Nichiren・Ikeda

Search & Study

日蓮大聖人・池田大作

検索 & 研究 ver.9

師弟の旅の徒然に 様々なことを 師と共に!

2000.7.7 随筆 新・人間革命3 (池田大作全集第131巻)

前後
1  私の師・戸田先生は、折々に、さまざまなことを教えてくださった。
 若き日に、師と二人だけの「戸田大学」で勉強したことは、今でも、頭脳に光り残っている。
 また私は、戸田先生に、朝から晩まで、三百六十五日、身に影の添うがごとく、お仕えした。
 その都度その都度、先生は、ダイヤモンドの輝くような含蓄深き哲学を、残してくださった。また、教えてくださったのである。
2  「権力」という問題についても、先生は、さまざまな角度から、将来のことを考えて、論じ残されていた。
 ある時は、権力と自由の問題を考え抜いたロシアの有名な哲学者ベルジャーエフのことも話題になった。彼は、革命後に祖国を永久追放されている。権力は恐ろしい。
 「権力は、偉大なる責任感が備わり、崇高な義務を背負った、最良で、選び抜かれた人格がもつべきものである」(Э. Борохов ″Энциклопедия афоризмов″ Издательство АС)とは、彼ベルジャーエフの言葉である。
 まったくの正論である。
 権力には魔性があるからだ。「権力――そのテーブルにつくと、誰も自分からは立ち上がれない」(イスカンデール、同前)と喝破した現代作家もいる。
 いったん権力を手に入れると、それを手放したくなくなる。それが権力の恐ろしさである。
 だからこそ、民衆よ、賢くあれ!
 青年よ、心して政治を監視せよ!
 これが、戸田先生の結論であった。
3  また、「生老病死」の問題は、仏法の真髄であり、常に、御書や法華経のうえから、詳しく伺った。
 そのうえで、戸田先生は、「良き思想家の文を読むように! 良き世界の文学を読むように! すべてが、一流の次元の論理であり、真理であり、重要な深遠な哲学であることを、忘れてはならない。はすっぱな雑誌や、売名的な著者や、金もうけの作文家は、論外として!」と、鋭い眼差しで、言われた。
 「仏法をもっているからといって、独善的になってはならない。あらゆる学問、あらゆる文学、あらゆる一流の思想家たちの持論・論調を、勉強することが、とくに大事である。
 それが、より仏法を理解し、さらに、心広々と仏法の深遠さを明快にしゆくための、『序分』『流通分』となっていくからだ」
 ″仏教者は独善、宗教者は独善、信仰は独善″というイメージを、戸田先生は一変された。
 壮大なる仏法の大海と、あらゆる思想哲学の水脈を結び、人類に与えるように努力されたのである。
4  先生は、「生死」を論じる際にも、仏法を基調としながら、しかも縦横自在に語ってくださった。
 作家チェーホフの言葉、「死は恐ろしいが、永遠に生きつづけて死ぬことはないと認識することは、よりいっそう恐ろしい」(同前)とあるが、全く、その通りである。
 また、先生には、トルストイの「吾々の生活が善良であればあるだけ、それだけ死の恐怖は少なくなり、軽くなる」(『求道読本 一日一善』上、原久一郎訳、岩波書店)との箴言も教わった。
 良く生きた人にとって、死とは、次の生に向かっての、朗らかな新しき出発である。
 ゆえに戸田先生は、「人生の勝負は、最後の数年間で決まる。途中では決まらない。人生、最後で勝て!」と、繰り返し、言われたのだ。
5  人生の意味についても、戸田先生は、折にふれ、私に語ってくださった。読まれた書物を通して、教えられることもよくあった。
 「こういう本を読んでおけ!
 とくに世界文学、または世界の文学者の理念を知るように!」と、厳しかった。
 今、私は、雑誌『潮』誌上で、てい談「世界の文学を語る」を連載させていただいているが、全部、戸田先生から教わったことが、基本である。
6  モスクワ大学の創立者であり、著名な科学者であり、詩人でもあるロモノーソフのことも学んだ。
 「苦労して善事を為したとき、苦労は過ぎ去るが、善事は残りゆく。楽しんで悪事を為したとき、楽しさは過ぎ去るが、悪事は残りゆく」(前掲 ″Энциклопедия афоризмов″)とは、彼の名言である。
 また、戸田先生とほぼ同じ年代を生きた、小説家レオーノフの言葉に、こうあった。
 「人生の美とは、何よりも、一人一人が自分の天性と自分の仕事に見合った振る舞いをするなかに、存在する」(同前)と。
 見栄や虚栄に流されるのではなく、自分らしく、堅実に生き抜いていくところに、人生の真実の美しさがあるというのである。
7  とくに先生は、トルストイが大変お好きで、よく言葉を引いて語ってくださった。
 今、私の手元にあるトルストイの箴言もまた、先生の獅子吼を思い起こさせるものである。
 一つは、「臆病な味方は、敵よりも危険だ。なぜなら、敵に対しては危ぶむが、味方には当てにするからである」(同前)と。
 もう一つは、「悪人の持つ力が、彼らが団結することであるとするならば、善人たちも力を得るために、同じことをせねばならない」と。
8  一人立つ勇気!
 異体同心の団結!
 戸田先生が弟子に託し残された、この二つの宝剣をもって戦っていく限り、わが学会は、勝利、勝利へと、永遠に進み続けることができるのだ。

1
1