Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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はしがき  

随筆「私の人間学」(池田大作全集第119巻)

前後
1  目には見えないが、鳥には鳥の飛ぶ道がある。魚には魚の泳ぐ道がある。自然の精妙な摂理は、人知を遙かに超えて厳然たるリズムと法則性を備えている。千変万化、生成流転の人間模様にも、その無限の変化の姿の奥に、厳として動かぬ一筋の道があるのかもしれない。
 古来の聖賢の教えはいうまでもなく、歴史に残る人物の逸話や、平凡な庶民の日常の会話さえ、波瀾多き人生の行く手を指し示す、巧まざる知恵の発露が珠玉のごとき光彩を放っている瞬間がある。
 本書は、主に、私がこの数年、各地での懇談等の折に、話題にした歴史上の人物やエピソードなどの題材を中心に、その要点を新たにまとめ、収録したものである。
 もとより、私は、歴史や文学の専門家でもなければ、学者でもない。平凡な一人の人間として、また平和を願い、仏法を根本基調として行動する立場で、この人生をいかに力強く生きぬいていくかについて考え、語ってきた。
 私自身、恩師戸田城聖先生の「青年は心に読書と思索の暇をつくれ」との言葉をいだきつつ、寸暇をさいて書を読み、人々と語らい、自らの理想に生きぬいてきたつもりである。その瞬間瞬間の現実との格闘のなかで、ある時は先人の知恵の輝きを実感し、ある時は、恩師の言葉が鮮やかに蘇り、不可思議なる人間存在というものに少しずつでも迫る日々であったように思えてならない。
 繁多なため、本書に題材として紹介されている人物や史実、あるいは文学作品についても、ひとつひとつを正確に把握しきっていないところが、多々あるかもしれない。また、記憶に基づいたり、過去に断片的に書き綴ったものをもとにした個所については、これからの若い方々に調べ直していただき、極力正確を期した。更に若干であるが、論文、寄稿文等をそのまま収めさせていただいたものがあることをご了承願いたい。また本書においては、さまざまな文献を使用させていただいたが、関係の方々に心より感謝申し上げたい。
 本書が読者にとって、人生を考えるうえでの縁ともなり、とくに若い方々の「人間学」の序章ともなれば、これ以上の喜びはない。
  一九八八年七月三日  著者 

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