Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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国連ルネサンスへ軌道 デクエヤル国連事務総長

随筆 世界交友録Ⅰ Ⅱ(前半)(池田大作全集第122巻)

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4  国連を支える民衆パワーを
 総長も、「精神の変革」がなければ、人類の流転は終わらないことを考えておられたと思う。
 日本を数十年、見つめてきた印象を、こう言われた。
 「日本も少しずつ、美しい精神的な文化遺産を失いつつあるような気がします。それは服装とか表面的な変化ではなく、もっと内面の深い情緒、感情といったものの衰退です」
 人間の魂が衰え弱まってしまえば、「国家悪」への抵抗もまた弱まることは必然である。
 国連という舞台は、一見、庶民から遠くに見える。しかし、「国家悪を超える」という挑戦において、国連と世界の民衆は直結しているのである。
 その意味で、民衆の「ヒューマン・パワー」を高め、結集していくことが、国連という大船を浮かべ、進める大波をつくることになる。国連への根本的支援ともなろう。
 デクエヤル事務総長の慧眼は、この一点を過たず見抜いておられた。
 総長は「身近な一人」を大切にした。就任第一日に、職員一人一人と、メッセンジャーまでふくめて丁重にあいさっした。エレベーターも専用機をやめて、職員と一緒に乗った。だれもが驚いたという。
 ともに働いてこそ、その人の実像はわかる。
 事務総長の退任が決まった最後の総会。冷静が身上のはずの外交官のだれもが立ち上がって、熱烈な拍手を送った。だれが促したのでもない、自然発生的で、かつてないほどの長い長い喝采であった。
 感情を表に出さない事務総長も、感無量の面持ちで、うなずいた。「静かなる男」の人間としての勝利の瞬間であった。
 (一九九六年十二月二十二日 「聖教新聞」掲載)

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