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日蓮大聖人・池田大作

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真実  

小説「人間革命」7-8巻 (池田大作全集第147巻)

前後
25  科学技術の進歩によって、人類は未知の世界を切り開き、膨大な知見を得た。そして、人間という範疇のなかのことは、ことごとく知り尽くしてしまったかのように思い込んでいるのである。これこそ、人間の深い迷妄なのではあるまいか。
 歴史の背後に″人間″を発見し、神と教会の呪縛から人間を解放しようとしたのが、西洋の近代化の流れである。しかし、発見されたその人間は、途方に暮れ、いずこへ行くべきかと、長い影を引きずって、暗黒の未来へ向かおうとしている。その暗黒を破る光を放つものは、生命の哲理でなければならない。この哲理こそが、人間の内なる生命を輝かせ、未来に光芭を放ち始めた、日蓮大聖人の仏法にほかならない。
 もはや、かつての西欧文明を築き上げた一連の思想では、役に立たない時が来てしまった。人間の存在を左右するものは、日蓮大聖人が早くも洞察したように、生命の力にかかっている。まさしく生命の哲理こそ、人間の尊厳を支える座標軸となるべきものである。
 戸田城聖が、あの獄中で得たものも、生命の尊厳の自覚であった。
 「仏とは生命である」と自覚した時、彼は、大聖人の仏法を、現代に、はつらつと蘇らせたのである。そして、彼の揺るがぬ確信と、その実践は、一九五三年(昭和二十八年)、五四年(同二十九年)に至って、ようやく全国的規模で、数多くの人生を蘇生させる現証を生んでいった。それが、入会間もなかった創価学会員の、数々の体験という事実であったが、それは、同時に、生命の世紀へ向かって門出した、勇者たちの胎動でもあったのである。

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