Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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師弟の魂・大関西 常勝の空高く 錦州城

1999.3.1 随筆 新・人間革命1 (池田大作全集第129巻)

前後
1  フランスの文豪ロマン・ロランは叫んだ。
 「所詮 人生は戦いだ。一切の権利は勝者のものだ!」(『魅せられ樽魂』宮本正清訳、『ロマン・ロラン全集』6、みすず書房)
 大阪城――。あの堂々と聳え立つ大阪城を仰ぐと、常勝の英姿を見る思いがする。大阪の駅を降り、タクシーに乗って、関西本部に近づいてくると、たそがれの彼方に、大阪城が一番早く迫ってくる。
 心静かにしていた私も、大阪城を見ると、滝のごとく、胸が高鳴る。巌のごとく、信念の自分に還る。
 幾たびとなく、関西の法戦に馳せ参じた私は、ことのほか、夏の夕暮れのこの景色を、若き心に写し取った。
2  一九五六年(昭和三十一年)、戸田先生の命によって、私は、初めて大阪の法戦に突入した。
 駅には、いつもの数人の懐かしい同志の顔が待っていた。嬉しそうな顔、楽しそうな顔、懐かしそうな顔……。皆、汝の使命と、汝の人生を荘厳する、黄金の呼吸を知っている同志たちである。
 限りなき使命と熱望とをもって、私を迎えてくれた。なんと喜びの漲る、そして真心こもる人たちであろうか。
 温かき人間の心、真昼の光のごとき心。ともに喜びのあふれる握手と握手。その微笑みのなかに、広宣流布への電流が伝わる。ここに、関西の魂があった。
3  一九七九年(昭和五十四年)の四月二十四日、私が、会長を辞任し、名誉会長になった、その晩であった。
 深夜の高速道路を、二台の車が東京へ疾走していた。
 乗っているのは、関西の青年たち。誰かに言われたわけではない。ただ、私が会長を辞めたと聞いて、居ても立ってもいられず飛び出した。
 車中、一睡もせず、翌朝早く東京に到着。そこで先発していたメンバーも加わり、金城会草創の七人の英才が、息せき切って私のところに駆けつけてくれた。
 「我々は、池田先生とともに戦うんや!」と。
 真剣な、嵐の中に毅然として、真夜中に走り飛んでくれた、その正義の叫びと、若鷲の翼の姿が、嬉しかった。
 私は、この七人に、″関西の七勇士″という名前を贈った。
 この関西の七人の弟子は、今も現役として、広布の第一線で悠然たる指揮を執っている。
4  二十年前の、あの日のことは、今でも、心深く動くことはない。
 あの日、あの時、私は、彼らに言った。
 「わざわざ遠くから来てくださって、ありがとう。何も心配いらないよ。恐れるものは何もないよ。私は厳然としていくから!」
 その時の、彼らの雄姿は、今でも消え去ることはない。
 「偉大な弟子をもつことは、最高に嬉しいことだ」とは、戸田先生の口癖である。
 今、私は、嵐と忍耐のなかで、同じ思いをした。
 真っ暗な嵐のような日々であった。しかし、彼らに、私は強く語った。
 「将来の希望を持て! 不安のために動揺するな! これが、我らの魂である。
 忍耐強く生きろ! 悠然として、自然の成り行きに任せよ!
 一段高い丘から、すべてを見つめよ!」
 彼らは、この一語一語から、何を意味するかという真実を汲み取って納得したようである。この気高き、また節度ある、厳粛な弟子の姿を、私は申し訳ない気持ちで、心で讃えた。
5  当時、陰謀と嫉妬と、あらゆる策略をもって、私を追い落とし、自分たちが学会を乗っ取ろうとする謀略が始まっていた。これらの破壊者たちは、ずる賢き冷酷な坊主と手を組みながら、百鬼夜行のごとく、退転者を味方にし、愚かな幹部を口車に乗せて、自らの悪謀の罠の中に操っていった。
 彼らは、野獣のごとく、ありとあらゆる卑しき野心と憎しみの讒言を浴びせてきた。恩師の大恩を踏みにじり、宗門の悪坊主と結託した、地獄の鎖につながれた輩である。皆から、唾を吐かれ、怒りと侮りを受けていた悪党たちである。
 私は、言い放った。
 「今に見よ! 必ず正邪が明確になる」
 皆も、反逆者、退転者の末路の厳しさは知っている。
 正法には、必ず悪鬼魔神がいる。大聖人の時代も、反逆者が多くいた。日興上人の時も五老僧という反逆者がいた。
 正法流布の学会には、魔が競うのも当然であり、正義の証だ!
6  どうして彼らが狂気と化してしまったのか。人間というものは恐ろしいものだ。私たちを、嵐の中の死の翼のもとに陥れようとする、あの陰険な仕草よ!
 しかし、心ある幹部は、厳然としていた。
 特に関西の同志は、微動だにしなかった。
 いつしか疲れ果てた仲間の中から、勇敢なる中堅幹部たちが、「謀略を見抜け! 陰謀を叩き出せ!」と、稲妻のごとく叫び始めた。
 その雷鳴の轟きとともに、闇々たる夜風の彼方に、太陽が昇り始めた。
 多くの友が遭難しそうになっていたところに、救いの朝日が射し始めた。
7  御聖訓にいわく。
 「未来の果を知らんと欲せば其の現在の因を見よ」と。
 この年(一九七九年)の七月十七日、関西の同志は誓い合った。
 一、革命精神の原点・関西!
 一、二十一世紀への世界の人材の宝庫・関西!
 一、全国に信心の波動を起こす関西!
 断固として関西は立ち上がった。師弟の魂が燃え上がった。
 さらに、威風も堂々の挑戦が開始された。
 そして、大阪、京都、兵庫、奈良、和歌山、滋賀、福井の、広宣の闘士が一堂に集い、意気軒昂に、「第一回関西総会」が開催されたのは、この年の牧口先生の殉難の十一月十八日であった。
8  彼らは大波をかき分け、深き闇を打ち破り、″萬の仏の艦隊″となって、逆巻く怒濤を乗り越え、無敵の信心と連帯で、必ず″永遠の都″を打ち立てて見せると、叫んだ。
 幸福の帝王が待つ都をめざすのだ。そこには、輝かしき、滅ぶことなき、王冠なき偉大な民衆が待っている。
 必ずや、崩れ去りゆく、権威の輩を、眼下に見て、三世永遠の人間の勝利の王座を、必ず、建設すると、勇敢なる振る舞いが始まった。
 これこそ、広宣流布の戦闘であり、人間の宗教の誕生である。
 御本仏・大聖人の人類救済の大仏法である。
9  二〇〇二年に迎える関西発足五十周年――。
 関西は、折伏の王者である。
 関西は、広宣流布の先駆者である。
 ゆえに関西は、常勝関西なのである。
 関西は、人間愛と異体同心の団結の模範の天地でもある。
 そこには、権威も必要なく、社会的階級もなく、貧富の差もなく、皆、平等で生き生きと、生き抜く力をもつ庶民の都であり、人間の輝く喜びの都である。
 その底力は、天下をも動かす無限の智慧と鉄の陣列が、常に気高く急ぎ動いている。
 大関西には、愉快で朗らかな、真の勝利者だけが味わえる、人間の理想的な共和国があると、私は讃えたい。

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