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日蓮大聖人・池田大作

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師弟=人間教育の真髄 生命の大宇宙へ 価値創造の旅

1999.12.18 随筆 新・人間革命2 (池田大作全集第130巻)

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1  「今の私の九八パーセントは、すべて、恩師より学んだものであります」
 アメリカの名門コロンビア大学での講演「『地球市民』教育への一考察」(一九九六年六月十六日付「聖教新聞」に掲載)のなかで、私は率直に、こう申し上げた。
 一九九六年(平成八年)の六月のことである。
 「人間が人間をつくる。人間教育の真髄は師弟にある」という、自称「戸田大学」の深き意義を、私は語りたかったのである。
 まさに、この「戸田大学」で、若き生命に染み込ませた教えは、一滴一滴の「智慧の妙薬」であったと言っても過言ではない、と自覚している。
 戸田城聖という私の師匠から授けられた、その一滴一滴から、いかにして限りなく価値創造の大海を広げていくか。
 これが、弟子の戦いであり、使命であると、私は心に決めて学んできた。
2  「戸田大学」の教材としては、当時、一般の大学の授業でも使われていた有名な研究書が用いられた。
 たとえば――
 『経済学入門』(波多野鼎著、日本評論社、昭和二十五年刊)
 『法学原論』(和田小次郎著、敬文堂書店、昭和二十三年刊)
 『化学』『地球と天体』『生命』(F・S・テーラー著『新科学大系』所収、白井俊明・桑木来吉共訳、河出書房、いずれも昭和二十八年刊)
 『資料日本史』(小沢栄一・高井浩・小田泰正共編、清水書院、昭和二十七年刊)
 『世界史』(矢田俊隆著、有精堂、昭和二十九年刊)
 『政治学』(鈴木安蔵著、青林書院、昭和三十年刊)等々である。
 これらの懐かしい書籍は、現在、創価大学中央図書館の池田文庫に、収められている。
3  その教科書の一冊、『地球と天体』を開いてみると、次のような記述が光を放って、目に飛び込んできた。
 「われわれの望遠鏡の視界のうちには、惑星系を持つ恒星が一千万箇もあると考えてよい。(中略)もし百箇の惑星のうち一箇がこれらの(=空気、水、温度などの)条件を満足させるならば、生命を維持する能力のある地球が、十万箇もあるかもしれない」
 ここの一節は、戸田城聖先生の「天文学」の講義の大きな山場でもあった。
 先生は、わが意を得たりとばかりに言われた。
 「この大宇宙には、地球と同じような惑星が、いくつもある。仏法で説く『他方の国土』とは、そういう所をいうのである」
 先生が縦横無尽に展開される「仏法」と「天文学」の関連性に、私の若き胸は躍った。
4  日蓮大聖人は、次のように仰せである。
 「東西南北の四方、八方、並びに三千大千世界の外、四百万億那由佗という、莫大な数の国土に、十方の諸仏が続々と集まり充満されている」(御書一五七〇ページ、通解)
 この「那由佗」の一説によると、十の六十乗、つまり、零が六十個も続く数である。我々の住む太陽系や銀河系を超えて、「仏国土」が無数に存在することが、明確に示されている。
5  仏法では、「天地も、日月も、星々も、皆、生死の二法に則っている」とも、明確に説かれる。
 星々の生と死、宇宙の成住壊空が、どれほど壮大に繰り広げられるか。
 これまた、「戸田大学」の大きなテーマとなった。
 戸田先生は、「宇宙」と「生命」の連関性について、よく話された。
 「人間の活動も、宇宙のリズムある法則から免れることは、絶対にできない。
 そのような法則を、生命という次元から、根本的に、事実として説かれているのが、大聖人の仏法である。
 これが分かってしまえば、『我即宇宙』であり『宇宙即我』ということになる」
6  十六年前の一九八三年(昭和五十八年)十一月二十六日、私は、アメリカのスカイラブ計画の宇宙船の船長であったカー博士とお会いした。
 「宇宙を経験して、宇宙には厳然とした秩序があることを知りました。いろいろなことが宇宙では起きていますが、その運行は、秩序正しく行われています。その秩序こそ、人類が共通にもっている普遍性なのです」と、博士は語っておられた。
 この透徹した、そして確信に満ちた一言が頭から離れない。
 また私が、宇宙に知的生物が存在するかどうかを尋ねると、博士は「可能性は十分にあります」と答えられた。
 そして、ユーモアを込めて、「もし、我々より進んだ生命体があれば、彼らは、我々地球人を、すでに見ているでしょう。なぜなら、この地球は、非常にうるさいところだからです」とも言われていた。
7  ロマンあふれる宇宙への探究は、人類の心を大空のごとく広げる。そしてまた、協調と共生への一体感をもたらすにちがいない。
 つい先日(十一月二十九日)のニュースでも、新たに、太陽系外の惑星六個が発見され、大きな話題となった。
 「地球外文明」の存在への夢が大きく広がる時代である。
 人類は、戸田先生が言われたごとく、「運命共同体」として「地球民族主義」で、調和し、融合していくべき段階に、ようやく入った。
8  戸田先生は「これからは、天文学の教育に力を入れるべきだ」と強調しておられた。
 天文学を学ぶことで、小さな小さな一個の惑星の上で、うごめく人間と人間との心の中に、「平和を!」「平和を!」「平和を!」と、愛する心を覚知させていけるからだ。
 アメリカのウィルソン山天文台のジャストロウ所長と、私の語らいが契機となって、現在、同天文台と、東西の創価学園をコンピューターで結んでの天体観測が進んでいる。
 また、NASA(アメリカ航空宇宙局)の教育プログラムとして、スペースシャトルから撮影した地球の映像を通しての学習が行われているが、今回、試験的に日本の学校にも枠が広げられた。
 その最初の日本の参加校として、全国二グループの一つに、光栄にも、関西創価学園が選ばれたのである。
 日本人宇宙飛行士・毛利衛さんが搭乗されるスペースシャトル・エンデバー(努力)号とともに、学園生の観察や実験が始まる。
 二十一世紀の若き英知の指導者の希望を乗せて、エンデバー号は、明年一月十三日(日本時間一月十四日)、二〇〇〇年最初の宇宙飛行として、打ち上げられる予定である。(=実際の打ち上げは一カ月延期されて、二月十二日〈日本時間〉に発射され、二月二十三日〈同〉に地球に帰還した)

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