Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

永遠のペンの戦士 巴金(ぱきん) 中国作家協会主席

随筆 世界交友録Ⅰ Ⅱ(前半)(池田大作全集第122巻)

前後
4  「青年は人類の希望」です──じつは、この言葉は、氏が殉難者ヴァンゼッティから受け取ったものであった。無実の罪で逮捕された、このアメリカの無政府主義者に、巴金青年は留学中のパリから手紙を出した。その返事の一句であった。
 信念ゆえに投獄された勇者が、死刑を前に、異国の青年に渡したパトンであった。
 次の世代だけは、もう、こんな愚かなことはやめてくれ。真実が勝つ時代をつくってくれ──紅涙したたる「希望」だったのだ。
 氏の上海の自宅をうかがったのは一九八四年(昭和五十九年)の六月。お部屋には日本文学全集など日本の書物も多かった。
 「若い作家たちが、どんどん成長し、進歩している。追いつけないほどです。若い作家たちに私は遅れてしまいますよ」。後輩の成長を喜びながら、自身もなお前に進もうとされていた。永遠の青年の声であった。
 お体を心配して早めに辞去したが、どうしてもと見送りに立ってくださる。ステッキをつき、令嬢の李小林りしょうりんさんに支えられて玄関を出、中庭をずっと歩いてくださった。途中、何度も「もう、ことまでで結構ですから」と申し上げたが、とうとう門を越え、石段を降りた道路まで送ってくださった。
 車窓から私が手を振ると、お孫さんも入れたど一家で、いつまでも笑顔で手を振ってくださった光景は、私の宝ものである。
 私も生死を超えてきた。会えば、言わず語らずに通じあうものがあった。
 私は氏のご長寿を願いながら、氏と同じように、今、青年に光を見る。また友が皆、生涯青年であってほしいと祈る。
 永遠の戦士は、あるとき、こうも語っておられた。
 「青年は、自分で、戦って、戦って、戦い抜いて、勝ちとったものを自分のものとすべきです。それこそが青年です!」
 (一九九五年七月二日 「聖教新聞」掲載)

1
4