Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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″母の勝利″を讃う  

2004.1.19 随筆 人間世紀の光1(池田大作全集第135巻)

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1  おお幸福博士に万歳!
 「真実は水にも沈まず、火にも焼けない」
 これは、ロシア連邦・サハ共和国の有名な格言である。
 そしてまた、サハの英知の箴言には、「嘘が真実の上に君臨することは絶対にない」ともある。
 真実は必ず勝利する。いな、断じて勝利せねばならない。
 先日(一月十日)は、ご存じの通り、新年の最初の本部幹部会の席上、私は、サハ共和国の北極文化芸術国立大学から、名誉教授の称号を拝受した。世界の大学等からの百五十番目の名誉称号となった。
 「まことに知性の勲章ほど尊く輝くものはない。あなたは私以上に、世界中から名誉学位を受けることでしょう」と励ましてくださったトインビー博士の言葉を、深く思い起こす昨今である。
 この栄誉を、全国、全世界の同志と分かち合えることが、私は何よりも嬉しいのだ。
 サハを代表する劇作家であるソフロノフは叫んだ。
 「すべての主役は、民衆、民衆、民衆である。民衆に尽くせ、民衆を支えとせよ」(Андрей Борисов и Саха театр: на рубеже стлетий / Сост. В.Н. Павлова, Е.Н. Степанов, Наука, Сибирская издательская фирма РАН)
 私の心情も同じである。
 サハの聡明なる民衆は語り伝えてきた。
 「友情が力を倍加する」
 全く、その通りである。
 今、日本列島の津々浦々、じつに五十万もの会場で、友情の花また花を咲かせゆく婦人部総会が、明るく、また賑やかに開催されている。
 わが創価学会婦人部こそ、世界第一の「平和」と「友情」と「希望」のスクラムだ。
 今回、名誉教授の授与に来日しでくださったボリソフ総長(サハ共和国文化大臣)も、創価の母との出会いの劇に感銘されていた。
 あの式典の模様を、総長は、サハにおられる母君にも国際電話で伝えられたと伺った。大病を乗り越えてこられた母君も、それはそれは喜んでくださったようだ。
2  二十一世紀を、輝く「女性の世紀」へ!
 それは、「女性が生きる歓びに包まれる世紀」であり、「母が最も幸福になる世紀」であらねばならない。
 ここに、私たちが建設しゆく「人間世紀」の画竜点睛がある。
 日蓮大聖人は、女性信徒に与えられた御手紙で、厳然と宣言された。
 「日本国の一切の女人を扶けんと願せる志は・すてがたかるべし
 この日本国とは「一閻浮提」及び「未来」に通じている。「全世界」の「今この時」を生きゆく女性たちの幸福のためにこそ、仏法はあるのだ。
 忘れてならないのは、大聖人が命にも及ぶ迫害を一身に耐え忍ばれながら、女性の幸福のため、この大法を説き残してくださったという一点である。
 同じ御書には、「たすけんとする日蓮かへりて大怨敵と・をもわるるゆへに・女人こぞりて国主に讒言して伊豆の国へながせし上・又佐渡の国へながされ」と仰せである。大聖人の二度の流罪の背景には「女人の讒言」があった。御本仏を陥れんとする、嫉妬の坊主らによる陰謀であった。
 その一切を勝ち越えられ、大聖人は全女性の幸の大道を開いてくださったのである。
 私たちも、経文通り、いわれなき讒言を受けながら、この道を誇り高く進んできた。
 邪悪な謀略は悉く断罪され、真実は明々白々である。
 ロシアの大詩人プーシキンは書いた。
 「健全な良心は、
 悪意にも、暗い誹謗にも打ち勝とう」(『ボリス・ゴドゥノフ』佐々木彰訳、岩波文庫)
3  正義へ! 幸福へ! そして勝利へ!
 日本中の街々で、世界中の国々で、わが尊き広布の母たちは、強く、また強く、断固として生き抜いている。
 そうした婦人部の一人に、アメリカSGI(創価学会インターナショナル)の婦人部の方がおられる。
 日本で国際結婚したツヤコさんが、幼い長男を連れて渡米したのは、一九六六年(昭和四十一年)のことであった。
 軍人の夫がベトナムヘ従軍すると、彼女は、英語も不自由ななか、力仕事などで生計を立てた。夫の帰還後も経済苦は続いた。
 やがて次男を授かったが、自分で体を動かせない、重いハンディキャップを背負っていた。医師からは施設に預けるように告げられたが、ツヤコさんは自らの手で育ててみせると決めた。洋服、着物、鍋……売れる物は全部売った。それでも食事代にも事欠いた。
 なぜ、こんなに苦しまねばならないのか。宿命の波浪はあまりにも厳しかった。
