Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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世界的作曲家、ピアニスト アマラウ・ビエイラ氏

随筆 世界交友録Ⅰ Ⅱ(前半)(池田大作全集第122巻)

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3  「魂を調律する」音楽
 ブラジルでも一貫して、「民衆のために本物の音楽を」と努力されてきた。演奏。作曲。たくさんのコラムも書いた。青少年の音楽教育も。外国との文化交流も。
 「ブラジルはエリートのためだけの国ではありません。民衆のための国です。人間以上の人間などいません。皆、同じ人間です」
 「民衆と心を分かちあえなければ、本物の音楽、音楽家とは言えません」
 理想に向かって突進する氏に、妬みによる攻撃も続いたが、真実は隠せない。「A・オネゲル国際作曲賞」「フランス作曲財団国際大賞」「リスト賞」その他、内外の数々の賞が贈られた。
 私にささげてくださった曲「革新の響」もブラジルの「九三年度交響曲大賞」に輝いた。
 氏は私との出会いを喜んでくださり、「求めていた、この人間主義を世界に伝える″音楽の大使″として走ります」と誓われた。
 氏は語る。
 「立派な国になったならば文化に力を入れよう、というのは、さかさまです。文化を興隆してこそ立派な国になるのです」
 芸術は自己の表現である。
 ある人は言う。
 「今の日本人には確固たる『自分』がない。だから本当の芸術も生まれない」
 より高き自己を探求する謙虚さと素直さ、思索と哲学、そして祈り──それらのない芸術は、いかにもてはやされようとも所詮、虚飾ではないだろうか。魂を豊かにはしないのではないか。
 中国に伝説がある。
 衰の楽人が心をこめて琴を弾くと、春にもかかわらず一陣の涼風が吹き、あたりは秋になり、草木は実を結んだ。別の曲を弾くと、今度は夏になり、冬になった。ついには琴の音に合わせて、微風が香り、空に瑞雲が現れ、大地からは清らかな泉が湧き出した──。
4  魂ともる音楽は、宇宙の力とハーモニーを宿している。音楽は神々しい生命の息吹である。プラトンは、音楽が変われば社会万般が変わると言った。
 調子はずれの社会。こんな時代だからこそ、生き生きと、心の窓を開けて歌いたい。
 そして民衆による大文化運動のなかで「一魂の調律」を実現していきたいものである。
 ビエイラ氏はきょうも、人々の心の鍵盤を叩き続けている。
 (一九九五年四月十六日 「聖教新聞」掲載)

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