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日蓮大聖人・池田大作

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新社会人の友に贈る 信用は宝 君よ職場の勝利者たれ

2002.3.29 随筆 新・人間革命4 (池田大作全集第132巻)

前後
5  では、いかなる人が信用できるのか──。
 「何事であれ、十年問、変わらずやり切った人間は信用できる」
 これが、戸田先生の持論であった。
 私も、社会に巣立つ友には必ず、「まず十年間、辛抱しながら忍耐強く、基礎を築きなさい」と励ましてきた。
 希望に燃えて就職しても、初めから好きな仕事ができるとはかぎらない。世間の冷たさ、理不尽な現実に愕然としたり、こんなはずではなかった」と苦しむことも少なくないかもしれない。また、上司や同僚との人間関係に悩むこともあろう。
 だからといって、仕事のイロハも覚えないうちに、「自分に合わない」と安易に辞めてしまっては、自分の本当の適性や実力もわからないし、現実の社会を生き抜くこともできない。
 鉄鋼王といわれたカーネギーが、電報配達をしていたころ、仕事は、事務所の掃除から始まった。
 彼は、電報配達の仕事に誇りをもち、この掃除にも真面目に励んだ。
 さらに、好奇心と積極性を発揮し、見よう見まねで通信技術を覚えていった。
 やがて彼は、電信局の通信技手に採用され、一歩、また一歩と、自分の可能性を拡大していったのだ。
 彼は、その下積み時代の事務室を、「若い人にとってすばらしい訓練の場」(『鉄鋼王カーネギー自伝』坂西志保訳、角川文庫)と呼んだ。
 生き生きと脈打つ、この向上心は、百年以上の歳月を超えて、今日の青年にも学ぶところは大きいであろう。
 それは、仕事をお仕着せの義務ではなく、自分の権利としていくチャレンジ精神だ。
 だからこそ、辛い下積みの仕事も、すべて、自己教育と自己飛躍の好機にすることができたqのである。
 「働くことが楽しみなら、暮しはすばらしくなる! 働くことが義務になったら、奴隷ぐらしだよ!」(『どん底』野崎韶夫訳、『世界文学全集』44所収、筑摩書房)とは、ロシアの作家ゴーキリーの名言だ。
 戸田先生も、月給分だけ働けばよいとか、文句を言われない程度にすればよいという受け身的な態度を、最も嫌われた。
 青年であるならば、失敗を恐れず、わが権利として主体的に取り組むことだ。それでこそ、仕事は最高に価値ある人間錬磨の道場となる。
 私自身も、青春の日より、この人生の道を、決然と踏破してきた。
 ともあれ、御書に「みやづか仕官いを法華経とをぼしめせ」と仰せの如く、我らの「信心」は即「生活」である。
 文豪ゲーテは言った。
 「よろとびをもって仕事をし、なしとげた仕事をよろとべる者は幸福である」(「経験と人生」岩崎英二郎訳『ゲーテ全集』13所収、潮出版社)
 またオランダの哲学者スピノザの言葉には、こうある。
 「幸福、真の幸福は、善行それ自身である」(トルストイの『一日一章 人生読本〈10~12月〉』原久一郎訳、社会思想社)
 若き友よ! 今、自分のいる場所で、断じて信頼を勝ち取るのだ!
 諸君が職場に巻き起こす新風で、この社会を明るく活性化させるのだ!
 「職場の勝利者たれ! 人生の勝利者たれ!」と、私は祈り、待っている。

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