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日蓮大聖人・池田大作

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3 グローバル化をめぐって  

「新しき人類を」「学は光」V・A・サドーヴニチィ(池田大作全集第113巻)

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6  「科学の知」と「市民の知」の融合
 サドーヴニチィ 学者、研究者もまた、いつも純粋に学問の真理のみを語り合っているわけではありません。学術会議の場でさえ、現実的、実務的問題に関心が集中することもあるのです。さらに、各国にあっては、学識経験者は、政府の各種政策に対して専門的立場から鋭い意見を述べ、提案、諮問する、かなりの影響力を持つ活発な市民だと言うことができます。政府の掲げる政策が環境、人間に有害な場合、それを証明し、真っ向から政府に反対意見を述べることができるのも学者たちです。そのような事例は数々あります。
 マンハッタン計画がよい例ですし、ロシアのサハロフ博士もそのような真正の学者のお一人であられました。サハロフ博士は、1942年にモスクワ大学の物理数学部を卒業されています。
 池田 32歳の若さで科学アカデミー会員となり、核実験の中止やソ連の民主化を、迫害に怯まず訴えぬいたサハロフ博士のことは、日本でもよく知られています。
 そこで、「科学者」であることと、「人間」であることとの間で、どうバランスをとっていくかという、今日的課題が浮かび上がってきます。「科学の知」と「市民の知」とのバランスと言い換えてもよいでしょう。かつては、それは必ずしも社会の根幹を揺るがすような課題というわけではなかったのですが、20世紀に入って、とくに核兵器の脅威の増大などを背景に、鋭い緊張関係をもって問い直されるようになりました。サハロフ博士などは代表的人物ですね。
 今世紀に入り、遺伝子操作の問題も急速に浮上してくるでしょうし、「科学者」と「人間」、「科学の知」と「市民の知」をどう融合させていくかは、大学教育をめぐるきわめて本質的な、マクロな課題となってくるでしょう。
 サドーヴニチィ ええ。国政のレベルに留まらず、世界の学者たちの意見は、地球的問題を解決するためにも、より積極的に生かされなければならないでしょう。科学技術のもたらすさまざまな影響を冷静に把握しているという意味で、学者同士のほうが、政治家などに比べて、グローバルな諸問題に対するコンセンサスと合意に容易に到達できるはずです。
 そこにこそ、学問に仕える人々が真に世界市民として本領を発揮する場があるのではないでしょうか。
 「物理学という世界は、地球上のすべての物理学者を市民として成り立つ」「数学という世界は、地球上のすべての数学者を市民として成り立つ……」――このような意味で、学問の輩はすべからく地球を祖国とする自覚に立っていくべきでしょう。

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