Nichiren・Ikeda

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日蓮大聖人・池田大作

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人間のなかへ 大勝利の「民衆王」に喝采!

1998.11.18 随筆 新・人間革命1 (池田大作全集第129巻)

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1  晴れ渡る大空に、民衆による民衆の凱歌は、天高くこだました。
 われらは勝った!
 断固として勝った!
 痛快なる劇のごとく、「大正義」のために、尊き同志の笑顔のために、闘魂を炎と燃やして、戦い、走った。怒濤のなかを、嵐のなかを……。
 そして、極悪の陰謀を、一つ、また一つ、打ち破り、われらは、この日、この朝、栄光の、また、まばゆいばかりの創立六十八周年を迎えた。
 同志ともよ、おめでとう!
 同志ともよ、ありがとう!
 永遠の歴史に残るであろう、われらの決然たる闘争によって、妙法は全世界に広がり、その数、百二十八カ国・地域。
 その功徳は無量無辺であり、大聖人の称賛は、いかばかりであろうか。
2  マハトマ・ガンジーは、ある時、少年であったお孫さんに、こんな寓話を語った。
 ――まだ夜が明けきらない海辺で、一人の男が、浜に打ち上げられたヒトデを拾っては、海に投げて帰していた。太陽が昇れば、ヒトデは干上がって、死んでしまうからだ。
 そこに、若者が来て尋ねた。
 「何をしているんだい」
 「ヒトデを救おうとしているところさ」
 ヒトデは無数にある。
 若者は呆れて言った。
 「これだけのヒトデを全部、助けることなどできないよ。むだなことだ。そんなことぐらいわかるだろう」
 だが、男は、また、ヒトデを投げ込むと、静かに言った。
 「あいつにとっては、大きな違いさ」
 マハトマ・ガンジーは、この話を通して、こう教えたかったのである。
 「一人の命に触れ、その命を救うことができれば、それこそ私たちが作り出せる大きな変化なんだ」と。(塩田純『ガンディーを継いで』日本放送出版会から)
3  ガンジーからこの話を聞いたご令孫こそ、ご夫妻でアメリカの「ガンジー非暴力研究所」を創立されたアルン・ガンジー氏である。
 ご夫妻は、アメリカの人種差別の実態調査や、非暴力思想を伝えるために、全米各地を精力的に回っておられる。
 また、先日、関西創価学園を訪問して講演され、名古屋で行われた、世界青年平和文化祭にもご出席くださった。
 わがSGIに対して、ご夫妻も、心から賛同し、高く評価してくださっている。
 マハトマ・ガンジーのいう、「一人の命」に触れ、一人を大切にしてきたのが、私たちの広宣流布の歴史である。今や、この尊き説話は、学会にしか断じてない。
 その運動は、どこまでも、一個の人間に光を当て、ともに悩み、生きる勇気と、知恵と力を呼び覚ます、「魂の触発作業」である。
 それはまた、暴力、権力、金力といった、人間の尊厳を脅かす外からの力に対して、精神の力をもって、「人間の勝利の時代」を築く、非暴力の大闘争でもある。
 しかし、それは、最も地道な作業であり、気の遠くなるような忍耐を必要とする。不可能だという諦めや、無力感を打ち破る、壮絶な精神闘争といえる。
 だが、初代会長の牧口先生は、戸田先生とともに、その遥かなる遠征に旅立たれたのだ。
4  牧口先生の次のようなエピソードがある。
 先生は、ある時、懇意にされていた、高名な学者の家を訪問された。
 最初は互いの仕事のことなどについて、和やかに談笑されていたが、先生が法華経について語り、折伏が始まるや、その学者は、突然、声高に叫んだ。
 「帰りたまえ、帰りたまえ」
 そして、先生を玄関に押し出し、パタンとドアを閉めた。
 その時、先生は、残念そうな口調で言われたという。
 「日本最高の識者がこの通りだ。二乗(学者)増上慢ともいうものだろうね」
 牧口先生は、識者や権力者の力を借りて、広宣流布をする気など、全くなかった。この学者に対しても、一人の友として、真実の仏法による、真の人間の道を、教えようとされたのだ。
 苦悩する民衆のなかへ、人間のなかへ、生命のなかへ――それが、牧口先生の戦いであり、創価の誉れの伝統である。
5  私たちは、この先師の精神を受け継ぎ、今、民衆の勝利の時代の朝を断固として開いた。
 その大功労者は誰か。
 来る日も、来る日も、友の幸福を祈り、願い、厳然たる折伏に励んだ皆様である。
 機関紙の啓蒙に足を棒にして歩き、学会の正義と真実を語り抜いた、尊き、あまりにも尊き皆様方である。
 ひたすら、後輩の成長を念じ、日々、勇気ある激励に通い、悪口や非難を乗り越えながら、仏の心を受持せる皆様方である。
 あの地域でも、この地域でも、人間主義と平和主義の第一人者を誇りとして、″これが創価学会である″と、″この私の姿を見てください″と、晴れ晴れと栄光の旗を打ち立てて、進んでこられた皆様方である。
 私は、その、無名にして、あまりにも尊き仏の慈悲行の行動をなされておられる、お一人お一人に、最高の敬意と感謝を込め、「民衆王」の王冠を捧げたい。
 そして、また、強い握手をしながら、私は、あなたに、こう呼びかけたい。
 「さあ、出発しよう。われらの世紀のために、広宣流布の旅に出よう」と。

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