Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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親子二代のホセ・マルティ研究家 ヴィティエール博士

随筆 世界交友録Ⅰ Ⅱ(前半)(池田大作全集第122巻)

前後
5  彼は自分が敵の弾丸に当たりたかった。時をかせいで、各地の革命の息吹を一つに組織しながら、「腕が腫れ上がるほど」書きながら、心で思っていた。みずから弾雨に身を曝したい。身を捨てて、同志の心を照らしたい──。
 彼は炎だった。みずからを焼き尽くすことが望みだった。
 「光を注ぐ権利は、火に焼かれなければ得られない。薪は死に、みずからを焼き尽くして周囲を照らす。人間は薪よりも臆病なのだろうか!」
 一八九五年、祖国にやっと帰れた。一カ月後の戦闘で、彼は撃たれた。馬から落ちた。顔を「太陽に向けて」倒れていた──。
 亡骸を前に、弟子たちは、涙とともに誓った。「必ず仇は討ちますから」
 一粒の麦、もし死なずば──彼の死は万人を立ち上がらせた。時とともに、革命の種は人々の心の中で育ち続けた。スペインの支配は、やがてアメリカの支配と変わり、苦しみは続いた。だがマルティは生きていた。声を発し、光を放った。
 腐敗したバチスタ独裁政権を倒した「キューバ革命」(一九五九年)。成功の前に逮捕されたとき(五三年)、若き指導者フィデル・カストロは軍事法廷で答えた。
 「貴様らの首謀者はだれか?」「首謀者は、ホセ・マルティだ!」
 マルティの死後、五十八年がたっていた。
 私は記念館で、こみ上げる思いを、こう記した。
  偉大なる人には
  大きな嵐の如き難がある。
  しかし その人には
  永遠なる栄光と勝利と名誉が
  太陽の如く 悠久に
  赫々と 昇り輝いていく
  必ず それは必ず
 仏法では「分身散体」と説く。
 一人の英雄の魂の炎は、幾十人、幾百人、幾千万人の分身に必ず点火され、僚原の火のごとく広がりゆくことを私は信じている。
 (一九九七年三月三十日 「聖教新聞」掲載)

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