞曲を舞いゆく、新しき女性史の扉は開かれたのだ。
 ミシュレは叫んだ。
 「私が生きた人と呼ぶのは、その人の行い、その人の仕事が世界を新しくする人、少くとも世界の動きを作り、自分の溌刺とした勢で世界を活気づけ、世紀の帆の孕む偉大な息吹を呼吸しながら世界と共に進む人のことで、その合言葉は『前へ!』なのだ」(前掲『革命の女たち』)
 その通りだ。全く、そうであらねばならない。
 私たちには、世界を新しくする力が、世界を活気づける希望の力がある! ゆえに、前へ! また断固として、前へ進むのだ! 今再び、眼前の現実に勇敢に挑みゆくのだ!
 その人が、最高の勝利の人間なのである。尊き女性なのである。
 誰がなんと言おうが、誰人がなんと思おうが! 

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