Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

まえがき  

「新しき人類を」「学は光」V・A・サドーヴニチィ(池田大作全集第113巻)

前後
1  本対談の始まりは、数年前の東京で行われた池田大作博士との会見に遡る。それまでにも、私と博士は何回もお会いしてきでおり、私にとって博士はすばらしい友人となっていた。
 以来、私たちの対談は回を重ねて進められ、数年の歳月を費やすこととなった。時には長時間にわたって語り合われたさまざまな内容を、整理、抜粋する形でまとめたのが、本対談集である。
2  池田博士は、対談の巨匠といってよい。「いかなる複雑な問題も、対話によることが最も建設的な解決につながる」とする池田博士の考えに、私は心から賛同したい。
 わが国では、池田博士の対談集は広く知られている。英国の歴史学者A・トインビー博士をはじめとして、二度にわたってノーベル賞を受賞したL・ポーリング博士等々。わが国にあっては、前モスクワ国立大学総長でアカデミー会員のA・ログノフ博士にはじまり、ロシア各界を代表する人物が、これまでにそれぞれのテーマで池田博士との対談を編んでこられた。また、ブトロス=ガリ元国連事務総長その他、現代の数多くの国家的指導者、識者との語らいを続けておられる。
3  ここ数年間をかけてモスクワ、東京と場所を変えながら続けられた、私と池田博士の対談の内容は、多岐に及んだ。とくに、第三の千年紀を迎える時に行われたという時代性を反映してか、両対談者は、人類の前に立ちはだかる差し迫った問題群を明らかにし、また、それらの問題群を解決する方途を探ろうと、いきおい心を砕いてきた。
 その過程で避けて通れない必然的な問題として、人間の精神性、道徳規範、哲学的命題、文明論的視点に関しても、掘り下げた論議を交わすととになっていった。こうして両対談者は、自由と平等について語り合い、幸福論を確かめ合ぃ、知識と知恵の違いに迫った。また、宗教と科学の役割を論じ、情報化の進む人類の未来を遠望した。伝統と近代化が生む軋轢に警鐘を鳴らしつつ、家庭論、女性論、教育論へと、私たちの対談は熱を帯び、広がっていった。
4  読者は、本対談の全編を通じて、両対談者の関心が教育問題に集約されていくのを読みとられるであろう。なかんずく、二十一世紀における大学の使命とは、この問いかけは、人生の大半を、ある意味ではそのすべてを教育に捧げてきた両対談者にとって、まさに自己自身の天命を問いかけているのに等しい。
 その故であろうか、対談は私と池田博士の視点が飛躍的に接近する場となったといえる。
 両著者は、本対談が、日本とロシアのできる限り広い読者層に読まれ、理解されることを期待するものである。そのために、読者各位におかれては、ぜひ私たちの対談の参加者となっていただきたい。
 親愛なる読者に、本書で取り上げられているそれぞれのテーマに対し、ご自身の意見をもって参加していただくことこそが、池田博士と私の最も望むところであり、その意味で、本書が人類の「グローバルな対談」の胎動を促す一助となれば、望外の喜びである。
 異なる人間たち、異なる文化を結ぶ術はいずこにあるか。そして、新たなる千年紀の挑戦に人類はいかに応戦しゆくのか――そのアボリア(難問)を乗り越えていくための、重要な、いな、唯一の方途が「対話」であることを、両著者は、この対談を通して、読者とともに確認し合いたいと願う次第である。
 2002年3月20日  ヴイクトル・A・サドーヴニチィ

1
1