Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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世界広布の夜明け 会館は″平和の庭″″文化の城″

1999.1.13 随筆 新・人間革命1 (池田大作全集第129巻)

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1  宇宙全体の銀河の数は、約一千二百五十億個――と、このほど、アメリカ天文学会で発表された。
 これは、アメリカ航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡の観測をもとに見積もられたものである。
 ほとんど無限とも思える、この悠久の大宇宙の広がりは、仏法の宇宙観からすれば、全く理解できることである。法華経に説く百千万億、無量無辺という生命観、そして、宇宙観に近づいていることを感じてならない。
 生命体が住んでいる惑星は、地球だけではない。幾千万個の惑星にも生息していることであろう。
 そこには、既に広宣流布が終わった惑星が無数にあるはずである。善人ばかりの理想の中の理想の仏国土が現存することも疑う余地がない。
 ともあれ、この我らの住む五濁の地球上にも、妙法の平和と希望への太陽は、徐々に昇りつつある。
 この大偉業は、誰人も成し得ぬ尊貴尊極の戦いであることを、最高の誇りとしていただきたい。
 ゆえに私は、仏勅に生き抜く地涌の皆様方の、ご健康を祈らずにはいられない。
2  世界の広宣流布の夜明けは、少しずつでも、近づき始めた。
 この世界広布の、仏意の大前進の拠点こそ、各国SGIの会館である。
 そのなかには、ブラジル自然文化センターや、インドの創価菩提樹園など、自然を大切にする意義が込められたものもある。
 また近年では、幾つかの由緒ある城が、″創価の宝城″として生まれ変わっている。
 たとえば、イギリス・ロンドン郊外の華麗なる城館、タプロー・コート総合文化センター。
 パリ郊外、あまたの芸術家を魅了した森を望む、優美なプレ城に設置されたフランス総合文化センター。大革命時代の指導者ダントンが一時、身を隠したとされる秘話もある。
 ゲーテやユゴーが絶賛した、ライン川中流の景勝の地ビンゲン市にあり、「ビラ・ザクセン(ザクセン山荘)」の名で市民に親しまれている、ドイツの総合文化センター。
 ルネサンス最大の後援者メディチ家にゆかりの深い館であった、フィレンツェのイタリア文化会館……。
 いわば、幾世紀も風雪を重ねた″歴史の城″が、創価ルネサンスの″民衆の宮殿″として、新たな生命を得たのである。
3  これらの城が見つめてきた、人間の歴史を語れば、汲めども尽きぬ、詩とロマンの泉があふれてくるにちがいない。
 事実、タプロー・コートなどは、イギリスの作家ウェルズの小説『神々のような人々』の舞台にもなっているそうだ。ウェルズといえば、「火星人」が登場する小説『宇宙戦争』等が有名である。
 このタプロー・コートの敷地内には、二千年前から湧いている池があり、千四百年前の古墳がある。
 十六世紀には、エリザベス一世が一時、幽閉されていたといわれ、近代には、英王室をはじめ、数多くの貴賓、文化人の″知の社交場″となった。
 緑風に囲まれた、杉の散歩道を歩けば、館を訪れた来賓の名と訪問日を記録した、樹々が並ぶ。かのチャーチルが、一九三八年に植樹した杉もある。
 私がお会いした、タイ王国のプーミポン国王の祖父君、スウェーデンのグスタフ国王の祖父君も、この地に足跡を印されておられたようである。
4  一九八九年の五月、タプロー・コートの開所にあたり、私はこう提案させていただいた。
 「地域に開放していこう!」
 「″文化の城″にしよう!」
 今年で、開所十周年の節目を迎えるが、地域の皆様からも、″文化の館″″平和の庭″として親しまれている。
 昨年七月には、戦争被災児救援の慈善団体等と共催して、救援募金を兼ねたフェスティバルを行い、大好評だったようだ。国際会議やシンポジウム、展示会も活発である。
 本来、仏教徒の集いは「四方(世界)に開かれている」と考えられていた。
 我らの会館も、文化と友情の香気に包まれた、人びとに開かれた″歓待の家″なのである。
5  以前、ドイツ・ビンゲン市のビラ・ザクセンを訪れた、ある老紳士が語っておられた。
 「私は四十数年前、ここで働いていました。青春の思い出の場所です。SGIによって、大切に修復が進められている様子を見て、安心しました」
 嬉しいことだ。昨年秋の一般公開日には、過去最高の千人の市民が来られたと伺った。確かなる信頼の証であろう。
 このビンゲン市の女性市長からは、私への丁重なる招聘状も頂戴している。
 「建物」を大切にすることは、「文化」を大切にすることであり、人びとの「心」を大切にすることに通じる。
 そうした努力は、幸い各国でも高く評価されている。
 アメリカのニューヨーク文化会館の建物は、一八八七年の建造で、市の文化財でもある。
 その修復は、多大な社会的貢献と認められ、ニューヨーク歴史建造物保存協会から最高栄誉の「モーゼス賞」(一九九五年度)を受賞したのである。
6  イタリア文化会館の建物は、前世紀以来、「すばらしき遊楽の館」と呼ばれていたそうだ。
 法華経にいわく。
 「園林 諸の堂閣 種種の宝をもって荘厳し 宝樹華果多くして 衆生の遊楽する所なり」
 今や、わがSGIの会館は、この経文の通りの、世界平和という大目的に、人生を遊戯しゆく″民衆の城″となった。
7  東洋の箴言には、こうある。  
  けんに交わって まさ汲汲きゅうきゅうたり
  ちょくを友として つね偲偲ししたり(白居易の詩)
 これは、「良き友との交流に全力を尽くし、互いに正直な友人として、常に激励し合う」という意味である。
 また、『論語』には、「文を以て友を会し、友を以て仁を輔(たす)く」という言葉がある。
 すなわち、「君子の交友というものは、学問によって友情を結び、その友情によって、自分の仁の徳を助ける」と。
 「文化の城」である世界中の会館で、私たちも平和への友情の語らいを広げてきた。
 タプロー・コートでは、世界的天文学者の師弟であるホイル博士、ウィックラマシンゲ博士と会談したことが懐かしい。
 「宇宙」と「人間」のロマンを縦横無尽に語り合った。
8  ともあれ、私たちの会館は、「世界市民」たる、同志の皆様の城である。
 大聖人も、富木常忍に宛てられた御手紙の中で、「あなたは、一閻浮提第一の法華堂を造ったと、霊山浄土に行かれた時には申し上げられるがよい」(御書九九五ページ、通解)と仰せである。
 世界広布の城である会館の意義は、あまりにも深い。
 また、大聖人は、「東西南北の四方、八方、並びに三千大千世界の外、四百万億那由佗という、莫大な数の国土に、十方の諸仏が続々と集まり、充満されております。天には星のように、地には稲や麻のように、諸仏が無数に並んでおられて、法華経の行者のことを守護されるのです」(同一五七〇ページ、通解)とも仰せである。
 数世紀前までは、全く信じられなかった宇宙の銀河の広がりは、時代とともに証明されつつある。
 我らの世界的に広がる、この法城においての先駆的運動も、五十年後、百年後には、その正しさが必ず大きく立証されることであろう。
 この宝の城から、二十一世紀の平和を築く、若き新時代の人材群が陸続と巣立ちゆくことを、私は信じ、また待っている。

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