Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

1 ハングルと韓国文学をめぐって  

「人間と文化の虹の架け橋」趙文富(池田大作全集第112巻)

前後
9  芸術に南北のちがいはない
 池田 恐縮です。朝鮮王朝時代には、小説の創作も盛んになりますね。
 なかでも、最高傑作と言われるのが、十八世紀初めに成立した『春香伝しゅんこうでん』です。
 庶民の聞に語り継がれていた説話が、パンソリ(太鼓の伴奏で演者が長編物語を演唱する伝統芸能)の演目となり、小説化されたのですね。
  そのとおりです。名もなき庶民がつくり上げた作品です。
 〈主人公は、春香チュニャンという美しい娘。貴族の息子・李夢竜イモンニョンと身分を超えて愛し合うが、夢竜は都に行くことになり、二人は、再会を固く誓って別れる。
 その春香に、好色な悪代官が言い寄ってくる。それを毅然と拒否すると、怒った悪代官は、春香を投獄し、処刑しようとする。
 そこにさっそうと夢竜モンニョンが登場する。地方官の不正を暴く密使となって、この地を訪れていたのである。夢竜は見事、春香を救い出し、悪代官を追放。二人は幸せに暮らす〉
 池田 痛快なドラマです。
 春香の清純に生きぬこうという信念、権力の横暴に抵抗する勇気は、当時から階層を超えて幅広い人気を集めたそうですね。
  今でも、パンソリの定番演目です。
 オペラのように、ダイナミックに歌い語りをするのです。これには、南北のちがいはまったくありません。
 池田 今も民族の心が一つに結ばれている証ですね。
 豊臣秀吉による侵略戦争(文禄・慶長の役=壬辰イムジン倭乱ウエラン丁酉再乱チョンユジェラン)をテーマにしたものでは、朝鮮王朝時代の「三大戦争小説」の一つとされる『壬辰録』があります。
 これも民衆が口伝えになかで、つくり上げた作品です豊臣軍をさんざんに打ち破る場面を描いて大喝采を浴びたといいます。
 民衆は、何よりも平和と幸福を望んでいます。貴国の小説には、その深い真情が込められています。
 私自身、貴国の文学をはじめとする文化遺産を、もっともっと学びたいと願っています。日本にも広く紹介していきたいと思っています。
 それが大恩ある貴国への恩返しであり、「友情の証」であると思うからです。
  池田会長からは、もう十分すぎるほどの友愛の情をいただいております。
 韓国から見た日本、日本から見た韓国ーー。
 確かに両国聞には、いろいろな問題が横たわっております。しかし、この対談で一つ一つ見つめ直していくことで、お互いの意外な一面を理解し、信義を交わし、友好を促進する一助になるかもしれません。
 それほど、今まで、お互い、知らなすぎました。
 今後とも、池田会長と全力で語り合いたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
 池田 こちらこそ、よろしくお願いいたします。
 率直に、縦横無尽に語り合いましょう。
 両国の、平和と文化と教育の興隆のために!

1
9