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日蓮大聖人・池田大作

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希望のアメリカ創価大学 出でよ! 二十一世紀の若き人間指導者

2000.8.2 随筆 新・人間革命3 (池田大作全集第131巻)

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1  「希望のあるところ、平和がある」
 これは、文豪ユゴーが晩年、ガーンジー島で認めたとされる言葉である。
 その直筆は、白ひげをたくわえた、彼の肖像写真とともに、アメリカ創価大学(SUA)の「重宝」となっている。
 二〇〇一年の五月三日、いよいよ、二十一世紀の希望と平和の光明となるべき、わが「アメリカ創価大学オレンジ郡キャンパス」が開学する。
 私は、胸の高鳴りを抑えることはできない。
 思えば、五十年前の秋、戸田先生は私に言われた。
 「大作、創価大学をつくろうな。私の健在のうちにできればいいが、だめかもしれない。その時は大作、頼むよ。
 世界第一の大学にしようではないか」
 事業の苦境のなか、先生は、眼光爛々と、世界を見つめておられた。壮大な未来を見つめておられた。
 また、ある時は、若き青年門下に向かって宣言された。
 「世界最高峰の哲学をもった諸君は、既に、世界的指導者なのだ!」
 この師の大確信を胸に刻み、私は一人誓った。
 ″世界が相手だ。世界が舞台だ! わが創価の人材城から、二十一世紀の大指導者を陸続と輩出してみせる!″と。
 ゆえに私は、創価大学を創立した時から、″いずれは海外に、人類貢献の大学建設を″と、決心していたのである。
 当初、「創価大学ロサンゼルス分校」(一九八七年開所)として出発。
 それから十有余年――今、創価の翼が、「第三の千年」の大空に羽ばたく時が来た。
2  太平洋から新鮮な風がそよぐオレンジ郡のキャンパスの建設地は、ロサンゼルス市の南東約九十キロメートルにある。
 燦々と陽光の降り注ぐ、温暖な気候。三方を美しい谷に囲まれた約百五エーカー(約十三万坪)の敷地……ここに「水と緑と太陽」をイメージした、清新な学舎が姿を現してきた。
 このキャンパスは、既にオレンジ郡からの歓迎決議を受けたのをはじめ、同郡の教育財団から「アメリカ倫理賞」、地元の住民協会から「地域に開かれた大学」「地域に貢献する大学」との顕彰などを受けている。
 また、「人間」と「自然」が絶妙に調和しゆくキャンパスのデザインは、全米造園家協会の「優秀賞」にも輝いた。
 地域の歓迎の拍手と握手のなかで迎える開学の瞬間であり、私は、本当に嬉しい。
3  オレンジ郡キャンパスは、四年制の「リベラル・アーツ・カレッジ」(教養大学)としてスタートする。
 これは、専門的知識の修得とともに、幅広い教養をもった人材の育成をめざす伝統的な大学のスタイルで、「研究」以上に「教育」に重点が置かれ、学生数も小規模である。
 歴史と伝統を誇る、多くのアメリカの私立の総合大学(ユニバーシティー)も、同じスタイルから出発している。
 新世紀の「人材」を、「リーダー」を育成したい。
 そのための「人間教育の最高学府」がSUAである。
 「この学舎に入りては智を深め
 出でては国と民とに身を捧げよ」(R・N・スミス著『ハーバードの世紀』村田聖明・南雲純訳、早川書房)
 ハーバード大学の名学長として知られた、エリオット学長の有名な言葉である。
 わがSUAは、曾孫のような幼い大学であるが、″出でては世界の平和と民衆の幸福に身を捧げよう″との、壮大な気宇で進んでほしい。
4  過日、私は、創立者として、「指針」を提案した。
 一、「文化主義」の地域の指導者育成。
 一、「人間主義」の社会の指導者育成。
 一、「平和主義」の世界の指導者育成。
 この三項目に、今回、もう一つ加えさせていただいた。
 一、自然と人間の共生の指導者育成、である。
 私は、この「指針」に二十一世紀文明が要請する人間像、指導者像を込めたつもりである。
5  「二一世紀になると、教育はついに独り立ちすることになるかもしれない」(R・M・ハッチンズ著『教育と人格』笠井真男訳、エンサイクロペディア・ブリタニカ日本支社)
 三十歳でシカゴ大学総長に就任した大教育者ハッチンズは、かつて、こう予想した。
 彼は、教育が政治や経済などに従属するのではなく、人間が人間らしくなるためにすべての機関が努力する、教育を中心に置いた「学習する社会」の到来を展望したのである。
 私自身、何十年も前から、教育権の独立や「教育国連」の構想を提唱してきた。
 来るべき二十一世紀を「教育の世紀」に!
 それは「人間主義の世紀」をめざす創価の使命と、深く深く共鳴するといってよい。
6  ともあれ、大学は「学生」が主役であり、生命だ。
 本来、「もっと学びたい」という学生の連帯が、大学発祥の源泉であった。
 なんのために学ぶのか。その目的観が深く偉大であればあるほど、向学の炎は限りなく燃え上がるものだ。
 現在、民族・宗教・言語等の差異を超え、「一期生」として入学を希望する世界の俊英が、続々と、入学の願書を寄せてくれていると伺っている。
 私も、世紀の希望の太陽たる新しきキャンパスで、ある時は学生たちと語らい、ある時には「講義」も行いたいと、密かに願っている。
 旭日輝くスタートへ、教職員の皆様も全力で取り組んでくださっている。
 創価大学一期生の羽吹SUA学長、高橋大学院院長、ハーバー副学長、トーマス教務部長、フィーゼル学生部長、川崎事務局長、アサワ事務長をはじめ、すべての関係者の渾身の努力に感謝したい。
 また、アメリカの同志の皆様が、陰に陽に、どれほど応援してくださったことか。
 一人ひとりが、崇高な理想に心を合わせた同志であり、創立者であり、光輝ある先駆者、建設者である。
 今日の労苦、今日の汗が、みな尊き不滅の歴史となることは間違いない。
7  東京・八王子の創価大学の開学は、牧口先生の生誕百周年の一九七一年であった。
 そして、戸田先生の生誕百周年である本年、オレンジ郡キャンパスの校舎の完成も間近に迫り、日本の創価大学の三十周年の明年に開学することになる。
 牧口先生、戸田先生が、どんなに喜ばれていることか。
 先日、このSUAのオレンジ郡キャンパスの遊歩道が、アメリカ政府公認の「千年紀の道」に認定された。
 この大学の道から、「新しき世紀」を担う若獅子が!
 この黎明の道から、「新しき千年」の平和の指導者が!
 私には、限りない情熱と知性の行進曲が聞こえる。
 その若々しい生命の脈動を、至福の楽しみとして、最高の希望として、私は生きる。

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