 しかし、日本で地区の幹部として戦ってきた彼女は、絶対に逃げなかった。昼は働き、夜は広布の最前線を必死に走り抜いた。
 フランスの哲学者アランは語っている。
 「幸福になるのは、いつだってむずかしいことなのだ。多くの出来事を乗り越えねばならない。大勢の敵と戦わねばならない」(『幸福論』神谷幹夫訳、岩波文庫)
 ある晩、ツヤコさんは、いつもの如く仏前に端座した。朗々たる祈りが深夜に及んだころ、豁然と光が差し込む思いがした。
 ″私は誉れある学会員だ。私には御本尊がある。何も怖いものはない。絶対に幸福になれないわけがない″
 「歓喜の中の大歓喜」の涙があふれた。
4  今、ここで、生活に戦い、人生に戦い、広宣流布に戦う――その生命に幸福の旭日は赫々と昇りゆくのだ。
 「我れ等は仏に疑いなしとをぼせば・なになげきか有るべき」とは、大聖人が女性の門下に贈られた一節である。
 法華経には、「願兼於業」(願、業を兼ぬ)という透徹した法理が説かれる。菩薩は、苦悩の人びとと同苦するが故に、人びとを救うことを誓い、自ら願って悪世に生まれてくるというのだ。いかなる苦悩をもち、いかなる境遇にあろうが、その人でなければ果たせぬ尊き使命がある。それを深く自覚した時、すべては変わる。
 久遠の「大願」を果たすために、私たちは、今ここに生まれてきた。宿命は即、使命となり、わが勝利の逆転劇を荘厳する舞台となるのだ。
 いかに現実が多事多難であろうとも、ここから離れて、幸福の大地はどこにもない。
 ゆえに断じて、今、自分がいる場所で勝つことだ。
 人のため、法のために尽くしゆく学会活動こそ、幸福への王道である。
 文豪ユゴーは言った。
 「不幸におちいらない秘訣は、人を愛して働くことだ」(辻昶『ヴィクトル・ユゴーの生涯』潮出版社)
5  先ほど紹介したアメリカの母は、邪宗門の忘恩背信には、憤怒に燃えて立ち上がった。
 創価学会が貫く「広宣流布の信心」こそが、日蓮仏法の正統である。この一生成仏への和合の世界から、絶対に離れてはならない――。
 彼女は、同志のもとを駆け回って、声も惜しまず訴え続けた。
 そうした強き母の後ろ姿を見て育った長男は、名門のエール大学の卒業を、見事に首席で勝ち取った。
 若き英邁な経済学者の彼は、やがてアメリカ創価大学(SUA)の初代学生部長に就任。新しき世界市民の育成に尽力を開始した。
 二〇〇一年八月、SUAのオレンジ郡キャンパスの第一回入学式に、彼女と、ご主人の晴れやかな笑顔があった。体を動かせないといわれた次男も、今や走ることさえできるようになり、会合にも参加されている。
 この一月、七十九歳になったツヤコさんは毅然と語る。
 「全然、年をとった気はしません。広布のために、一生涯、創価の正義と真実を叫び続けます!」
 母は勝ったのだ!
 ナチスと戦った詩人のブレヒトは、「最後の勝利は最良の勝利」(『亡命者の対話』野村修訳、晶文社)と謳った。
 そうだ。途中がどうあれ、最後に勝てばよい。
 ブレヒトはこうも語った。「真実は戦闘的なものである。真実は真実でないものと戦うばかりでなく、真実でないものをひろめる一定の人間とも戦う」(「真実を書くさいの五つの困難」五十嵐敏夫訳、『ブレヒトの文学・芸術論』所収、河出書房新社)と。
 戦い抜いてこそ、真実であり、正義である。
6  「個々の家庭が女性を基盤とするように、世界もまた、女性を基盤とする日が来るでしょう」(『娘たちに愛をこめて』木村治美訳、三笠書房)――アメリカの作家パール・バックが展望した通りの時代に入った。
 昨年(二〇〇三年)の十二月、私は、アメリカの名門チャップマン大学から、名誉人文学博士号をお受けした。ファテメ・シャバーニ副学長夫人は、来日の折、創価学園生に語りかけてくださった。
 「平和を実現していくことは、すべての人間の責任だと思います。皆さんは、人間として尊重し合う″一対一″の人間同士のつきあいを深めていくという思想を広げていってください」
 「一対一の対話」こそ、平和建設の正道だ。それを、勇敢に行動しておられるのが、婦人部の皆様方である。
 いずこの地でも、「この母ありての広布かな」と、どんなに讃えても讃えきれない、偉大なる母たちの大行進曲が、来る日も来る日も奏でられている。
 私と妻は、広布に戦い、生きゆく女性たちの無限の幸福の人生を、真剣に懸命に祈りゆく毎日だ。
 おお、幸福博士、万歳!
 世界一の婦人部、万歳!
 創価の太陽の母たちよ! 「勇気」と「正義」と「勝利」の歓声を、さらに響かせゆくのだ。そして強く愉快な賢き声を、一段と朗らかに共鳴させながら、前進されんことを、私は、一生涯、祈りゆくものである。

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