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日蓮大聖人・池田大作

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精神的連帯をめざす マヨール ユネスコ事務局長

随筆 世界交友録Ⅰ Ⅱ(前半)(池田大作全集第122巻)

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3  ″未来を奪う″大戦
 「教育の大同盟。私は大賛成です」と申し上げた。
 世界の指導者は、経済や軍事のためなら、すぐに集まる。しかし教育と文化のためには腰が重い。本来、子どもたちのことこそ最優先すべきであるのに。
 ある人は言う。「第三次世界大戦は、もう始まっている」と。それは目には見えにくい戦争。領土を奪う戦争ではなく、未来を奪う戦争。自分たちの子孫に「荒廃の社会」を残し、彼らの生活を破壊する戦争である。
 政治家をはじめ、自分の生きている間、否、自分の任期の間のことしか考えない多くの大人たちが、子どもたちから未来を奪っているのである。
 だから私たちは「無責任」と戦わざるをえない。二度と、ユダヤの少女のこんな叫びを繰り返さないために。
  わたしは生きたい。
  わたしは笑い、重荷をふりはらっていたい、
  そして闘い、愛し、憎みたい、
  そして両手で空をつかみたい、
  そして自由になって、呼吸し、叫びたい。
  わたしは死にたくない。いや!
  いやだ。
   (『ゼルマの詩集』秋山宏訳、岩波ジュニア新書)
 過去のことではない。今も世界の半分の子どもたちが中学校にも行けず、多くの強制労働と虐待にさらされている。
 そして″先進国″でも、年齢とともに希望を奪われ、あの瞳の輝きをなくしていく──「魂の殺人」が行われているのである。
 マヨネール事務局長はスペインの生化学者。グラナダ大学の学長や教育・科学大臣などを歴任され、八七年、第七代の事務局長に就任した。英米のユネスコ脱退後の難局のなか、精力的に「新しき連帯」を広げ、九三年、圧倒的支持で再選された。
 風貌は俳優のようにさっそうと、しかも、その手腕は堅実である。お父さんの遺言「本質を見抜くセンスを養え」のとおりに、複雑な状況のなかでも、何を優先すべきかを忘れない。
 そして現代が「本質的なこと」から目をそらし、逃げている風潮に警鐘を鳴らしておられる。
 そのとおりであろう。移ろいゆく雑音に惑わされまい。問題は、だれが人類の心に「平和のとりで」を築くのかである。どうすれば「とりで」が難攻不落になるかである。
 事務局長はSGIとの「平和への同盟」を、こよなく喜んでくださった。
 「SGIの運動は″正義のなかの平和″″自由のなかの平和″をめざしておられる。それはまさにユネスコの目的と一致します。平和とは自由への権利を意味します。そして、自由とは文化の創造であり、異文化を認めることなのです」と。
 平和には信頼が必要である。
 人間に絶望したり、人間を決めつけない謙虚さが必要である。
 そして「平和の同盟」とは、人々に「希望」という名の勇気をあたえ続けていく運動と言えよう。
 だから私たちは、子どもの「希望の力」に学びたい。どんな状況にあっても、「それは無理だ」と言わない生命の勢いに学びたい。
 子どもの絵が何と美しいことか。否、世界が、人生そのものが美しいのだ。
 子どもの絵には何と偉大な力があることか。否、人間に、いのちそのものに偉大な力があるのだ。
 東京展で、感想ノートに、こんな声があった。
 「子どもってすばらしい。だからきっと大人もすばらしいのかもしれない!」
 夢は年をとらない。夢みる勇気をなくさないかぎり、私たちは永遠に「元初の子ども」である。
 (一九九七年六月一日 「聖教新聞」掲載)

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